青唐辛子の風味を詰め込んだ、島生まれの万能オイル
みやがわ農園の「ぺぺろんおいる」について、おすすめポイントをご紹介しよう。
青唐辛子のみを使用したフレッシュな味わい
一般に香辛料として馴染みがあるのは、赤く熟した赤唐辛子だが、島唐辛子は青いうちから辛いのが特長。「ぺぺろんおいる」で使用するのは、熟す前の青唐辛子のみ。他ではなかなか見かけない青唐辛子を使ったオイルは、辛みとともに爽やかな風味が味わえる。
つくり手の温かみを感じる手づくりのラベル
商品ラベルに描かれた島唐辛子のイラストは農園主の母親が、商品名の書体は友人が手書きをしたパッケージ。商品紹介のパンフレットも母親が制作を手掛けている。洗練された都会的なデザインではなく、あえて身近な人との手づくりにこだわったという、つくり手の温かみが感じられるデザインとなっている。
新島初の島唐辛子販売から島唐辛子を使った商品開発へ
東京本土から南に約150kmの位置にある離島、新島でみやがわ農園を営む、宮川優子さん。新島ではもともと自家用に島唐辛子が栽培されていたというが、島内で最初に販売用の島唐辛子生産を始めたのが宮川さんだ。
「新島の土壌は砂地で水はけがよく、太陽の日差しとバランスがよいのか、辛みに加えて旨みや風味がある島唐辛子が育つんですよ」と、宮川さん。
みやがわ農園で栽培している島唐辛子は、小笠原諸島由来の細長く肉薄な「小笠原系」と、八丈島由来の丸く肉厚な「八丈系」という2系統をもとにしている。
「この2系統を選抜し、両方の良さを生かした辛味や風味、大きさなど理想の形に実るようにしているのですが、唐辛子は生命力が強く、人の手を介さずとも種がすぐ先祖帰りしてしまうため、なかなか理想の形を安定し続けるのは難しいんです」。
東京本土で生まれ育った宮川さんは、結婚を機に新島へ移住。かねてより憧れていた農業を始めたのは1999年のこと。ハウスを建てることからはじめ、3年かけて12棟のハウスを完成。シダ科の植物である、レザーファンの栽培で農業を軌道にのせた。
島唐辛子の栽培を始めたのは2003年。東京島しょ振興公社から、島しょ地域への客船ターミナルのある東京都竹芝のアンテナショップに出品する、一味唐辛子用の唐辛子栽培の依頼を受けたのがきっかけだ。
「実はこのとき行き違いがあり、大量の唐辛子が余ってしまったんです。販売先に悩んでいたところ、ソムリエの田崎真也さんがプロデュースするレストランから一味唐辛子の注文をいただくことができました。それをきっかけに、みやがわ農園の商品として一味唐辛子の販売を始めました」。
この一味唐辛子の加工は群馬県の業者に委託していたが、より鮮度が高いものを、生産から加工まで自分でつくりたいという想いから、2年の試行錯誤を経て2007年に自分で製造できる環境を整え、現在の「ぺぺろんおいる」が完成。商品を開発するにあたっては、新島産の青唐辛子にこだわったという。
「青唐辛子と赤唐辛子はもともと同じもので、熟す前か後かの違いなんです。青唐辛子ならではのフレッシュ感を味わってほしいと思い、『ぺぺろんおいる』では青唐辛子だけを使っています。島唐辛子の系統によっても風味が違うので、風味の強い細長くて肉薄のものだけを使用しています」。
「ぺぺろんおいる」の原材料は、島唐辛子とエキストラバージンオリーブオイルのみ。摘み取った青唐辛子を新鮮なうちに刻んでオリーブオイルに漬け込み、じっくり時間をかけた工程を経たのち、出荷している。
「摘み取り時期によって辛みが変わるので、島唐辛子の量や熱の入れ方は調整しています。夏前や秋は辛みが優しいため、割って味見し、涙を流しながら摘む時もあるんですよ」。
島唐辛子が広げる新たな島の魅力
島唐辛子は、夏から秋にかけて収穫時期を迎えるが、ちょうど台風シーズンと重なる。みやがわ農園で取り扱っている商品は、ほとんどがお土産用のため、飛行機や船の欠航が続くと売り上げに影響が生じる。また、島唐辛子自体も被害に合い生産がままならない事も多い。
「正直、毎年この時期はもうやめようかと悩みます。それでも、いつも不思議なタイミングで注文をいただいたり、一生懸命花を咲かせている島唐辛子をみると、お客さまにも島唐辛子にも支えられているという気持ちになり、今でも続けることができています」と、宮川さん。
今では、新島の島唐辛子生産者は宮川さんのほかに2軒増え、みやがわ農園にとって最初の取扱商品だった一味唐辛子は新島の新しい生産者団体に移譲したという。隣の式根島でも初となる島唐辛子農家が誕生し、島唐辛子の生産の輪を広げている。
「新島の名産品としてはくさやが有名で、これまで農産物の加工品はなかったそうです。ありがたいことにイベント出店やメディア掲載の機会をいただいて、注文につながることもあります。ただ、自分のできる範囲で納得のいくものをつくりたいと思っているので、生産量に限界があり、まとまった注文に対応できないこともあるんです」と、宮川さん。
みやがわ農園では栽培を島唐辛子に絞り、新たな商品として、東京の佃煮屋に刻み青唐辛子の製造を委託した「生とうがらし」の販売を行う。また、友人と一緒に特産品である明日葉を使用した「ぺぺろんおいる」入りクッキーを開発するなど、周りを巻き込んで新島の食材を活用した商品の開発を続けている。
2020年は新型コロナウイルスの影響で販売機会は減ってしまったが、この機会に以前から関心のあった自然農法にも取り組みはじめたという宮川さん。
「また観光客のみなさんが来島いただける際には、より美味しくなった島唐辛子をお届けできるようにがんばりたいです」と、前向きに島唐辛子の栽培に励んでいる。
幅広い料理に活用できる「ぺぺろんおいる」
宮川さんに「ぺぺろんおいる」のおすすめの使い方について教えてもらった。
「トーストや茹でたじゃがいもなどシンプルな食材にさらっと垂らしていただくと、本来の美味しさが一番わかりやすいと思います。チーズ料理やサラダなどに少しかけると、いつもと違う贅沢な味に仕上がりますよ」。
何に合うか迷ったら、タバスコをかけるイメージで使うといいという。熱を入れると辛みが増すため、炒め物やペペロンチーノなどに使う際は、少量から試してみてほしい。
意外な使い方だと、そばつゆに入れたり、焼き魚やお刺身にかけたりと、和食に合わせて楽しむ人も多いという。そのほか、お好みでヨーグルトやワインビネガー、ハーブソルトと混ぜてオリジナルドレッシングをつくるなど、幅広く活用できる。
小さな島の自然の恵みとつくり手の想いがつまった「ぺぺろんおいる」。日々の料理のアクセントとして召し上がってみてはいかがだろうか。