恩納村の海人のために。沖縄名物の「海ぶどう」はこうして生まれた

沖縄県恩納村
海ぶどう
(取材月: November 2022)
沖縄名物といえば「海ぶどう」。別名“グリーンキャビア”とも呼ばれ、その名の通りぶどうのような形の海藻は、プチプチとした独特の食感とさっぱりとした海の香りがたまらない。

30年以上前、この海ぶどうの陸上養殖技術を確立したのが、恩納村漁業協同組合の銘苅宗和さん。海ぶどうを不動の名産品に育て上げた立役者だ。現在もトップ生産者として活躍しながら、他の生産者への指導も行っている。
海ぶどうはどんな風に育てられているのか。銘苅さんを訪ねて、恩納村にある海ぶどうの養殖場へと向かった。

6年間の歳月をかけて確立した陸上養殖方法

沖縄の風景

養殖場があるのは、沖縄を代表する景勝地・万座毛の近く。大きなプールをのぞいてみると、立派に育った海ぶどうが海水に揺られて、気持ちよさそうにふわふわしている。

海ぶどうの養殖場

沖縄の養殖水産物として、もずく、車海老に次ぐ生産量を誇る海ぶどうだが、もともとは沖縄本島にはなく、宮古島の一部の湾にしか自生していなかったそう。平成元年、銘苅さんは糸満の水産試験場(現 沖縄県水産海洋技術センター)で海ぶどうに会い、養殖技術の研究をスタート。そのきっかけは「地元の高齢化した漁師たちを助けたい」という想いだった。

銘苅宗和さん

「当時自分は30代前半で、先輩の漁師たちができる仕事を作らないといけないと思った。60歳を過ぎると漁に出るのは大変だからね。それに自分も新しいものを作りたかったし、海ぶどうは面白いかもしれないなと思って」と、銘苅さんは当時を振り返る。

海ぶどうの養殖

最初の3年間は失敗の連続だった。まずは岩に母藻を貼り付けてやってみたが、均一に伸びないために品質がばらつき、収穫にも丸一日かかってしまう。そこで4年目からはもずくの養殖方法を応用し、板状の網2枚で平たく並べた母藻を挟む形にしたところ、これがうまくいった。プールには水深18mから汲み上げた海水を掛け流しにして、海の中と同じような環境を整備。どんな養分を与えればいいか、日照時間はどれくらい必要なのか。銘苅さんは6年間研究に没頭し、ついに海ぶどうの陸上養殖技術を確立させた。

「海ぶどうの生育には、塩分濃度、水温、太陽、養分のバランスがとても重要なことがわかりました。台風があったり、日照時間や気温の変化で環境が常に変わるので、毎年マニュアル通りにはいきません。でも一番必要なのは愛情かな。毎日養殖場に来て『今日は暑かったけど大丈夫かぁ〜?』『花芽が出て頑張ったなぁ』って話しかけています」

海ぶどう

夏場は約30日、冬場は50〜60日ほどかけ、8cmほどになったら収穫の時。一本一本、人の手で摘んだ後、海水を流している小さな桶の中で3日間養生する。こうするとで摘み取った時にちぎれた部分が自然に治癒し、鮮度が長持ちするそうだ。また水分が残っていると傷みやすくなるため、出荷前には遠心分離機で水分をしっかり飛ばす。「海ぶどうはすごくデリケートなんです。僕みたいにね」と、銘苅さんは笑う。

数々の賞に輝いた銘苅さんの海ぶどう

皿に盛られた海ぶどう

「色は透き通った抹茶のような深い緑、粒もパンッと張って、甘みがあるのが良い海ぶどうです」と、銘苅さん。銘苅さんのこれまでの取組みにより、地域および県全域へ貢献した功績が評価され、第50回農林水産祭において天皇杯を受賞。また、平成29年度に開催された第1回沖縄県海ぶどう品評会で最優秀賞を受賞している。程よい塩味と口の中で弾ける食感は、これまで食べたどの海ぶどうよりも美味しい。

そして、海ぶどうに関してあまり知られていないのが、常温保存をするということ。海ぶどうは寒さに弱く、出荷時はまだ生きているので冷蔵庫の温度は低すぎて弱ってしまうのだ。また銘苅さんいわく、食べ方の定番である三杯酢もあまり良くないのだとか。

海ぶどう丼

「三杯酢をかけるとすぐにしぼんでしまうので、できればノンオイルドレッシングがいいです。うちではサラダに混ぜたり、手巻き寿司の具にしたりもします。また沖縄には『海ぶどう丼』という名物があるので、みなさんにもぜひ食べてほしいですね」

現在は自ら海ぶどうを養殖しながら、新規の生産者の指導にもあたっている銘苅さん。不動の沖縄名物を作り上げたレジェンドでありながら、その姿勢はとても謙虚で、言葉の端々からはあくまでも「地域の水産業を元気にしたい」という想いがうかがえる。

海ぶどう

「いまうちの息子が、栄養の与え方や配合を大学の先生たちと相談しながら改良していて。こうして30年以上やってきているけれど、まだまだペーペーです。海ぶどうに関わる沖縄の海人たちが、ちょっとでも豊かになってくれたら嬉しい。恩納村の海ぶどうをもっと良いブランドにしていきたいし、良いものをつくればどこでも通用するんだということを、これから養殖を始めるメンバーにも伝えていきたいと思います」



        
                  
Writer : ASAKO INOUE
 / 
Photographer : MAKOTO TANAKA

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