季節と出逢う「夏の和菓子」
夏の和菓子
●水まんじゅう
葛で出来たつるんと口触りの良い皮に、甘さ控えめの餡が入った見た目も涼やかな夏のまんじゅう。しっかり冷やして食べると美味しい。「五十鈴」では吉野葛をふんだんに使いしっかりと煮詰めることで、柔らかいながらも弾力のある食感を出している。
●あゆ
5月下旬〜8月頃の鮎の“旬”の時期に合わせてつくられる夏の定番焼き菓子。鮎を模した生地の中には、小豆餡やモチモチした食感の求肥(ぎゅうひ)餡などが包まれており、店により個性がある。「五十鈴」では甘さ控えめの求肥を、生姜の絞り汁を染みこませた皮で包み、さっぱりとした仕上がりに。
●水ようかん
一般的な本練り羊羹よりも水分量が多くなめらかで、さっぱりとした冷たい夏の羊羹。風味を壊さぬように煮た小豆を、細かい網目で丁寧に漉し、つるんとした口当たりに仕上げられている。「五十鈴」では本練り羊羹よりも砂糖を控え甘みを抑えることで、より夏に食べやすい味わいにしている。
●ねりきり「朝顔」
白餡をベースに季節の情景を象った「ねりきり」。様々な形状があるが、夏に人気のモチーフは、この季節を代表する植物の一つである「朝顔」。ほんのり紫色をした涼やかな見た目は、夏のおもてなしにぴったりだ。
●錦玉(きんぎょく)「金魚」
寒天に砂糖や水あめなどで甘味をつけ、型に入れて固めた和菓子を「錦玉」という。夏の定番錦玉は金魚鉢を象ったもの。練りきりでできた色とりどりの石や、羊羹でできた鮮やかな金魚が寒天の中に浮かび、見た目にも涼やかな一品だ。
●くずきり
発汗作用があるともいわれる葛は、夏の和菓子の定番食材。つるっとした食感のくずきりをよく冷やして黒蜜につけて食べるのが定番の食べ方。「五十鈴」では吉野葛を使用し、しっかり煮詰めコシのあるくずきりに仕上げている。
※掲載している和菓子の名称は「五十鈴」での販売名です。地域によって呼び方が異なるものがあります。
蒸し暑い夏だからこそ食べたい和菓子を
「五十鈴」代表の相田茂(あいだ しげる)さんに、夏の和菓子の特徴についてお話を伺った。
「夏の和菓子をつくるときは、暑い日にも食べたくなることを意識しています。和菓子の要である小豆餡は使いますが、食感や、糖度や塩味、酸味などでさっぱりと食べられる工夫をしています」。
夏の定番の和菓子は、葛や寒天、生麩など、つるっとのど越しの良い食感の素材を使ったものが多い。葛は漢方薬にも使われるように、発汗作用があるともいわれており暑気払いにもぴったりだ。小豆餡も細かい網目で丁寧に漉して口触りを滑らかにしたり、塩を多めに入れたりして、冬の餡とは味も食感も異なるのだそう。
「人は気温によって欲する糖度が違うと思うんです。寒い時期に美味しく感じる本練り羊羹は糖度が70度くらいある。それはやはり暑い夏にはちょっと食べにくいと思うんですよね。昔に比べると和菓子全体的に糖度が低くなってきていると感じています。風土や環境、人の嗜好の変化に合わせて少しずつ味わいも変化してきていますね」と、相田さん。
使用する食材も、まさに夏らしい。初夏に“旬”を迎える青梅やアンズ、シャキッとした食感の甘夏などの酸味の強い食材が、甘い餡やのど越しの良いつるっとした素材に合わせられている。すべては高温多湿な夏でもさっぱりと美味しく食べられるための工夫だ。和菓子を笹の葉で包むのも、防腐効果だけでなく、清涼感を誘う工夫の一つだという。
「五十鈴」の夏の和菓子は、お盆の帰省の手土産としても人気があるそうだ。さっぱりとした味わいとともに目でも清涼感を感じられる夏の和菓子。この夏の手土産に選んでみてはいかがだろうか。