春の景色を写し取る、里山生まれの「グリーンハニー」
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アンドファームユギの「グリーンハニー」についておすすめポイントを紹介しよう。
二度と出会えない、その年・その時だけの味わい
農園周辺でミツバチが集めてきた蜜を使用。さまざまな花の蜜が使われており、毎年味わいが異なり、個性豊かな味わいが楽しめる
ハチミツの持ち味を活かした加工方法
一か月限定で採蜜作業を行い、ミツバチの負担を軽減。ハチミツの本来の味を生かすため、ろ過作業は最小限にとどめ、加熱処理も行わない。
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採蜜した日付を商品ラベルにナンバリング
商品ラベルにある「427」や「511」などの数字は採蜜日を表したもの。贈る相手の誕生月に合わせて、購入していく人も多いのだとか。
農業と養蜂業が共存する、アンドファームユギ
年の瀬が漂う12月、アンドファームユギを訪ねた。ちょうど大根やニンジンなどの収穫時期と重なり、農園の作業場は出荷の準備に追われていた。
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「ミツバチは寒さに弱いので、いまは巣箱でお休み中です」。そう話すのは、養蜂を担当している長谷裕介さん。農業系大学時代は養蜂に青春をささげ、いまもこうして養蜂に取り組んでいる。
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アンドファームユギの農園にはそこかしこに花が咲き、ミツバチにとってはこの上ない環境だ。農業と養蜂業は最適なマッチングに思えるが、意外にも近所に同じスタイルの農家はいないという。
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「ミツバチの行動範囲は巣箱から半径2キロメートル程度だとされています。そのため、伝染病の感染拡大を防ぐため、一定の距離を置いてミツバチを飼育する決まりがあるんです」。
人に飼育されているミツバチは、法律上「家畜」に分類される。酪農家にとって乳牛がそうであるように、養蜂家にとってミツバチは大切なパートナーなのだ。
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「世の中には『家畜』という言葉に抵抗感を覚える人もいるようです。動物を搾取している、使役しているだろうって。けれども、それは単なる先入観であって、私はミツバチとの共存を考えてこの仕事をしています。飼育していると愛着が湧きますし、科学的な根拠はないんですが、ミツバチも人に慣れている気がします。視覚や嗅覚がセンサー代わりになっていて、個人の認識をしているような素振りをみせるんです」。
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ミツバチとの共存を目指す姿勢は「採蜜」にも表れている。巣箱からハチミツをとる採蜜は、年間スケジュールのなかで最も重要な作業だといえる。この地域では一般的に4月から6月にかけての3か月間行われるが、長谷さんはその期間中のひと月程度しか採蜜しない。たとえ巣箱にハチミツが貯まっていても必要以上の採蜜は避ける。その理由は至ってシンプルだ。
「ミツバチにあまり負担をかけたくないんですよ。一度採蜜すると、ミツバチたちはフル稼働で蜜を補充しようとします。それが繰り返えされると、ミツバチたちはやがて疲弊してしまう。動きがにぶくなり、本来の能力を発揮できなくなってしまう。人間も働きづめだと生産性が下がりますよね、それはミツバチだって同じこと。採蜜期間を短くすることでハチミツの収量は少なくなりますが、その分、『グリーンハニー』は持続可能な形で養蜂を営みつつ、美味しい蜂蜜をお届けできる商品なんです」。
ミツバチと人の手が織りなす「純粋」なハチミツ
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「グリーンハニー」は、菜の花やフジ、アカシアなどの蜜が使われている。巣箱周辺にはラベンダーやヘアリーベッチというミツバチが好む植物も植えられ、採蜜期間に開花している花が途切れないよう工夫もされているようだ。ミツバチが考えて集めてきた蜜だからこそ、時期によって味や香りが微妙に変化し、それが個性となって表れる。
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こうしたハチミツならではの特性について、長谷さんは「ワインの世界でいう『テロワール』に近い」と話す。「テロワール」とは、もともとフランス語で「土地」を意味する。そこから転じて、ぶどうの育ったその土地の気候や自然、土壌などの環境の影響を受けて形成される、ワインの特長のことを指す言葉だ。
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水あめや甘味料などを加えているハチミツが流通しているという言説が流布されている中で、「グリーンハニー」は収穫した状態を極力維持した「純粋さ」を売りにしている。巣箱の中でハチミツを熟成させているため、適度に水分が飛び、自然なとろみと濃厚な甘みが引き出せる。また、ハチミツ本来の持ち味を活かすために、ろ過作業も最小限の回数にとどめている。同じ理由で、加熱処理も行わない。長谷さんにいわせれば「ハチミツは生もの」。「グリーンハニー」が低温下で結晶化しやすいのは、純粋蜂蜜がもつ特性のひとつだという。
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長谷さんは養蜂業の一環として、蜜蝋づくりのワークショップも開いている。今後は、「自然がありミツバチが暮らす世界」の魅力発信にも力を注いでいく考えだ。
「消費者の方たちは、産地や製造元をとくに気にすることなくハチミツを購入している印象を受けます。しかし、養蜂家としては少しでも質のいいハチミツを味わってほしい。とはいえ、よい買い物をするためには正しい知識が必要です。適切な情報を基にご案内ができるのは、我々養蜂家の役目だといえるでしょう。知り合いの養蜂家は寡黙な人が多いのですが、言語化する能力を買われることが多いことから、同業者の力を借りつつ情報発信に努め、業界全体の盛り上がりにつなげていきたいです」。
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ミツバチと人の手が織りなす「グリーンハニー」は、この土地ならではの味わいだ。ヨーグルトやチーズなどの乳製品にかけたり、グレープフルーツにかけたり。用途はさまざまだが、まずはひと匙口に運んで、里山の“風土”を味わってほしい。