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SHUN CURATORS (July 2019)

体験して欲しいのは、日本に息づく素晴らしいクラフトマンシップ

―京都蒸溜所代表取締役 デービッド・クロールさん
デービッド・クロール

少量生産にこだわり、複数のボタニカルによる豊かな香り付けで、つくり手の個性をダイレクトに反映してつくられる「クラフトジン」が注目を集めている。最近では、ヨーロッパや北米などで若者を中心に愛好者が急増。他業種などから次々とジンづくりに参入するケースも増え、無数の小規模蒸溜所が世界中に出現しているのだ。日本国内でもバーやカフェなどで、クラフトジンを提供するお店も増え、その人気がジワジワと高まっている。そんな国内のシーンを牽引しているのが、「季の美 京都ドライジン(以下「季の美」)」だ。「季の美」をつくる京都蒸溜所の創業者であるイギリス人のデービッド・クロールさんに、京都にこだわってジンをつくる理由や日本の食文化の魅力を語っていただいた。

京都のフィロソフィーを凝縮したジンづくり

Qさっそくですが、どうして日本でクラフトジンをつくることになったのですか?

元々は、日系の金融企業に勤めていていたのですが、異動を機に日本にやってきました。パートナーの紀子(京都蒸溜所共同創業者である角田紀子・クロールさん)と出会って、10年程前からスコットランドや日本国内のウィスキーの輸出入をする会社を経営していたのですが、段々と国産ウィスキーの人気も落ち着いてきて、これからどうしていこうかと考えていたのです。自分たちでウィスキーの蒸溜所をつくるという話も出ましたが、すでに30社以上が新しい蒸溜所をつくっている状況があり、他が考えていることをやることに意味を見いだせなかった。ちょうどその頃、海外でクラフトジンが伸び始めていたことも知っていたので、なぜ日本ではクラフトジンがないのかと思い、それなら自分達でジンをやってみようかと。2016年に京都蒸溜所を設立し、その10月から「季の美 京都ドライジン」の販売を開始しました。

季の美

Q京都を拠点に選んだ理由は?

京都が好きだからです。まずは、京都というまちに息づくクラフトマンシップの文化が素晴らしい。着物なり、木工なり、懐石料理なり、つくり手のなかに、小ロットでも丁寧に、できるだけ質のよいものをつくるというフィロソフィーがありますよね。私たちもそういう気風の中でジンをつくりたかった。あとは、ジンをつくる上での原料ですね。それが最高でした。伏見の水はもちろん、宇治のお茶や、北部の綾部では柚子が豊富に穫れ、山椒などもある。ジンはお水と設備があればどこでもつくれるものですが、私たちは京都のフィロソフィーと原料を活かした、京都でしかつくれないジンをつくりたかった。

宇治茶

世界でも一目置かれる日本のバーテンダーの技術を体験して欲しい

Q初めて日本に訪れた頃の話を聞かせて下さい。日本の食文化に対してはどんな印象でしたか?

日本に初めて赴任してきたのは90年代初頭でした。いまみたいに街に英語の看板やメニューが全然なかったから、なにも分からず、とにかくミステリアスな場所でした。来日したその日に食べさせられた納豆が強烈で、それがトラウマになって、納豆が食べられなくなってしまいましたが、それ以外の日本の料理はほとんどが好きでした。特に、北海道で食べた、うに、とろ、いくらの「三色どんぶり」が好きで、いまでも寿司屋に行ったら、必ず三色どんぶりを注文しますね。

Q日本の食文化の魅力を教えて下さい

まずもってそのバリエーションが豊富なことですね。お肉、お魚、野菜、豆腐、どのような食材でも、いろんな料理の手法がある。それと、フレッシュなものを使っていることです。日本の料理屋さんは、常にメニューを変えますよね。その時に一番いい食材、“旬”のものをちゃんと使ってくれる。素晴らしいです。当然ですが、「季の美」という私たちのジンの名前も、ビューティーオブシーズン、そうした日本人のマインドに由来しています。

季の美

Q日本と故郷であるイギリスのお酒文化の違いはどんなところでしょうか?

イギリス人は結構、飲むだけのときも多いですが、日本人はやっぱり食べながら飲むスタイルが主流ですね。食中心のお酒文化だと思います。だから、私たち「季の美」も料理に合わせやすい味わいを意識していますし、飲食店さんと一緒にクラフトジンのカルチャーを広めていきたいと思っています。

とはいえ、強調しておきたいのは、日本のバーのレベルの高さです。

特に、オーセンティックなバーのバーテンダーさんは凄いですよ。海外の人からも、日本の伝統的なお酒のつくり方はリスペクトされています。氷のつくり方一つとっても所作が美しいですし、すごく丁寧につくり上げる。特にクラシックカクテルのレベルには驚かされます。いまや日本のバーに海外のバーテンダーさんが研修に来るぐらいですからね。これから日本に来る海外の人に絶対に体験して頂きたいのが、日本のオーセンティックなバーです。

オーセンティックバー

食べ物もお酒も産地で味わうのが一番

Qこの先、「季の美」で挑戦したいことはどんなことですか?

「季の美」はお米由来のベーススピリッツを使用しているので、ほのかな甘みがあります。日本の料理との相性を考えてつくっているので、ペアリングなどの楽しみ方も推奨していきたいです。「季の美」に使用している、柚子や生姜、山椒、紫蘇、玉露など11種類のボタニカルを使った料理とジンを一緒に楽しんだら、すごくよい食体験になると思います。ワインや日本酒のペアリングは増えてきたので、それをジンでもやってみたいですね。

あとは、もっとホームである京都で飲んでくれる人を増やしたい。ごまかしの利かない京都の人たちにちゃんと受け入れてもらえるものをつくり続けていきたいです。京都で愛されて、それを世界に知ってもらう。そういうジンでありたいと思っています。

季の美

Qこれから日本を訪れる、海外からの旅行者にアドバイスがあればお願いします。

食べ物でもお酒でも、なんでもそうですが、絶対に産地を訪れてそれを味わって欲しいです。産地で味わうのが気持ちの面でも一番美味しく感じます。「季の美」もできることなら、京都で一度は味わって欲しいです。京都のホテルやバーで、京都の美味しい料理と一緒に楽しんで欲しいですね。

Writer : TAICHI UEDA / Photographer : SATOSHI TACHIBANA / CHIE MARUYAMA
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。

プロフィール

デービッド・クロールさん

(京都蒸溜所代表取締役)

大学卒業後、イギリスの大学卒業後、日系金融企業の現地法人に入社。 日本本社へ異動したのち、妻(京都蒸溜所共同創業者、角田紀子・クロール)と共にスコッチウイスキーの輸入業をスタート。 京都で初のスピリッツ免許を取得し、フラッグシップ商品「季の美 京都ドライジン」を販売開始。 「季の美」は世界的な酒類品評会で「コンテンポラリージン」最高賞を受賞し、蒸溜所も「インターナショナル ジン プロデューサー オブ ザ イヤー」を受賞している。

The Kyoto Distillery
WEB: https://kyotodistillery.jp/

デービッド・クロール