妥協なき手仕事 父娘でつなげる生ハムの美味
セラーノの「セラーノ定番セット」について、おすすめポイントをご紹介しよう。
自然と共に、当たり前だったことを続けてつくる
セラーノの生ハムは豚のもも肉を塩水に浸し、あとはゆっくりと乾燥させるだけ。昔ながらの非常にシンプルなつくり方だ。添加物も化学調味料も一切使わないつくり方で、故意に菌を付着させることもしない。温度や湿度を管理しながら、2~3年もの時をかけて、自然と共にゆっくりと熟成させる。
気張らない温かみあるパッケージ
柔らかな紙の風合いが温かい印象の箱と、箱にかかる赤いコルクがポイントのパッケージ。コルクは廃材を利用し、一つひとつ丁寧にやすりをかけ、手作業で着色している。自然とともに生ハムをつくるセラーノだからこそ、環境に負荷をかけないようにと、できるだけ過剰包装にならないように心掛けているという。
不自然なことはおこなわない、セラーノの生ハムづくりの原点
セラーノの創業者、尾島博さんが生ハムの魅力に出会ったのはスペイン留学中のこと。
「生ハムの産地として有名なスペイン・ハブーゴを訪れた時に食べた生ハムに大きな感銘を受けた」と、話す尾島さん。その後、様々なバルを周り、生ハムを食べ歩いたという。そして帰国後、お酒のつまみになればと、自宅の納屋で趣味として生ハムをつくり始めた。
当時から食への関心が高かった尾島さんが目指したのは、無添加で化学調味料を一切使わない生ハムだ。乾燥した気候のスペインとは違い、多雨多湿の日本で生ハムを乾燥させ、熟成していくのは容易ではない。ようやくできた生ハムの試食会に、どうせなら本場の人の感想を聞きたいと、スペイン出身の友人を招いた。
「友人たちは大使館、金融関係の東京駐在員を務めていて、行きつけのスペインレストランで私の生ハムの話をしてくれましてね。それが縁で、店で出したいと言ってくれる料理人からの依頼が増えていきました。そこから本格的に生ハムづくりを始めることになったんです」と、尾島さん。
その後、多くのお店から注文を受けるようになったが、大量生産のために機械化することは一切おこなわないという。その理由をこう話してくれた。
「機械化して大量につくろうと思えば、添加物や化学調味料をつかうなど、どこかに必ず不自然なところが生まれます。そして、それは必ず味にも出てきます。世の中の流れとは違うけれど、機械化はせず、美味しさを何よりも優先するのが目指すところです」。
受け継がれるセラーノの生ハム
現在は尾島さんと、2人の娘の3人で生ハムをつくっている。姉の理華さんは、生ハムづくりを一緒にやるようになったきっかけを話してくれた。
「父はもう40年以上生ハムづくりをしていますが、数年前から体力の問題もあり、年々取引量を減らさなければならない状況になっていました。父のつくる生ハムが美味しいことは誰よりも私が知っているので、このままなくなってしまうのを見ていられなく、一緒に生ハムづくりをすることになりました」。
3人での生ハムづくりが始まって3年。いまでは父娘で、美味しい生ハムづくりについて、お互いの意見をぶつけ合うこともあるという。
「温湿度管理に関して、今ではデータで管理するようになりました。父は長年培ってきた感覚がありますから、データにこだわるのは抵抗があるのかもしれません。それでも父が切り拓いてつくりあげた生ハムの美味しさを少しでも残せるものにできればと思ってやっています」と、妹の恵美さんは話してくれた。
「美味しい生ハムを届けたい」という父娘の想い。その想いが、セラーノの生ハムづくりを支えている。
「セラーノ定番セット」のこだわりとおすすめの食べ方
セラーノの様々な生ハムを一度に味わえる「セラーノ定番セット」。おすすめの食べ方や食べ合わせを教えていただいたので、あわせてご紹介しよう。
生ハムスライス
700~900日以上もの期間熟成された重厚な風味の生ハムを、素材本来の味わいが楽しめるよう薄めにスライスした。
ワインに限らず日本酒、焼酎、ウィスキーなど各種お酒はもちろん、野菜、果物、ナッツなどにも合う。理華さんのおすすめは生ハム、苺、クリームチーズをバルサミコ酢で和える食べ方だ。
生ハムダイス
生ハムの魅力をよりダイレクトに楽しんでもらえるよう、切り方を変えたもの。使うお肉はスライスと同じだが、より濃厚で塩味が効いているように感じる。
そのままおつまみとしても最適だが、恵美さんのおすすめの食べ方はさらに小さく刻んでクリームパスタにトッピングとして合わせる食べ方。塩味が特徴なので、熱した油に入れ、香りをうつしてドレッシングのようにするのも美味しいという。
チョリッソ&サルチチョン
チョリッソは赤い見た目に反して辛さは控えめで、4種のパプリカの華やかな風味が口いっぱいに広がる。サルチチョンは豚肉だけでなく牛肉も用いられ、八つ割にしたコショウが特徴。噛みしめるたびに香りが立ち、溶けだした脂からじんわりと旨みが伝わってくる。
どちらも塩の代わりに生ハムを混ぜ込んでいるのと、尾島さんの奥様が育てる自家製ハーブが使われている。
加熱せずそのままで楽しむのがおすすめだが、チョリッソはフランスのカスレのように豆のスープに入れて、サルチチョンはバターでソテーしたリンゴと合わせてカナッペにして食べるのがおすすめだという。
様々な食べ方を伺ったが、最後に2人の娘さんは「美味しく自由に食べるのが一番です」と、笑っていう。ぜひ家族や友人たちが集まる折に、美味しい食べ方を歓談しながら召し上がってみてはいかがだろうか。