廃棄されるりんごから生まれた「テキカカシードル」
<「テキカカシードル」のここに注目>
・ブルゴーニュ地方のシードルにならい、渋みが後を引く味わいに
・りんご栽培の「摘果」に割く労力を有効活用するために開発
・「ジャパン・シードル・アワード2019」にて最高賞である大賞を受賞。
日本初となる、摘果りんごを有効活用したシードル
青森県弘前市で100年以上の歴史を誇るりんご農家「もりやま園」。近年は生産のみならず、加工品づくりにも力を注いでいます。
代表的な商品が「テキカカシードル」。キリッとした酸が効いた味わい。甘くないので料理にもよく合います。独特の渋みが後をひくのは、本来は廃棄されるはずの未成熟りんごを使っているため。これにより、成熟した生食用りんごを使う国産シードルにはない味わいが生まれます。園の代表を務める森山聡彦さんは、摘果りんごに着目した理由を次のように話します。
「摘果はりんごを大きく育てるために欠かせない作業ですが、大変な労力がかかります。計算すると、年間労働時間の3割も費やしていることが分かりました。この膨大な手間を何とか有効活用できないものかと、常々考えていたんです」
摘果が行われるのは6月から8月にかけて。摘み取られた未熟果には、ポリフェノールが豊富に含まれているといいます。
愛好家からのお墨付きも受ける、人気商品に成長
「テキカカシードル」の構想が立ち上がったのは、2013年ごろから。森山さん夫妻がかつて滞在していたカナダで飲んだシードルから着想を得たものでした。
「妻がシードルをとくに気に入っていて、しきりに『りんご農家なんだからシードルをつくろう』と提案していたんです。そこから摘果りんごの活用方法に結びつけたんです」。
とはいうものの、摘果りんごを使った前例がなかっただけに試行錯誤の連続でした。果実が未熟すぎて酸味が強くなりすぎたり、最適な酵母が見つからなかったり――。
「お手本にしたのは、フランスのノルマンディー地方で飲んだシードル。苦くて酸っぱいりんごが原料になっていて、この味に近い摘果りんごこそ、シードルづくりに適しているのではないかと、確信したんです」。
森山さんは、弘前工業研究所や弘前シードル協会といった外部の協力を得ながら理想の味を追求。りんご畑の傍にシードル醸造工場も新設し、2017年、とうとう商品化が実現します。
評判はジワジワと広がり、愛好家が選ぶ「ジャパン・シードル・アワード2018」のテイスティング部門で2つ星を獲得。2019年には同賞の大賞を受賞しました。飲食店向けの樽詰めの出荷もスタートし、今では全国各地から支持を集めるほどの人気商品に成長しています。