惜しみない手間ひまが育む、岡山の“色白” の桃

岡山県
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(取材月: May 2015)
瀬戸内海に面する岡山県は “晴れの国”と称されるほど、年間を通じて温暖で降水量が少ない瀬戸内海式気候をもつ。こうした穏やかな気候をもつ岡山県では桃やぶどうなどの果物が多く栽培され、国内有数の果物の産地としても有名だ。

なかでも、乳白色にほんのり桃色が差す美しい桃は岡山県を代表する果物の一つである。桃には「清水白桃」や「本白桃」、「白鳳」、「白麗」、「おかやま夢白桃」など数多くの品種があり、それぞれの品種ごとに“旬”の時期や味わいは異なる。岡山県では数多くの桃の品種が生み出されており、長年にわたり培われてきた栽培技術と桃を育む情熱が今も地域に受け継がれている。

袋掛けをして育てられる“色白”の桃

桃農園写真

岡山県の中南部に位置する赤磐市で、50年以上に渡って桃農家を営む國安武彦さんを訪ねた。

南東向きの陽当たりの良い傾斜地に広がる桃畑では「清水白桃」をはじめとした6種類の桃を育てている。我々が取材で訪れた5月末は小さく実った実に、一玉ひとたま袋をかぶせる「袋掛け」作業の真っ最中だった。

受粉を終えた花が実をつけ、ピンポン玉より大きくなった頃が袋掛けのタイミング。60本もの桃の木に3人がかりで、丁寧に素早く袋を掛けていく。桃の木1本には大体500個ほどの実をつけるというから、その手間は膨大である。

袋掛け写真

白桃の美しい乳白色をつくりだす裏側には、この袋掛けの作業がある。一般的にイメージされる濃いピンク色の桃は袋を掛けない「無袋栽培」という方法で育てられているが、白桃は一つひとつ袋に収めることで太陽の光を直接浴びず、白桃の特長でもある色白の果実へと育っていく。また、袋掛けすることで雨風によって果実が傷ついたり、病害虫に食べられたりする危険を減らし、簡単に果皮をむけるほどの繊細で柔らかな桃となるのだ。

桃づくりにかける気遣い

國安さん写真

「桃の栽培は果物の中でもとりわけ手がかかる」と國安さんは語る。桃の実はなったらなった分だけ育てれば良いというわけではない。生理障害といって、栄養分の過不足によって葉が変色したり、果実の成長がとまったりすることがあるのだ。また、実をつけすぎると糖度が少なくなってしまうため、毎日桃の木、一本いっぽんにつく果実の育ち具合をチェックし、小さすぎるものや一本の枝になりすぎているものなどを間引いていく。

桃が良く育つための環境作りも重要である。畑の土は化学肥料に頼らず土が持つ自然の活力を引き出す「ムクダイ農法」を採用。
「人間に例えたら、健康維持のために薬を飲むのではなく、毎日きちんと三食食べて運動をするのと同じようなこと。科学的なことは分からんけど、良いから続けている」と笑いながら語る國安さん。長年桃作りに携わってきたからこその肌感覚は何ものにも代え難い説得力がある。

熟練の目が見極める収穫のタイミング

白桃写真

様々な手間ひまをかけて育まれる白桃だが、実は、収穫がもっとも重要な作業だという。というのも、桃の収穫時期は非常に短く、収穫のタイミングを見極めるのが難しいのだ。例えば「清水白桃」の場合、収穫時期は7月下旬から8月上旬のわずか二週間のみ。収穫のタイミングを逃すと、その桃は商品価値を失ってしまう。

「収穫のタイミングは早すぎても糖分が足りないし、熟しすぎてもダメ。十分な大きさがあり、甘みもしっかりのっているものを長年の勘で瞬時に判断しなければならない」と國安さんは語る。

こうした長年にわたり培ってきた生産者の経験と、労力を惜しむことのない愛情によって、最高品質の桃が生まれるのだ。

人気スポット「美観地区」で岡山のフルーツを堪能

美観地区写真

“旬”の短い「清水白桃」を使ったスウィーツが食べられる倉敷市の美観地区にある岡山県青果物販売グループの直営店「くらしき桃子」を訪れた。

伝統的な日本建築が残された情緒ある町並みの美観地区は観光客も多く訪れる人気スポットである。2013年4月にオープンした店舗は築150年の古民家をリノベーションした趣ある雰囲気で、1階が販売スペース、2階はカフェになっている。

“旬”の時期に期間限定で登場するパフェは「清水白桃」を贅沢にもまるごと一個使ったボリューム満点の人気メニューだ。その他にもスムージーやジェラートなど、岡山県のフルーツを思う存分堪能できるメニューやお土産品が揃っている。

パフェ写真

“旬”のフルーツを風情ある町並みの中で味わえるのは岡山県ならではの楽しみ方といえるだろう。

Writer : YUKI MOTOMURA
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Photographer : KOJI TSUCHIYA

岡山県青果物販売株式会社

所在地 岡山県岡山市北区岡南町2-3-1
TEL 086-224-8401
URL http://www.umaina.co.jp/

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

くらしき桃子

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所在地 岡山県倉敷市本町4-1 *JR山陽本線倉敷駅から徒歩約13分
TEL 086-427-0007
営業時間 月~土曜日 10:00-18:00(12~2月は 17:00まで) 日曜・祝日 9:30-17:30(12~2月は 17:00まで) *カフェは閉店の15分前ラストオーダー
URL http://kurashikimomoko.jp/

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

岡山県  観光情報

japan-guide.com https://www.japan-guide.com/list/e1232.html
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