農家しか知らない「ヤマツ葉しょうがのしっぽ」を生かした万能調味料

サルベジー「旨い醬」
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(取材月: June 2024)
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静岡県三島市で行われているプロジェクト「サルベジー」では、出荷時に、規格と合わずにはじかれ廃棄されてしまう野菜に、新たな価値を与え地元野菜のプロモーションとして活用している。この取り組みから生まれた商品、三島の伝統野菜「ヤマツ葉しょうが」のしっぽを使用した「旨い醬(ジャン)」を紹介しよう。

サルベジーの「旨い醬」について、おすすめポイントを紹介しよう。

農家しか知らない、「ヤマツ葉しょうが」のしっぽを味わえる

出荷の際に通常はカットされてしまう「ヤマツ葉しょうが」の“しっぽ”の部分を使用。農家しか知らない旨味が詰まった商品だ。

「ヤマツ葉しょうが」を70%以上使用

「ヤマツ葉しょうが」のしっぽに加え、皮まで使用。しょうがだけで重量の70%を占めており、「ヤマツ葉しょうが」の風味を存分に味わえる。

そのままでも炒め物にも使える万能調味料

ご飯や冷奴にそのまま乗せて食べるのはもちろん、ニンニクやオイルが入っているので、炒め物の下味にも使用できる優れもの。

希少な「ヤマツ葉しょうが」の魅力を伝える加工品づくり

ヤマツ葉しょうが

静岡県の東部、富士南麓、箱根西麓の伊豆半島の付け根に位置する三島市。この地域で栽培される箱根西麓三島野菜のひとつが「ヤマツ葉しょうが」だ。「ヤマツ葉しょうが」は三島市塚原で古くから栽培される葉しょうがのことで、流通期間は6月末から8月中と短い。

岡本さん

そんな「ヤマツ葉しょうが」を使用した「旨い醬」の生みの親で、サルベジーの仕掛け人である岡本雅世さんは、「『ヤマツ葉しょうが』は旬の時期が終わると忘れられてしまう」と、話す。

静岡県は葉しょうがの生産量1位を誇るが、「ヤマツ葉しょうが」は栽培に大変な手間と時間を要するため、現在生産している農家は5軒のみ。通年でこの希少な「ヤマツ葉しょうが」の魅力を伝える加工品として生まれたのが「旨い醬」だ。

岡本さんが注目したのは、長年廃棄されていた「ヤマツ葉しょうが」のしっぽの部分。

ヤマツ葉しょうがのしっぽ

「出荷するときや輸送するときには、箱に規定量を入れなくてはなりません。それから、スーパーに並べるときはきれいに陳列しなければいけません。ビニール袋にも入れるので、しっぽ部分は邪魔になってしまうんですね。運んでいる途中で破損する可能性も高くなるのでカットされてしまいます」

カットとされたしっぽは農家が自宅で食べることもあるが、その大半は廃棄されてしまう。「ヤマツ葉しょうが」のしっぽは、しょうが特有の筋っぽさを感じないほど柔らかい部分だが、これは農家しか知らない。

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「最初は砂糖漬けを作ったんですが、しょうがの美味しさがもっと出せるはず、自分が料理をするなら、と考えたときに万能調味料を思いつきました。炒めものをするときに、しょうがやニンニクを油で炒めるから、最初からオイルに入っていたら便利かなと思ったんです」

「旨い醬」は、「ヤマツ葉しょうが」のしっぽの部分だけでなく皮まで使用しており、重量の70%をしょうがが占めている。商品ラベルのロゴマークは、出荷用のコンテナに描かれる塚原で古くから使われている出荷組合の名前「ヤマツ」を表すマークをもとにした。「ヤマツ葉しょうが」について広く知ってもらいたいという想いが詰まった商品なのだ。

“はじかれ野菜”をプロモーションする取り組み

岡本さんの取り組み「サルベジー」は、規格外というだけにとどまらず、さまざまな理由で流通から外れてしまう“はじかれ野菜”を活用して、生産者や農業をPRしていくプロジェクト。そのはじまりはある農場で見た、山積みの廃棄されるほうれん草だった。

はじかれほうれん草

「最初はただ美味しそう、もったいない、と思っていたのですが、これが1日ではなく毎日、しかも1軒の農家でこれだけ大量の廃棄が出ることに驚きました。私は飲食店をやっていないし、活用もできないのでその場ですぐには買いとれなかったけど、頭の中にずっと残っていました」。

地域の農家に話を聞いていくうちに、市場に出荷される野菜などは特に相場に左右されるため、なかなか宣伝費がかけられないという課題点に気づいたそう。そこで「“はじかれ野菜”をもらう代わりに、岡本さんたちが野菜をプロモーションしていく物々交換」を始めたのだ。

のうみんず

まず最初に、三島の若手生産者集団「のうみんず」の宣材写真を撮影し、販促用の素材として提供した。そして撮影と交換した“はじかれ野菜”を販売するマルシェを開催。また、野菜を楽しく食べる方法を伝えるフードイベントを実施し続けている。岡本さんの食への探究心と、スーパーに並ぶ野菜しか知らないのはもったいない、という好奇心から、取り組みはどんどん拡大していった。

「箱根西麓三島野菜自体が美しく育てることを大事にしているので、農家さんも最初はB品を売っているのか、と言われることもあったようなのですが、数年で周りの反応もかなり変わってきました。」

そして、“はじかれ野菜”を使った加工品作りもスタート。「旨い醬」もここで生まれた商品のひとつだ。加工品を作って終わりではなく、自分たちが作っているものを、お客さんと話すきっかけのツールのひとつになってほしい、と岡本さんは話す。

「『のうみんず』がイベントに出たときは自分たちで作ったロメインレタスと豚肉を『旨い醬』で炒めて提供しました。すると、とても反響があったようです。そこで自分たちはこういう野菜を作っていると、しっかり宣伝することができました」。

「ヤマツ葉しょうが」を知らない人に興味を持ってもらいたい

旨い醬の中身

万能調味料の「旨い醬」はそのままご飯や冷奴に乗せて食べるのはもちろん、焼きそばなど炒めものの下味として使用するのもおすすめだそう。

現在はロスが出ないように商品がなくなってきたときに生産し、イベント出店時に販売しているが、オンラインでの販売体制を整えているところだ。

「葉しょうがって何? って思う人に食べてもらいたいです。そこで「ヤマツ葉しょうが」にも興味を持ってもらいたいですね」

岡本さんは、廃棄されてしまう食材を使用したアップサイクル商品は世の中に広がっているが、加工される前の食材にも注目してもらいたいと話す。

はじかれレタス

「アップサイクル商品ってたくさんありますが、できた商品はかっこいいし、取り組みは素敵なんだけど、その作物を誰が作ってどういう理由で廃棄されたのかまでは伝えきれていない。サルベジーの取り組みは、野菜とプロモーションの物々交換から始まったので、商品だけでなく、生産者のことにも気がついてもらえたら嬉しいです」。

旨い醬の中身

はじかれ野菜に新たな価値を与え、地域への想いとプロジェクトの工夫が詰まった万能調味料「旨い醬」。ぜひ大切な人へのおくりものや、日々の食卓に取り入れてみてほしい。

Writer : MONAMI CHO
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Photographer : YUTA SUZUKI / SATOSHI TACHIBANA

サルベジー

URL https://www.instagram.com/salveggie/
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