生産者の思いを届ける、規格外野菜が主役のケータリングサービス

ジレンマから生まれた、ケータリングサービス

ファームキャニングが設立されたのは2016年のこと。プロジェクトは当初、有機野菜・無農薬野菜の規格外品を使った瓶詰め商品の製造販売と、農業体験のスクール事業からスタート。地元生産者の支援を目指していたものの、事業を続けていくなかである課題が浮上。代表を務める西村千恵さんは事業の方向転換を迫られます。
「瓶詰めのソースやディップ商品を、常温保存ができるように安定的に製造するためには、食材やレシピを固定する必要がありました。どんな野菜でも受け入れたいと思う反面、瓶詰めの加工に不向きな野菜もあり、すべての規格外野菜を活用しきれていないジレンマがありました」。

悩んだ末にたどり着いたのが、サステナブルなケータリングサービス、その名も「もったいないルケータリング」。ケータリングなら自由に献立が組めるので、加工品製造より多くの食材を取り扱うことができます。またあらかじめ提供日や量が決まっているので、不要な在庫を抱える心配がなく、ごみを出さずに仕入れた規格外野菜を最大限活用することも可能。まさに、西村さんにとって理想のスタイルといえました。
現在は「もったいないケータリング」が事業の柱になり、約50名〜400名分といった大小さまざまな規模のケータリングを手掛けています。企業のイベントやランチから結婚式の料理まで、クライアントも多岐に渡ります。

提供する料理は、野菜本来の味やかたちを活かしたものばかり。シンプルなレシピを取り入れて、農業をとりまく実情を伝えます。リクエストがあればお肉や魚もサステナブルな観点でセレクトして使いますが、最近はベジタリアン料理のリクエストも増えているそう。西村さんとともに活動するディクソン江梨さんは、次のように話します。
「マヨネーズも卵の代わりに豆乳を使って作ったりしています。あるイベントでは『野菜だけでこんなに満足できるとは思わなかった』と仰っていただいたこともありました。お肉が好きな人ほど感動が大きいようです」。
ケータリングを通じて、食材のストーリーを届けたい

持続可能な農業を支えるため、野菜は生産者からの提示価格で買い取るのが西村さんのこだわり。また規格外だけにこだわるのではなく、通常品も合わせて一括で仕入れるようにしています。
「規格外野菜だけにこだわるのは、それはそれでサステナブルとはいえません。無選別であれば生産者の手間も省けますし、行き場のない規格外野菜も活用できる。結果的に生産者にも喜んでいただけますし、こちらの仕入れも安定するんです」。

しかし西村さんの懸念は尽きません。「食」にまつわる業界を知れば知るほど、現状へのもどかしさが募ります。
「現在、農作物の30%が市場に出回ることなく規格外などの理由で廃棄されているといいます。無農薬栽培や有機栽培であれば、それ以上の廃棄量になるでしょう。農業界全体で人材が不足しているため、農地を広げて収益を上げることも容易ではありません。社会や自然環境のことを思い、循環型の農業を実践されている生産者の方々に、きちんと恩恵が還元されるシステムをつくっていけたらと思っています」。

少しずつでも貢献度を高められたらと、西村さんは「もったいないケータリング」のリニューアルを検討中。食材が提供されるまでの背景や生産者の思いを、ケータリングの現場で伝えるためのアイデアを練っています。
「もう一歩踏み込んだ内容にしていきたいです。例えば『海を知るコース』や『山を知るコース』を設けるとか。4月からは神奈川県寒川町にある畑で、無農薬のぶどうを育ててワインをつくる体験型コミュニティも始まります。もったいないケータリングの料理を食べたり、農や食にまつわるイベントに参加することで、みなさんが自然や生産者へ思いを寄せるきっかけを作れたら」と声を弾ませる西村さん。
おいしく楽しいスタイルはそのままに、これからもファームキャニングの挑戦は続きます。