シート食材で食糧危機を救いたい。社会課題に向き合う「VEGHEET(ベジート)」
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<「ベジート」のここに注目>
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・材料は規格外の野菜と寒天のみを使用
・野菜をそのまま⾷べるよりも栄養素が豊富
・長期保存(2年間)が可能で、防災用商品は5年間もの長期保存が可能
野菜シートとの出会い
実は、早田さんは元・証券会社の営業マン。地元の平戸市で食品卸業を営むお父さんの病気をきっかけにUターンをし、新しいビジネスを模索していました。

「役所で平戸市の産業構造や人口構成比を調べるなかで、製造業の必要性を感じました。そこで、全国の食の生産現場を行脚していたところ、熊本県の大手海苔メーカーの工場の一角で、「VEGHEET(以下、ベジート)の前身となる野菜シートに出会ったんです」
その取り組みに共感し、のちに丸ごと引き継いで地元で事業を始めた早田さんは、よりおいしさや栄養価にこだわった製法で商品を一新。出会いから苦節足掛け20年を要して、現在の「ベジート」が誕生しました。
旨味と栄養を凝縮した野菜のシート
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「ベジート」は、野菜をペースト状にして乾燥させた食品添加物・化学調味料不使用のシート食材。にんじん、だいこん、かぼちゃ、トマトなど、野菜の旨味と栄養をぎゅっと凝縮したシートには、食物繊維やビタミン、カロテンが豊富。野菜をそのまま食べるよりも、効率的に栄養を摂取することができます。
パリッとした食感で、子どもからお年寄りまで安心して食べられるのも魅力のひとつ。そのままかじるのはもちろん、おにぎりに巻いてみたり、溶かして野菜のスープやゼリーにしたりと、様々な楽しみ方ができます。
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
さらに常温での長期保存が可能なため、防災食としても注目を集めています。開発当初から2年間の保存が可能でしたが、高機能パッケージを活用した防災用商品は最大5年間もの保存が可能となり、薄くて軽いので、防災リュックに入れてもかさばりません。
廃棄される野菜を仕入れ、フードロス解消や農家の支援に
原料として使われているのは、捨てられるはずだった規格外の野菜たち。
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「地元の畑に立派なにんじんがたくさん廃棄されているのを見て、農家さんに安く譲ってほしいと言っても、当初はなかなか取り合ってもらえなかったんです。でも諦めずに長靴を履いて何度も畑にお邪魔するうちに、農業の苦しさや喜びについて話してもらえるようになりました。結果的に廃棄品になってしまう野菜たちも、皆さんが丹精込めて作ったものだから、それを私たちが勝手に安く仕入れようとするのが間違いだったんですよね。そこで、廃棄野菜にきちんとお金を出して大量に仕入れることで、彼らの新しい収入源となるようにしたんです」
農家の方たちが消耗し続ける現在の仕組みのままでは、この先日本から野菜が消えてしまう可能性もあります。「ベジート」の事業では、損をしない農業を目指した農家の支援にも取り組んでいます。
世の中から食糧危機をなくしたい
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国内でさまざまな賞を受賞し、各種メディアでも取り上げられている「ベジート」。現在、国内ではECショップや全国のスーパーマーケット、100円ショップの「ダイソー」などで販売されていますが、フードロスへの意識が高い海外からの注目も高まっています。今後はグローバル展開も見据えて、豊かな土壌を持つインドネシアに工場を設立し、有機野菜の栽培を始める計画をしているそう。「ベジート」は野菜の水分を飛ばしてシート状にするため、体積や重さが減ると同時に物流コストも抑えることができます。
「インドネシアで作った有機野菜を『ベジート』にして、ヨーロッパやアメリカに展開できたら、フードマイレージの観点でもすごく良いなと思います。僕が事業を続ける一番の目的は、世の中から食糧危機や飢餓、貧困をなくすことなんです」と、力強く語る早田さん。

たった0.1mmの薄さの「ベジート」には、想像をはるかに超える、無限の可能性が詰まっていました。