厳しい寒さで甘くなる 冬野菜
寒さで甘みが増す、冬の野菜
太陽の動きに合わせて一年の季節の移り変わりを24に区分する「二十四節気(にじゅうしせっき)」という暦。植物である野菜の“旬”も二十四節気とともに変わっていく。
二十四節気での冬は、11月7日ごろの「立冬」から始まり「小雪」「大雪」「冬至」「小寒」「大寒」と1月中旬までの期間を指す。
厳しい寒さが訪れるこの時期の野菜は、寒さで凍ることがないよう、細胞に糖を蓄積するため、糖度の高い野菜が多いことが特長だ。またビタミンやカロテンなどの栄養価が高いものが多く、免疫力を高めるといわれている。
そんな冬に“旬”を迎える野菜をご紹介しよう。
キャベツ
キャベツは地中海地方が原産とされ、日本では第二次世界大戦後の洋食文化の広がりとともに家庭に広く定着したといわれる。
美味しい“旬”は「冬」だが、品種の違いや南北に長い日本の地理を活かし、一年中味わえる万能の野菜でもある。「寒玉」「春キャベツ」「紫キャベツ」が一般的な3大キャベツ。それぞれ特長や“旬”の時期が違う。
生でも煮ても炒めても美味しく食べられるため、料理のバリエーションも広い。
葉脈が左右対称であること、歯がピンとしてつやがあること、芯から見て均等な五角形であることが目利きのポイントだ。
冬に旬を迎える寒玉キャベツは、外側は硬く味が濃いので、バターソテーなどの炒め物やロールキャベツなどの煮込み向き。中心近くは柔らかく甘いのでサラダなどの生食に向いている。平地産は11〜3月、高地産は6〜10月が出回る時期。ずっしりと重いものを選ぼう。
ちぢみほうれん草
ビタミンや葉酸、鉄分などが含まれ、栄養豊富な野菜「ほうれん草」。一年中手に入る野菜ではあるが、寒い時期に育て、霜にあてたほうが甘く美味しくなるという。
ちぢみほうれん草は霜のおりる12月〜2月が“旬”。株の中心が淡い色で、葉がしっかりと分厚いものを選ぶと良い。
“旬”のほうれん草は特に栄養価が高く、積極的に食べたい食材。お菓子にすると優しい甘さがふんわりと残り、青臭さは気にならなくなる。特にちぢみほうれん草は甘みが強いので、天然の甘味料のようにお菓子作りに使うことができる。
さつまいも
晩秋から冬にかけてが“旬”といわれる「さつまいも」。焼き芋など寒い季節の風物詩として親しまれている食材だが、ひとことで「さつまいも」と言ってもたくさんの種類があり、品種や、生育や貯蔵の期間によっても、糖度が全く異なる。
さつまいもは、収穫後に土で周囲を囲った貯蔵庫で一定の気温を保ち保管する。そうすることででんぷんが糖化し、徐々に甘みが増し甘味がしっかりと強くなるのだ。
さつまいもの品種は食感で大きく3つに分類できる。
ひとつ目は「ねっとり系」。安納芋など甘い品種が多く、焼き芋やお菓子づくりに向いている。
ふたつ目は「しっとり系」。紅はるかなど一般的に多く流通している品種で、潰すとまとまりやすく調理しやすいため、ポテトサラダやコロッケ、天ぷらなどに向いている。
みっつ目は「ほっくり系」紅あずまや金時芋などの品種で、さつまいもご飯などほくほくと食べたい料理に向いている。
芋の大きさであまり味に差はないため、調理しやすいサイズを選ぶことが目利きのポイントだ。
十文字大根
一年を通して手に入る定番の野菜、大根。その歴史は古く、日本書紀には「於朋泥(おほね)」の名で記録されている。アブラナ科に所属する大根は変異が大きく、丸形の「桜島大根」や大型の「三浦大根」など、土地によって形や味が様々だ。
群馬県高崎市の十文字地区では、11月から12月に十文字大根の収穫期を迎える。
栽培される主な品種は「干し理想」、「秋まさり」、「漬けひかり」。いずれもたくあん漬け用の大根で、50センチ以上にまで育つのが特長だ。
収穫から、洗浄して、干し大根にするまでが一連の作業。十文字大根の収穫は時間との勝負で、特に重要なのが干す作業だ。干し方次第で、たくあん漬けにした時の味や風味が変わってくる。
肉質がキメこまかく歯切れのいい十文字大根は、沢庵漬けにするとその特長をより際出たせる。普段食べ慣れているたくあん漬けでは、体験できない歯応え。そして、甘味が口にひろがり、続けて苦みがあとをひく。滋味豊かで、奥深い味わいだ。
冬野菜をたっぷり味わえる簡単レシピ
ご紹介した冬の“旬野菜”から、さつまいも、キャベツを使ったレシピを考案した。
野菜の持っている甘さをスパイスで引き立てた、冬野菜のサブジだ。サブジとは、昔からインドのベジタリアンの間で愛されてきた、野菜をスパイスで蒸したり炒めたりして作られる料理。
厳しい寒さで甘みが増した冬野菜。ご紹介したレシピだけでなく、鍋料理や煮込み料理など、体を芯から温める料理にも取り入れてみてはいかがだろうか。