“旬”の万能野菜 キャベツ
今回ご紹介するキャベツは、大きさや色、“旬”の季節など実に幅が広い魅力的な野菜だ。美味しいキャベツの見分け方や調理法とともに、キャベツをたっぷり使った人気のサンドイッチ「沼サン」のレシピをご紹介する。
見ためも季節も味わいも、個性豊かなキャベツ
キャベツの種類や目利き方法を教えていただくため、八百屋「瑞花-suika-(東京・神楽坂/2019年閉店)」の矢嶋文子さんを訪ねた。
「キャベツの美味しい“旬”は『冬』ですが、品種の違いや南北に長い日本の地理を活かし、一年中味わえる万能の野菜でもあります。『寒玉』『春キャベツ』『紫キャベツ』、これが一般的な3大キャベツです。それぞれ特徴や“旬”の時期が違います。小さな芽キャベツや、フランスのサボイ地方でつくられてきたサボイキャベツなど個性的な品種もあります。サボイキャベツはここ10年くらいでだいぶ日本でも広まりました」。
キャベツは地中海地方が原産とされ、日本では第二次世界大戦後の洋食文化の広がりとともに家庭に広く定着したといわれる。生でも煮ても炒めても美味しく食べられるため、料理のバリエーションも広い。
「キャベツは万能な野菜なので、一玉まるごとで買っても色々と使えます。日持ちさせるためには2つのポイントがあります。半分にカットしたりせず芯が最後まで残るように外側から1枚ずつ剥いで使うことと、軽く湿らせた新聞紙で包んでからビニール袋に入れ冷蔵庫に入れること。冬場は冷蔵庫ではなくダンボールに入れ、陽の当たらない寒い場所に置きましょう。余ってしまったら浅漬けや酢漬けにしたりすると日持ちがするのでオススメです」。
3大キャベツの“旬”と目利き
品種ごとに個性があるキャベツだが、重さ以外は目利きのポイントは共通だと矢嶋さんは話す。
・葉脈が左右対称
・葉がピンとしてツヤがあること
・芯から見て均等な五角形であること
定番の3種のキャベツの目利きポイントやオススメの食べ方も教えていただいた。
寒玉(冬キャベツ・高原キャベツ)
「外側は硬く味が濃いので、バターソテーなどの炒め物やロールキャベツなどの煮込み向き。中心近くは柔らかく甘いのでサラダなど生食向きです。平地産は11〜3月、高地産は6〜10月が出回る時期です。ずっしりと重いものを選んでください」。
春キャベツ
「水分が多く、味わいがおだやかで柔らかいのが特長です。生のサラダやサッと火を入れた味噌汁やスープなどに向いています。水分が多いので日持ちしにくいのと、しっかり煮込むと溶けてしまうので注意が必要です。3〜5月が出回る時期で、品種によっては重たいものは苦味があるので春キャベツの場合は軽いものを選んでください」。
紫キャベツ
「紫色の正体はえぐみのあるアントシアニン。葉が硬いため生のまま千切りにして、えぐみが苦手な方はマヨネーズなどで和えたり、塩や酢に漬け、えぐみを抜いて食べましょう。煮ても食べられますが色が抜けやすいので生や酢漬けがおすすめ。産地を変え通年手に入ります。こちらはずっしりと重いものを選んでください」。
キャベツが主役、話題のサンドイッチ
今回、おすすめしたい“旬”のキャベツを使用したレシピは、千切りキャベツをぎっしりとはさんだサンドイッチ、「沼サン」。インパクトのある見た目からSNSをきっかけに話題となったが、その美味しさからもファンが多い。火付け役となった大沼由樹さんに、「沼サン」の魅力とレシピを教えていただいた。
「元々は結婚する前から陶芸家である夫がつくっていたんです。キャベツは手に入りやすく安価で、長持ちもするので陶芸家の修業時代から朝ごはんの定番だったようです」。
実際につくっていただくとキャベツの千切りの量に驚くが、パンでギュッと挟んでかぶりつくと他の具材とのバランスがちょうど良く感じられる。主張しすぎず何とでも合うのがキャベツの魅力だ。
「私も最初につくってもらった時は衝撃でしたが、食べてみるととても美味しい。夫は『シンプルだけどバランスのとれたレシピ』と言っています」。
コクや酸味と合わせて、広がるバリエーション
大沼さんの陶房がある岩手では、柔らかくて新鮮なキャベツが手に入る。酪農が盛んな地域でもあり、ベーコンやソーセージも美味しいため、シンプルながらも美味しい「沼サン」ができるという。
「キャベツと合わせて美味しい食べ物なら、なんでも『沼サン』の具になります。マヨネーズやチーズなどの乳製品とも相性がいいですし、スパイスやナッツを入れて変化を楽しむのもおすすめです。キャベツにはコクや酸味のある食材が相性はいいですね」と、大沼さん。
品種ごとの個性も、食べ方のバリエーションも豊かなキャベツ。
ぜひ様々な食材と合わせて、新たな魅力を開拓してみていただきたい。