「秋の味覚 マッシュルーム」
東京・神楽坂で全国の“旬”野菜を取り揃える八百屋「瑞花」を営みながら、人を元気にする食について伝えている矢嶋文子さんに、秋の味覚「マッシュルーム」の目利き方法や食べ方を語ってもらった。
実りの秋は、美味しいきのこが勢ぞろい
「きのこ」は秋の味覚として最初に思い浮かぶ食材の一つ。
いまでは化学肥料の培地で生産された栽培物が流通し、手頃な食用きのこは一年中手に入るが、松茸に代表されるような山で育った天然もののきのこが出回る季節は、やはり秋といえる。
秋の気配も深まってきたころ、矢嶋さんのお店「瑞花」(現在は閉店)を取材に訪れると、しいたけやしめじなどお馴染みのきのこから、珍しい天然ものの舞茸まで、たくさんの種類のきのこが陳列されていた。
「天然のきのこは希少で高価ですが、この時期にしか味わえない上質な香りや風味をぜひ味わっていただきたいです。たくさん買って余ったときは、蒸れないようにキッチンペーパーや新聞紙に包んで冷蔵庫に入れておけば3、4日は大丈夫です。うちの店の商品にもピクルス液を販売していますが、きのこのピクルスにすればさらに長く楽しめますよ」と、矢嶋さんはアドバイスをくれた。
美味しいマッシュルームの選び方
数多くの種類があるきのこだが、今回矢嶋さんがおすすめしてくれたのはマッシュルーム。
マッシュルームを美味しくするのは何といっても培地だと矢嶋さんはいう。
古代ヨーロッパでは、馬小屋の厩肥(きゅうひ)に自然発生していたという歴史をもつマッシュルーム。
矢嶋さんの営む八百屋「瑞花」の仕入先の栽培農家でも、そうしたルーツに則り、わざわざ京都競馬場からオーストラリア産小麦のわらを取り寄せて菌床をつくっているそうだ。
マッシュルームは秋の長雨の頃に“旬”を迎える。
ポイントは、適度な気温と湿度。二つの条件が整ったときにニョキニョキと成長する。よって、秋だけでなく春先にも2週間ほど“旬”といえる時期があるそうだ。
・丸くて形が整ったもの。サイズの大小は美味しさにあまり関係ない
・生で食べるなら、堅く締まったもの
・香りを楽しむなら、カサの開いたもの
「堅く締まった若いマッシュルームは、そのみずみずしさが活きるよう、スライスして生のままサラダにトッピングするのがおすすめです。反対にカサが少し開きはじめたものは、胞子を持ち始めて香りが強いので、しっかり炒めたり、煮込むことでその香りを楽しめます」と、矢嶋さんは教えてくれた。
“旬”の香りを味わう「マッシュルームソースのニョッキ」
秋のディナーにぴったりの「マッシュルームソースのニョッキ」の作り方を、矢嶋さんに教えていただいた。「ニョッキ」とは、じゃがいもと小麦粉で作る団子状のパスタ。
「マッシュルームソース」に最も適しているのは、完熟したブラウンマッシュルーム。カサの裏が開いて少し黒ずんでいるくらいのほうが香りは強く、加熱料理には向いているそう。じっくり炒めたソースをニョッキに絡めて、マッシュルームの香りを存分に楽しもう。
マッシュルームは身体に嬉しいバランス食材
きのこ類全般にいえることだが、マッシュルームは低カロリーながら旨みや香り、食感を楽しめて満足感が得られやすいバランス食材。さらに、ビタミンや不溶性食物繊維、ミネラルなど、身体に嬉しい栄養素も含まれている。
今回紹介した「マッシュルームソースのニョッキ」も、肉類を使っていないのに十分に食べ応えがある。食欲の秋、マッシュルームを上手に取り入れながら、“旬”の味覚を楽しんでみてはいかがだろう。