沖縄伝統の“ぬちぐすい(命薬)”、サトウキビの魅力を伝える「生黒糖ボンボンショコラ」

TIMELESS CHOCOLATE「生黒糖ボンボン」
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(取材月: March 2024)
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パッケージ
沖縄初のBEAN TO BARチョコレートブランド、TIMELESS CHOCOLATE。彼らがつくるチョコレートの主役は、サトウキビから生まれる黒糖だ。産地や品種によって風味が異なるサトウキビを伝統の製法で黒糖に仕上げ、相性の良いカカオ豆と組み合わせる。カカオとサトウキビのみで作り上げるチョコレートは、沖縄が誇る黒糖の美味しさを世界に伝える可能性を秘めている。今回はそんな黒糖の風味を最も楽しめる「生黒糖ボンボン」を紹介しよう。

TIMELESS CHOCOLATE「生黒糖ボンボン」について、おすすめポイントを紹介しよう。

原材料はサトウキビとカカオのみ

独自の製法でこし餡のように仕上げた黒糖を、粗挽きにしたガーナ産カカオ100%のチョコレートで何層にも手作業でコーティング。今まで味わったことのない黒糖の風味を体験できる。

沖縄で受け継がれてきた「命薬(ぬちぐすい)」としての黒糖

県内にも10名も残っていない伝統の黒糖職人。「命薬(ぬちぐすい)」として代々伝えられてきた彼らの黒糖を使うことで、その味わいと価値を未来へ繋いでいる。

サトウキビにもこだわる

黒糖の原料になるサトウキビは提携農園で自然栽培したもの。1本1本を手刈りし、最も旨味のある一番搾りのサトウキビ汁のみを使用し、伝統的な製法で手焚きした黒糖のみを「生黒糖ボンボン」に使っている。

コーヒーに合う砂糖を追い求めるうち、沖縄のサトウキビ文化に出会った

TIMELESS CHOCOLATEオーナーの林正幸さんのルーツは旅人。国内国外を渡り歩き、エスプレッソの本場オーストラリアのメルボルンでバリスタとして活躍した。コーヒーに夢中だった彼が注目したのが「沖縄の黒糖」。そして黒糖の魅力を伝えるために選んだ手段がチョコレートだった。

林さんがいま進めているのが、黒糖そのものを作るプロジェクト。目指すのはさまざまな品種・産地のサトウキビをブレンドした、誰でもおいしく使える黒糖だ。また林さんは今後、世界へも沖縄の黒糖を発信したいと考えている。

「メルボルンではエスプレッソに砂糖を入れて飲む文化があるんですが、コーヒーは世界一のクオリティを追求するのに、砂糖への知識やこだわりは全くないことが気になって。最高の砂糖とは? と考えを巡らせるうち、沖縄の黒糖に行き着きました。実際に沖縄に渡り調べていくと、黒糖の原料であるサトウキビもコーヒー豆と同じで、品種や産地によって風味が違い、黒糖の味にも個性があることがわかった。一方でサトウキビは安値で買い叩かれて、伝統的な黒糖製法が途絶えかけているという状況も見えてきて、沖縄のサトウキビ文化を守りたいと思うようになりました。それでサトウキビとカカオだけを使ったチョコレートを作ろうと思ったんです」

チョコレートの集合

自分でカカオ豆を輸入して焙煎するところからスタートしたTIMELESS CHOCOLATEは、沖縄県特産品コンテストで最高賞となる「県知事賞」を受賞するまでの名品に。一貫しているのは、サトウキビとカカオのみを使う引き算の味わいだ。

「たとえば西表島や伊平屋島のサトウキビで作る黒糖はバニラのような香りがするし、与那国島の黒糖はほんのり塩味を感じる。シングルオリジンのコーヒーのように単一の品種・産地のサトウキビを使い、その個性を引き出すカカオだけを組み合わせてチョコレートをつくっています」

沖縄が生んだ本物の黒糖を味わう「生黒糖ボンボン」

黒糖を炊く様子

チョコレートに使う黒糖は、林さんが「師匠」と呼ぶ、伝統的な黒糖職人が手掛けている。彼のような職人は県内にもう10人も残っていないという。シンメイ鍋という伝統的な鍋を使い、薪火で炊き上げる黒糖は濃厚な黒色で、とても滋味深い味わいなのだそう。

「この黒糖を食べた70歳くらいの女性が『やーがなんでこの味知ってるば?(なぜあなたがこの味を知っているの?)』と言って泣きだしたことがあって、僕はその時、これがここ何十年かで消えかけていた本当の沖縄の黒糖の味なんだと確信しました。また彼女は『この黒糖は先祖代々受け継いできた大切なヌチグスイ(命薬)だよ』とも言ってくれて、すごく感動した。だから僕はチョコレートにとっては不利な状況の亜熱帯気候の沖縄で、チョコレートを作り続けているんだと思います」

カカオ

そんな黒糖の味わいを一番感じられるのが「生黒糖ボンボン」だ。サトウキビの一番搾り汁をこし餡のような質感に炊き上げ、ガーナ産カカオ100%のチョコレートで包み込む。黒糖とカカオが口の中で溶け合うと、濃厚な味わいがいっぱいに広がる。ひと口で食べるとパワーが強すぎるので、かじるくらいがおすすめだと林さん。

生黒糖ボンボン

「お酒はもちろんですが、サトウキビ自体に少し緑の香りがあるので、抹茶や煎茶など緑の香りがする飲み物と合わせると面白いですよ。きっと皆さんが味わったことのない黒糖の味を感じていただけると思います」

“KOKUTO SUGAR”を世界へ

林さんがいま進めているのが、黒糖そのものを作るプロジェクト。目指すのはさまざまな品種・産地のサトウキビをブレンドした、誰でもおいしく使える黒糖だ。また林さんは今後、世界へも沖縄の黒糖を発信したいと考えている。

黒糖

「オーストラリアのバリスタ仲間に黒糖を食べさせたら『これはなんていうお菓子? こんなに穀物の味がするBrown sugarはない』と驚かれて可能性を感じました。現地にあるBrown sugarと差別化するために、今後は『Kokuto sugar』『Black sugar』という名前の特別な砂糖として発信していけたらと考えています。また、いま沖縄のコーヒー業界や料理人、酒造所など、沖縄で活躍する各分野のプロと一緒に、ブレンド黒糖の開発に取り組んでいます。まずは品種や産地別の味の違いを押すのではなく、さまざまなサトウキビをブレンドして、みんなが使いやすい黒糖にするつもりです。これを起点に、多くの方に沖縄の黒糖を知ってもらえたらいいなと思います」

まるで行き先を決めない旅のように、コーヒーから生まれた黒糖への想いはチョコレートに着地。沖縄の歴史と文化が詰まったTIMELESSなチョコレートを味わってみてほしい。

Writer : ASAKO INOUE
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Photographer : SATOSHI TACHIBANA
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。

TIMELESS CHOCOLATE

所在地 沖縄県中頭郡北谷町宮城3-223
TEL 098-923-2880
営業時間 9:00-18:00
URL https://timelesschocolate.com/

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

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