ぶどう山椒の特産地・和歌山で生まれたハーブソルト
FROM FARMの「Japanese Nomadic Salt」について、おすすめポイントを紹介しよう。
ぶどう山椒と各種スパイスを調合したハーブソルト
和歌山県産のぶどう山椒を使ったハーブソルト。「食」にまつわる共同プロジェクト「nomadic kitchen」が開発したレシピをもとに、ぶどう山椒や柚子皮、海塩、コリアンダーシード、黒コショウといった9種類のスパイスを調合している。
ジャンルを問わず、様々な料理とマッチする万能選手
ぶどう山椒の痺れるような風味、柚子皮の爽やかな香り、海塩の濃厚なうま味が料理の美味さを底上げする。ステーキやカルパッチョ、ポテトサラダなど、様々な料理と相性がよく、バニラアイスにかければ「塩バニラ」も楽しめる。
ぶどう山椒の可能性を切り拓く、FROM FARMの挑戦
大谷幸司さんが「FROM FARM」を立ち上げたのは、2014年のこと。和歌山県海南市にUターンして7年目、当時はからだを壊した父にかわって菊栽培を営んでいた。農業の楽しさにも目覚め、家業も軌道に乗り始めていた一方で、加工品販売への興味も捨てられないでいた。「自分は何をするべきなのか?」。そのように逡巡する大谷さんに転機をもたらしたのが、お隣の有田郡でとれた「ぶどう山椒」だった。
「ぶどう山椒の生産者のもとを訪ねたとき、とれたての実を味見してみたらとても美味しくて! いままで食べていた山椒はなんだったんだろう、と目が覚めるような思いでした」
じつは、和歌山県は山椒の一大産地。生産量日本一を誇り、その主力となっている品種がぶどう山椒なのだ。瑞々しい緑色の実が房状に連なった見た目は、まさにぶどうさながら。ほかの品種と比べて果皮が肉厚で、穏やかな辛味としびれるような刺激が楽しめる。
しかし、高品質でありながら、一般の消費者が目にする機会はほとんどない。栽培されたぶどう山椒のほとんどが、漢方薬や調味料のメーカーに納入されるためだ。それだけ重宝されているということだが、栽培の労力に見合った売り値が付いているわけではない。供給先が限定されているので、生産量が増えすぎると価格が下落し、生産者の生活にダイレクトに影響する。
その話しを生産者から聞いた大谷さんは、現状を少しでも改善できないかと、ぶどう山椒を使った加工品の製造を思い立つ。加工品で販路を広げることができれば、生産者の利益還元につながると考えたのだ。
加工品を新たに開発するからには、既存商品と差別化しなくてはならない。とはいえ、大谷さんにそのノウハウがあるわけではなかった。ファーストステップから高いハードルに直面したが、そこであきらめないのが大谷さんのすごいところ。なんと、全く面識のなかったフードディレクターの野村友里さんに直談判。ぶどう山椒を使った加工品開発の協力を願い出る。
「野村さんは、以前より度々メディアで目にしていたんです。多彩な分野で『食』にまつわる活動をされている野村さんなら、新しい発想でレシピを考えてくれると思ったんです」。
野村さんは、大谷さんの打診を快諾。料理人たちで構成された共同プロジェクト「nomadic kitchen」によって、加工品開発がスタートする。
ぶどう山椒と各種スパイスが織りなす、唯一無二の味わい
「nomadic kitchen」は、一年半をかけて、ぶどう山椒を使ったハーブソルトのレシピを開発。プロジェクトに倣い、商品名は「Japanese Nomadic Salt」と命名された。製造は発起人でもある大谷さんが担うことに。
ぶどう山椒は香り成分を多く含んでいる果皮だけを使用。乾燥させたら細かく粉砕して、海塩、柚子皮、コリアンダーシード、黒コショウといった8種類のスパイスと調合する。
「各種スパイスは手回し式のコーヒーミルで粉砕しています。粒のサイズを2mm程度に揃えるのがポイント。それぞれのスパイスで風味の広がり方や口どけのタイミングが異なるので、味のグラデーションが楽しめますよ。シロップで炊いた柚子皮の甘みもいいアクセントになります」。
ハーブソルトが詰まった瓶のふたを開けると、爽やかな香りがふわりと立ち上がる。ステーキやグリル料理にふりかければ、熱によって風味がより鮮明になり、じんわりとあとを引くしびれが食欲に火をつける。オリーブオイルに溶いてドレッシング風にすれば、カルパッチョやお刺身ともマッチする。大谷さんは「ジャンルを問わず、どんな料理にも使えます」と太鼓判を押す。
Japanese Nomadic Saltに手ごたえを感じた大谷さん。体調を持ち直した父が農業に復帰していたこともあり、加工品販売業への本格参入を決意する。
続いて開発したドライフルーツは、ぶどう山椒の乾燥作業から着想を得たもの。傷がついて出荷できなくなった柿やキウイを地元農家から買い取って、有効利用している。
そのほか、ドライフルーツを加えたグラノーラや、ぶどう山椒とメープルシロップでフレーバーをつけたミックスナッツなど、現代のライフスタイルを意識した商品を展開。
これらの商品は「産地の魅力を発信したい」との思いから「FROM FARM」のブランド名が付けられた。海南市内にある工房を兼ねたショップで販売されるほか、県内外の雑貨店やインテリアショップなどでも取り扱われている。
大谷さんの活動は、加工品販売だけにとどまらない。2019年には、同市内にカフェ「Kamogo」(カモゴ)をオープンする。地元の加茂郷(かもごう)地域にちなんだこのカフェは、農協の旧施設をリノベーションして店舗に活用。広くとられた窓の外にのどかな田園風景が広がる絶好のロケーションとなっている。
Kamogoは、いわば和歌山の味覚を伝える発信拠点。柑橘の生絞りジュースやコーヒー、ドーナツなど、いずれも市内やその周辺地域から材料を仕入れている。季節限定のフルーツパフェが看板メニューのひとつになっており、この日提供された「びわパフェ」は売り切れるほどの人気ぶりだった。
「見知った顔以外にも、市外からたくさんの若者が訪れます」と話す、大谷さん。地元の人には憩いの場を、外から訪れる人には生産者たちとつながるきっかけを。 FROM FARMとKamogoの両輪で、大谷さんはこれからも和歌山の「食」の未来を切り拓いていく。