学生主導による規格外野菜カフェ「さらまんじぇ・とーかい」
食品ロス対策に取り組む学生たちがカフェを運営
東海学院大学 西キャンパス 新3号館の一角にカフェ「さらまんじぇ・とーかい」は、あります。一見よくあるカフェかと思いきや、接客や調理を担当するのは管理栄養学科の学生たち。メニュー表には、規格外野菜を使ったドリンクやスイーツ、郷土料理が並びます。
きっかけは、2016年にスタートした持続可能な社会を学ぶプロジェクト。2017年からは調理実習で出た野菜クズを使った堆肥づくりに学生たち自らがチャレンジしました。そして翌年2018年から、いよいよその堆肥を使った野菜づくりに着手します。
しかし栽培する野菜の4割ほどが出荷できない規格外野菜に。それら野菜を無駄にしないよう、やはり学生プロジェクトとして運営するマルシェやフードドライブ、子ども食堂で活用してもらっても余ってしまうものを、大学で学ぶ栄養学の知識を活かしたお菓子にしました。はじめは、菓子製造業の許可を得た菓子工房で菓子を製造し、県内イベント等でキッチンカーを使った販売の形をとりましたが、それでもなお消費できないことがあったため、飲食店営業許可を取り、2023年4月~「さらまんじぇ・とーかい」のオープンに至ったのです。
栽培している野菜は年間20種ほど。学生たちにとっては馴染みのない野菜づくりですが、カフェの運営に関わる西尾咲音さん、黒田七海さんは、お菓子づくりとともにやりがいを感じています。
「JAぎふや岐阜県の方たちからアドバイスをもらいながら野菜作りをしています。寒い時期も暑い時期も毎週畑に行っているので大変ですが、収穫した野菜を自分たちで調理するというのが楽しくて、畑作業も苦になりません。『東海学院大学ブランド野菜』として地元スーパーにも並びますが、出荷量は少なくてすぐに売り切れてしまうので、見つけたらラッキーですよ」
「農業の専門家ではないので、どうしても規格外野菜が多く出てしまいますが、それをなくそう、という思いがお店オープンに繋がりました」
また作っている野菜は、農林水産省による「温室効果ガス削減見える化」実証にて、星3つの評価を獲得。これは、農薬や化学肥料をほとんど使わない栽培情報をもとに温室効果ガス削減率を算出したもので、「にんじん」54%削減、「大根」「白菜」「さつまいも」はいずれも87%削減という結果を得ることができました。これを受けて、2023年10月からは、星3つの見える化ラベルを付けたお菓子やメニューを展開しています。
料理やスイーツを通じて、食品ロス対策の重要性を伝えたい
カフェのメニューは、学生たちが考案したものです。旬の地産野菜と規格外野菜を上手く組み合わせており、値段も手ごろ。プロ顔負けの味で、お昼どきは地元住民でにぎわいます。総料理長としてカフェを仕切る河合輝明さんは「お客さまに旬の味を届けたい」と、話します。
「一押しは、にんじんを使ったスイーツです。売れ筋は、生地ににんじんのペーストを練りこんだ『チョコタルト』や『甘酒とにんじんのカヌレ』など。なかでも『幻のにんじんチーズケーキ』は、半世紀前から学科に伝わる伝統のレシピを使った自信作です」
食品ロス対策への意識が低い若い世代にも関心を持ってもらうため、見た目の華やかさも意識して、2023年4月からアフタヌーンティーセットの提供もはじまりました。年中行事、イベント、日本の食文化の継承、郷土料理なども意識しており、同年12月にはクリスマス仕様のセットが登場。3段のアフタヌーンティースタンドに「さつまいもクリームのツリークッキー」や「焼き芋と人参のマドレーヌ」などが豪華に盛りつけられました。
「美味しい料理やスイーツを通じて、食品ロス対策に関心を持ってもらえれば」と、河合さん。このような若い人の頑張り、地域に活力を与える取組みが、全国に広がっていくことを期待せずにはいられません。