目利きが語る:旬の魚「サバ」を楽しむ
天然物は旨み、養殖物は脂がしっかりなトロ
日本の”国民魚”といっても過言ではないほど、よく食卓にのぼるサバ。塩焼き、味噌煮、しめサバなど、食べ方のバラエティも数知れず。青魚の一種であるサバにはEPAやDHAが豊富に含まれており、手軽な健康食としてサバ缶が一大ブームになったことも記憶に新しい。
九州地方ではゴマサバが主流だが、日本で流通しているサバのほとんどは「マサバ」という種類だ。寒い海流を泳ぎながら脂肪を蓄えていくので、北の方で獲れるサバは特に脂が乗って美味しいとされている。東京湾を回遊して三浦半島南部の松輪瀬で獲られる「松輪サバ」や、宮城県石巻市にある金華山沖で漁獲、石巻港で水揚げされる「金華さば」、脂が少なく筋肉質な身と旨みの強さを売りにしている「関さば」など、独自の基準を設けたブランドサバを展開している地域もあり、年間の漁獲量も常に上位にある魚種だ。
また養殖も盛んで、鹿児島、愛媛、兵庫、宮城など全国で行われている。養殖物は天然物とは全く違うジャンルのサバで、味わいもおすすめの食べ方も異なる。今日は千葉県で水揚げされた天然サバと、鹿児島県の養殖サバ「むじょかさば」を用意してもらった。
「天然のサバは、秋から冬にかけての時期が一番脂が乗って美味しいです。特に冬のサバは『寒鯖』といって、なかには体脂肪率が20%になるものもあるそうですよ。天然物はいろんなエサを食べて育つので、香りが濃厚で旨みが強いのが特長です。一方で養殖物のサバは甘味のある脂がたっぷり乗ったトロなので、刺身で食べるのが一番。身が柔らかく、青魚特有の香りと旨みがあるのがサバの魅力だと思います」
美味しいサバの選び方
ただ身が大きいだけでは、脂が乗っているとは限らないと根岸さん。美味しいサバの目利き方法を教えてもらった。
「他の魚と重なってくるのですが、まずは顔を見て、目が澄んでいるか、口が開いていないかチェックします。また全身を見てみて小顔なものは、胴体が太っている=脂肪があるということ。太っているかどうかを確かめるには、尾ひれの付け根部分の身のぷっくり感と、横から見て丸みのある身体かどうかを見ます。お腹が大きい子は太っている場合もありますが、捕まえる直前に満腹になっていたり、浮袋が膨らんでいるだけの場合があるからです。またお腹を触って柔らかいものは、酵素によって内蔵の分解が始まっているので、鮮度が落ちています。最後に背中の模様を見ましょう。雑に扱われてウロコが剥げたり、身の水分量が多くなっていると模様がぼやけるので、くっきり鮮明なものが良いですね」
根岸さんおすすめのサバの食べ方は、しめサバ。サバは青魚特有の香りが魅力だが、上手に調理しないと生臭さが全面に出てしまう。料理する人の腕が試される魚とも言える。しめサバは塩と酢で絶妙なしめ具合に仕上げることで、サバの旨みをぐっと引き出す料理だ。
「しめサバはもともと足の早いサバを保存するための調理法ですが、しめすぎると旨みや香りも逃げてしまいます。現代は冷蔵庫があるので保存のためにしめるのではなく、美味しく食べるためのしめ方をご紹介したいと思います」
サバ
情報提供:ねぎお寿司 根岸和也さん“旬”の時期
秋から冬
*品種や気候、水揚げ港によって異なる。
目利きポイント
①目が澄んでいるもの
②お腹の部分に張りがある
③尾ひれの付け根あたりがふっくらしている(脂が乗っている)
④体に対して顔が小さい
⑤鱗が綺麗、模様がくっきり
⑥口が閉じている
⑦うろこが残っているもの(サバのうろこは剝がれやすいため)