りんごの町・飯綱町で育まれたりんごを味わう
飯綱町で美味しいりんごが育つ理由
妙高戸隠連山国立公園にも指定された飯縄山のふもとに位置する飯綱町は、りんごが美味しく育つ気候風土に恵まれた、知る人ぞ知るりんごの名産地だ。
りんご生育に最適な気温は10℃前後といわれており、標高500〜700mの飯綱町の年間平均気温は11.3℃と適している。また内陸性気候で昼夜の寒暖差も大きいため、養分をたっぷりと蓄えた濃厚な味わいのりんごが育つのだ。4〜11月の降水量が少ないことも、りんごにとってはうれしい環境だ。
りんごの目利きポイントは”色”と”お尻”
食べ頃のりんごを見分ける方法を、りんごに関する資料展示や貴重なりんご品種の屋外展示が見学できる博物館「いいづなアップルミュージアム」の学芸員・藤澤充子さんに教えてもらった。
「注目していただきたいのは、りんごの”色”と”お尻(底の部分)”です。色がしっかりと付いて鮮やかなものは、太陽の光をたっぷり浴びた証拠で、美味しさの一つの目安です。またお尻が広がっていて、ふじなら黄色、その他の種類であれば黄緑色になっていたら食べ頃のサイン。地元の直売所に行くと完熟で採れたてのものが並ぶので、ぜひ飯綱町に来て旬の美味しさを味わっていただきたいですね」。
飯綱町では毎年8月から冬にかけて、50種類以上の品種のりんごが登場する。今回は冬に食べ頃を迎える代表的な品種を紹介する。
すべてのバランスが絶妙な王道「ふじ」
甘さ、酸味、硬めの食感のバランスに優れた王道品種。果汁も多く、味わいは濃厚で日持ちもするという良いところづくしのりんごで、世界一の生産量を誇る。生食で食べるほか、タルトタタンなどのお菓子づくりにも向いている。
甘味と酸味の黄りんご「シナノゴールド」
明るい黄色のカラーが美しい長野県生まれの品種。味わいは濃厚で、甘味と酸味のバランスも良好。ほのかに洋梨やバナナのような香りを持つ。近年では日本を飛び出して欧州イタリアでも栽培が始まっている。
酸味がしっかりとした製菓向け「グラニースミス」
世界中で生産されている青りんごの代表格。1860年代、オーストラリアでマリア・アン・スミス夫人が晩年発見したことからスミスばあちゃんという品種名がついたそうだ。飯綱町では約20年前から栽培がスタート。果肉は硬めでさわやかな香りと強い酸味があり、アップルパイやジュース、ジャムなどの加工用として最適。
大玉で甘味も香りも強い「あいかの香り」
長野市村山の藤牧秀夫氏の園で誕生し、2001年に品種登録。大玉で保存性が高く、甘味も香りも強いジューシーなりんご。「あいか」は藤牧氏の長女の名前から取ったというエピソードもある。
甘味の強い群馬生まれの「ぐんま名月」
1991年に品種登録された群馬県の品種。糖度が高く、香りも良いため生食として非常に人気が高い。形は丸く、全体的に黄色い色だが、所々が薄く赤味を帯びたマーブル状の色合いが美しい。
飯綱町産グラニースミスで作る絶品スイーツ
東京・九品仏駅前に2020年1月にオープンしたパティスリー「INFINI(アンフィニ)」。シェフを務めるのは、パリの三ツ星レストランや都内の人気店「UN GRAIN(アングラン)」でシェフパティシエを務めた経験を持つ金井史章さんだ。
「グラニースミスはパリッとした食感としっかりとした酸味があって、僕は生で食べるのも好きです。フランスにいる時はグラニースミスをレモン果汁と合わせて緑色のソースを作ったり、薄くスライスして低温で焼いてチップスにしたりとよく使いました。飯綱町ものは実が締まっていて、とても質がいいと思います」。
今回は金井シェフに、飯綱町産のグラニースミスの酸味を生かした2種のスイーツをつくってもらった。
一つ目は、「ブランシュネージュ(白雪姫)」。タルトタタンを香りの良い高知産ベルガモットのゼリーで包み、軽い食感のピーナッツを入れ込んだホワイトチョコレートでコーティング。上にはさわやかな風味のフロマージュブランというチーズクリームをあしらった。金井シェフ曰く「りんごを食べた白雪姫が白いベッドで眠っているイメージ」という可愛らしいケーキ。ミルキーなホワイトチョコレートと酸味の利いたりんごの相性が良く、ベルガモットの香りがりんごの風味を引き立てる。
もう一つはフランス・ノルマンディー地方の伝統菓子「クルスタッド・オ・ポム」を金井シェフ流にアレンジ。紙の様に薄い生地に、スポンジ、クレーム・ダマンド、とろりとソテーしたりんごを包んで焼き上げている。パリパリと香ばしい生地と、しっとりと甘酸っぱいりんごのコントラストがたまらない。
これら2つのスイーツはINFINI店舗にて、2021年2月下旬まで販売している。金井シェフの技と、飯綱町のりんごが合わさった特別なスイーツをぜひ味わってみてほしい。
「飯綱町のりんご」
情報提供:いいづなアップルミュージアム 学芸員 藤澤充子さん“旬”の時期
8月から12月(品種により異なる)
目利きポイント
・全体的にしっかりと色づいているもの
・お尻(底の部分)が広がっている
・「ふじ」はお尻が黄色のもの、それ以外の品種は黄緑色のもの