秋の味覚で体を整える 秋野菜
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冬に備えてしっかり体を温める、秋の野菜
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蒸し暑い夏の疲れが残り、朝晩の寒暖差が広がることで体調を崩しやすい季節でもある秋。体を温める栄養豊富な“旬”の食材を摂り、寒い冬に向けしっかりと備えたい。
秋野菜の定番ともいえるきのこ類は、低カロリーながら旨みや香り、食感を楽しめて満足感を得やすいバランス食材。さらに、ビタミン類や不溶性食物繊維、ミネラルなど、体にうれしい栄養素も多く含まれている。
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にんじんやじゃがいも、玉ねぎ、ごぼう、里芋などの根菜類も多くが秋から収穫が本格化する。にんじんのβ-カロテンをはじめ、多くの根菜はビタミン類、食物繊維などの栄養が豊富である。とくに芋類に含まれるビタミンCは主成分であるデンプンに守られ、加熱しても失われにくいのもうれしい点。寒さが増してくるこの季節、火を入れた調理で体を温めながら食べたい食材だ。
根菜類は皮や皮に近い実の部分に栄養がより集中していることが多い。そのため皮をつけたまま、または出来るだけ薄く剥いて調理することがおすすめだ。
そんな秋に“旬”を迎える野菜の中から、いくつか特長や目利きポイントをご紹介しよう。
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にんじん
春に出回る“新にんじん”もあるが、大きな“旬”は秋から冬。北海道産のものは夏から収穫され、10月後半頃からは千葉県産なども穫れ始める。
にんじんの皮には栄養も甘みも多く含まれるので、気にならなければ皮は剥かずによく洗ってそのまま食べるのがおすすめ。
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サイズは小さめのほうが糖度が高いといわれ、形は細長いものよりずんぐりとして肩が張っているもののほうが、芯以外の栄養や味が詰まった部分が多くて良い。葉の根元の芯の直径が小さいことが、全体の芯が細い目印だ。色は濃いもののほうが栄養分が豊富といわれ、側面にある白い線が細かいものも、ゆっくり栄養を蓄えながら育った証拠だといわれる目利きポイントだ。
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料理やお菓子に使う際は、ビタミンなどの栄養が流れないよう、茹でずに生のまま使うのがおすすめ。
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新生姜
ハウス栽培のものは初夏から店頭に出回るが、路地栽培の新生姜の“旬”は10〜11月。温度と湿度を管理した暗い室などで寝かせた根生姜は、通年出回り美味しく食べることができる
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新生姜の目利きのポイントは、赤い部分が多いこと。茎つきの場合は、品種や栽培条件によっても異なるが、茎がしっかりと太いものを選ぶといいという。
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高知県四万十町で自然の農法で生姜を育てる桐島正一さんのおすすめの食べ方は、新生姜をマッチ棒のように細長く切り刻み、油でサックリと揚げたかき揚げだ。
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マッシュルーム
マッシュルームは年によっても異なるが、9月半ばから10月初めにかけての秋の長雨の頃に“旬”を迎える。適度な気温と湿度の条件が整ったときにニョキニョキと成長するため、実は秋だけでなく春先にも2週間ほどの短い“旬”といえる時期がある。
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古代ヨーロッパでは、馬小屋の厩肥(きゅうひ)に自然発生していたという歴史をもつマッシュルーム。栽培農家によってはそうしたルーツに則り、わざわざ京都競馬場からオーストラリア産小麦のわらを取り寄せて菌床をつくっているという。
目利きのポイントは、大きさは味にあまり関係がないため、丸くて形が整ったものを選ぶこと。
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堅く締まった若いマッシュルームはみずみずしいため、スライスして生のままサラダにトッピングするのがおすすめ。反対にカサが少し開きはじめたものは、胞子を持ち始めて香りが強いため、しっかり炒めたり、煮込むことでその香りを楽しむことができる。たくさん買って余ったときは、ピクルスにすると長い間楽しむこともできる。
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黒皮かぼちゃ
現在日本では主に北海道などで栽培されている、ホクホクとした食感が特長の西洋かぼちゃが主流となっている。しかし元々は16世紀中頃にポルトガルから伝わったといわれる水分が多くねっとりとした「日本かぼちゃ」が長い間食されてきた。
日本かぼちゃを象徴する品種は「黒皮かぼちゃ」。日本かぼちゃの生産地は国内でも数えるほどまでに減少しているが、今も伝統を守り宮崎県などで生産されている。“旬”の時期はハウス物は12〜6月と長いが、本来の露地物は10〜11月の秋の時期。
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目利きのポイントは、ツルと実をつなぐ果梗(かこう)の色が黄色いこと。皮の色が黒く表面に白い粉がふいていること。皮がツルッとしておりしっかりと硬いこと。見た目よりもずっしりと重いことなどが挙げられる。
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宮崎県宮崎市で黒皮かぼちゃを栽培する富永信行さんに教えていただいたおすすめの食べ方はやはり煮物。かぼちゃの味わいが一番よくわかるという。他にも味噌汁の具にしたり、煮崩れしにくいためおでんに入れるのもおすすめだという。
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レンコン
レンコンの収穫期は7〜3月と長く、最盛期は秋。夏のレンコンは透明感がありみずみずしく、冬になると乳白色でホクホクとした食感に変わる。そのため時期により相性の良い食べ方が異なる。
出始めの「走り」の時期は、みずみずしく繊維も細くてやわらかいため、水分を一気にとりのぞく調理法が向く。縦に切ってきんぴらにしたり甘酢に漬けた「酢ばす」もおススメ。シャキシャキした食感を愉しむ。
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秋に迎える「盛り」の時期はどんな調理法を用いても良いが、レンコンの特徴的な形を活かした、レンコンチップスがとくにおすすめ。皮付きのまま丸ごと低温で茹で、スライサーで薄く輪切りにし、水気を切って油でカラッと揚げると完成。子供のおやつや、サラダのトッピングなどにも向いている。
収穫が終わりを迎える「名残」の時期は、皮が張り、繊維も太くなるため、じっくり火を入れるような調理法がおすすめ。輪切りにして天ぷらやフライにしたり、乱切りにして煮物にも。ほっくりとした食感を愉しむ。
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レンコンは空気に触れると変色が進むため、シミがない新鮮なものを選ぶと良い。茨城県稲敷市でレンコン農家を営む宮本さんによると、不自然に色が白いものは漂白されている可能性があるので避けた方が良いとのこと。家庭で保存するときも空気に触れないようにラップをするのがポイントだ。
全体がふっくらとしていて丸みがあり、8つの穴がほぼ均一に並んだものが健やかに育った美味しいレンコンだという。
秋野菜の旨みを引き出す サラダレシピ
ご紹介した秋の“旬野菜”をすべて使ったレシピを考案した。この時期だからこそ食べたい、根菜たっぷりの温かいサラダだ。
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ご紹介した生姜と香味野菜のドレッシングは、焼いた肉や魚、しゃぶしゃぶにした豚肉に合わせるのもおすすめだ。旨みだけでなく、生野菜のビタミンなどの栄養も余すことなく一緒に摂ることができる。
これから徐々に寒さが本格化していくこの季節。秋の食材の恵みを楽しみながら、ぜひ“旬野菜”で栄養をとり元気に過ごしていただきたい。