規格外の柿を救うために開発された「純柿酢」
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<「純柿酢」のここに注目>
・規格外の柿を原料にしている
・大量廃棄される柿を活用するために開発された
・規格外の柿は、奈良漬けや和菓子などにも使われる
柿の風味とまろやかな酸味が楽しめる調味料
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「純柿酢」は、奈良県五條市の西吉野町にある柿の専門店「柿の専門 いしい」が開発した調味料。特産品である柿だけを原料にしており、穀物酢では味わえないフルーティでまろやかな酸味が楽しめます。
使い方は多種多様で、穀物酢の要領で料理に使ったり、サイダーで割って「柿酢サイダー」を楽しんだり。はちみつを入れた飲み方もおすすめです。「柿が赤くなると、医者が青くなる」という諺があるようにミネラルやポリフェノール、アミノ酸などの栄養成分を豊富に含んでいるため、健康維持を目的に毎日少量ずつ飲んでいるリピーターも多いのだとか。
美味しさの秘密は、伝統製法にのっとった「長期静置発酵」にあり。柿を酵母菌とともにタンクに入れると発酵が進み、3か月後にはアルコールを含んだ「柿酒」に変化。そこからさらに7か月間かけてアルコールの酢酸発酵を促すと、柿の風味を濃縮した柿酢が完成します。「いしい」では、熟成期間5年物の柿酢をベースに少しずつ継ぎ足す製法を採用することで、味・色・酸度の安定化させています。
廃棄されるはずだった柿が「柿酢」に生まれ変わる
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1981年の発売以来、ロングセラーとなった「純柿酢」。じつは、原料にはキズモノや形の悪い規格外の柿が使われています。その理由を「柿の専門いしい」三代目の石井和弘さんは、こう話します。
「純柿酢を開発する以前、この地域では年間300トンもの柿が規格外と判断されていたそうです。廃棄されるだけの柿をなんとか活用できないかと、立ち上がったのが創業者の石井勲と二代目の光洋です。はじめは、柿ワインづくりに挑戦したそうですが、酒造免許が取れずに断念。柿酢に活路を見出したようです」
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柿酢の開発は、ほんの一例に過ぎません。光洋さんは、廃棄される柿を使って「柿の奈良漬」や「柿もなか」などを次々と考案。柿の加工品といえば「干し柿」が定番だった時代、光洋さんの挑戦は地域で一歩先を行く取り組みでした。
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そのDNAを受け継いだ和弘さんも「柿をステキな果物に」「柿を科学する」をスローガンに掲げ、様々な商品を開発。先代、先々代の残した看板商品との二刀流で、市場開拓を着々と進めています。