太陽のように輝く館山育ちのパッションフルーツ
房総半島・館山育ちのパッションフルーツ
南北に伸びる千葉県の南端、房総半島に位置する館山市。年間を通して気候は温暖で、豊富な魚種に恵まれる漁業や、野菜や果物、花などの農業が盛んな地域だ。
パッションフルーツは南米原産の亜熱帯果樹だが、明治時代以降には日本でも沖縄県や鹿児島県、小笠原諸島などの温かい地域を中心に栽培されるようになった。つる性の植物で、花の一部が十字の形をしていることから、「トケイソウ」と呼ばれることもある。
そんなパッションフルーツを館山市で育てているのがRYO’S FARM。園主の梁 寛樹さんは、海に囲まれていることで、冬でも気温が下がりすぎない館山市の気候がパッションフルーツ栽培に適していると話す。
「千葉県の中でも、鋸山より南側の地域は年間を通して温暖な気候に恵まれます。秋になると適度に気温が落ち着いて、もう一度花を咲かせることができるので、ハウス栽培なら夏と冬に2回収穫ができるのも館山の特徴ですね」。
取材時は夏の収穫が忙しくなってきた頃。さっそく農園をみせてもらうことにした。
甘さの秘密は洗濯バサミ。RYO’S FARMのパッションフルーツづくり
ハウスに入るとさっそく、つやつやと濃い紫色に色づいたパッションフルーツとご対面。「紫玉」というポピュラーな品種で、化学肥料は使わず魚粕を肥料として使用している。RYO’S FARMでは8〜10月の夏シーズンと、12〜3月の冬シーズンの年に2回収穫タイミングがあり、1シーズンに約2万個の果実を収穫する。夏はハウス内の温度が40℃以上になることもあるため、「Tシャツの半分まで汗が染みたら休憩するようにしています」と、梁さんは笑う。
酸味が強い印象のあるパッションフルーツだが、RYO’S FARMでは甘い完熟の果実を育てるための秘密兵器がある。それが”洗濯バサミ”だ。一般的にパッションフルーツは、果実が色づき始めた頃につるから落下し、そのまま地面の上で熟したものを収穫する。しかしそれだと、落下の衝撃で中の実が皮から剥がれてしまい、十分な養分がいかず酸味が強くなってしまうという。そこで梁さんは落下寸前の果実を見極めて、洗濯バサミで固定。落下を阻止することで、中の実が皮にくっついたまま、栄養をしっかり吸って甘く熟すようにしているのだ。
ためしに1つ割ってもらうと、トロピカルな香りがふわっと広がり、太陽の光のようにツヤツヤと光る実がぎっしり。スプーンでそのまますくって食べれば、一気に南国の気分になる。
梁さんが館山市で農家になることを決めたのは、農業を盛り上げたいという想いと、愛するサーフィンをするため。地域おこし協力隊として館山市に訪れて農業振興に従事するうちに「自ら農家になったほうが、補助的に手伝うよりも農業振興につながる」と、この地での就農を決意した。マンゴー農家で研修を終えたのち、2012年にRYO’S FARMを開園。梁さんにとって館山市での農家生活は、とても幸せなものだという。
「農業はとても楽しいです。大変なこともあるけれど、自然が相手なので文句も言えないですしノーストレス。自分が農家としての成功例になって、若い方が農家を目指すようになってくれたらうれしいですね」。
旬を迎えたパッションフルーツの楽しみかた
まんまるに見えるパッションフルーツだが、実はラグビーボールのように三角形になっている。皮はツヤがあり、しっかりと濃い紫色に色づいているものが良質の証だ。食べ頃は、収穫後1週間ほど経ってから。外側の皮に少しシワが寄ってくると熟したサインだが、RYO’S FARMのものは、新鮮なうちに食べても甘味が感じられるのが特長だ。
生のパッションフルーツは、半分に切ってスプーンですくって食べるのが一番。ヨーグルトに入れたり、バニラアイスにかけても美味しい。コンビニの安価なバニラアイスクリームでも、パッションフルーツをかけるとたちまちレストランのデザートに変身するので、試してほしい。
またRYO’S FARMでは、パッションフルーツを使った自家製バタージャム「リリコイバター」という商品も手作りしている。パッションフルーツとバター、砂糖、卵を一緒に煮込んだシンプルなものながら、果実の香りとバターの風味が絶妙にマッチ。トーストやパンケーキにのせると最高に美味しいと、東京の青山ファーマーズマーケットや通販でも人気の一品となっている。
やっぱり南国のフルーツなので、夏にとれるパッションフルーツは格別に美味しい。香りが濃厚で、甘味と酸味のバランスもすごく良いです」と、梁さん。
南国生まれ館山育ちの、太陽のようなパッションフルーツをぜひ食べてみてほしい。
館山市のパッションフルーツ
情報提供:RYO’S FARM 梁 寛樹さん“旬”の時期
8〜10月の夏シーズンと、12〜3月の冬シーズン年2回
目利きポイント
皮にツヤがあり、しっかりと濃い紫色に色づいているもの。収穫後1週間程して、外側の皮に少しシワが寄ってくると熟したサイン
美味しい食べ方
そのまま生で食べるのが一番。ヨーグルトに入れたり、バニラアイスにかけても美味しい。