THE ROOTS OF SHUN (January 2015)
「天下の台所」を体現する黒門市場
― 大阪府大阪市「黒門市場」

(取材月:December 2014)
西日本最大の都市、大阪。江戸時代には物流や経済の拠点として栄え、「天下の台所」と呼ばれるほど、全国からあらゆる食材などが集まってくる活気溢れる場所であった。そして、いまでも大阪には「天下の台所」の活気は引き継がれ多くの食文化が形作られている。
この「天下の台所」の拠点として古くから栄えるのが黒門市場だ。
黒門市場は文政5年(1822年)~6年の頃より鮮魚商から始まった(公認市場としての認可は1902年)。明治末期(1912年)までこの地域にあったお寺、圓明寺(えんみょうじ)の門が黒塗りであったことが黒門市場の名前に由来しているといわれている。
ここ黒門市場には150店以上の店舗が立ち並び、鮮魚から青果、肉、着物や雑貨まで質の高い“ホンマモン”の品物が手に入る。また、大阪商人に触れられる市場として国内だけではなく、海外にも口コミで広がっていき、いまでは、多くの外国人観光客が訪れる場としても注目されている。
地元の目利きたちに育てられたフグ料理「浜藤」
黒門市場で最初に訪ねたのは、創業90余年のフグ料理の老舗、浜藤。元々はフグの卸業者であったところを現在の店主、和島さんの祖父がフグ料理の店にして、いまに至るという。浜藤のお店で味わえるフグは、フグの中でも高級と呼ばれる「トラフグ」。しかも、長崎や淡路島を中心とした国産の1.5kg以上のトラフグしか出さないというこだわりがある。
フグの魅力でもある“身のしまり”、と“歯ごたえ”を味わってもらいたいという先代からの想いが素材へのこだわりへと繋がり、いまもそのこだわりは浜藤の伝統として引き継がれていると店主の和島さんはいう。
また、浜藤ではフグへのこだわりはもちろんだが、フグ料理を引き立てる他の素材についてもこだわりを持っている。鍋の出汁に使われる昆布は羅臼産、鰹節は枕崎産を使っている。ぽん酢については長年の伝統によって生まれた浜藤特製のポン酢を使っており、浜藤でしか味わうことのできないフグ料理を堪能できる。
毒性を持つフグの調理は専門の知識と技術を要するために、海外ではあまり食べることがないといわれている。ただ、ここ黒門市場ではアジア圏を中心とした外国人観光客の増加によって、「フグ料理に興味を持ってもらえる外国人の方も多くなってきた」と和島さんは話す。
フグの消費量が日本一の大阪の地で、地元の目利きたちによって育てられてきたフグ料理。黒門市場に訪れた際は、伝統の技と味をいまに受け継ぐ浜藤でフグ料理を味わってみてはいかがだろうか。
市場ならではの活気が味わえる「黒門三平」
黒門市場はもともと鮮魚中心の市場として始まったこともあり、いまも鮮魚店が数多くある。その中の一つが、鮮魚を中心に海産物を幅広く取り扱う黒門三平だ。
150平米以上の広いスペースを擁する黒門三平の店内には、地元の料理人や国内外の多くの観光客などで溢れかえっていた。店頭には数多くの鮮魚が並べられ、中には70cmほどもある大きいサワラや殻つきで並べられたウニ、本マグロの大きなブロックなどが並べられている。
そして、数多くの鮮魚と店員さんの意気の良い呼び込みの掛け声が飛び交う黒門三平は、市場ならではの活気までも味わうことができる。
さらに嬉しいことに、黒門三平では店頭の新鮮な魚を使ったお寿司や丼ぶりなどがその場で食べることができるイートインスペースが店内に併設されている。このイートインスペースは外国人観光客にも評判で、1日700食もの料理が注文されるという。
「黒門市場には観光客だけでなく、料理人の方たちも買い付けに来てくれます。そのためにサワラなどの大型の魚も並べているのですが、その豪快さがディスプレイともなって観光客の方たちにも喜んでもらっています。イートインもそうですが、黒門三平ではお客さんに楽しんでもらえることをやっていこうという気風を大事にしています」と黒門三平の代表取締役、岩﨑さんは話してくれた。
“見てよし”、“食べてよし”の活気溢れるこの空間は、鮮魚を主役としたエンターテイメントを感じられる場といえるだろう。
海外からの観光客から料理人まで幅広い客層と日本全国から取り寄せられた鮮魚を中心とした、とっておきの品々が並ぶ「黒門三平」は黒門市場の現在進行形が垣間見える一店である。
四季折々の果物が全国から集まる「ダイワ果園」
黒門市場を歩いていると、色とりどりの果物やスイーツに思わず目を奪われた。昭和23年から続く果物店、ダイワ果園だ。
店頭には“旬”の苺「あまおう」をはじめとした果物や選び抜かれた季節の果実でつくったケーキやお菓子が並んでいる。
ダイワ果園では冬の特定の時期を除いて手軽に店先でフレッシュフルーツジュースが飲める。
果物店だからこそ堪能できる新鮮な素材を活かした爽やかな味わいは、市場を歩きまわり疲れた体を癒してくれる一品だ。
ダイワ果園店長、長谷川さんに “旬”の果物について尋ねてみた。
「冬の時期は、苺、温州みかん、デコポンとかですね。あと、珍しいところでいうとル・レクチェという新潟の白っぽい洋梨がでてきます。ダイワ果園では、全国の果物を厳選し、その季節の“旬”の果物を揃えています。ケーキなどのスイーツも黒門市場にある我々の直営工場で、新鮮な“旬”の果物を使ってつくっていますので、出来立ての美味しさを味わうことができますよ」
黒門市場を行き交う人たちは、ダイワ果園の店頭に並ぶ“旬”の果物やスイーツが四季折々に見せる表情と甘い香りに誘われ、思わず足を止めていた。
130年以上続く黒門市場のエネルギー
黒門市場商店街振興組合理事長の山本さんに、なぜこの黒門市場が130年以上に渡って市場のエネルギーを繋いでこられたのかを尋ねた。
「わたしもここ黒門市場で店を構える漬物屋『伊勢屋』の4代目として産まれて、ここで育ちました。いまは甥っ子が6代目として店を継いでいます。黒門市場がいまも続いている確かで大きな理由は、店が次の後継者に先代たちの想いとともに受け継がれてきているからです」。
各地の商店街では大きな課題の一つに後継者不足があげられる。もちろん多くのお客さんが市場に足を運んでもらえる工夫をすることも重要だが、店や市場を営む人々が、その場を守り続けていくことが重要だと山本さんは話す。そうして店が代々続いていくことによって、先代たちの背中を見た次代の跡取りが「商売はおもろいなぁ」と感じて育っていく。黒門市場では、組合をはじめ店舗同士の繋がりも大切にしながら、いまの黒門市場を創り続けていた。
そして、その黒門市場が繋いできた活気あるこの市場は、いまでは日本人だけではなく海外の人たちにも注目されている。黒門市場では海外の人たちにも市場の魅力を楽しんでもらうために外国語の観光マップや看板を作成したり、Wi?Fi環境を整備したりするなどの様々な取組を行っている。このような工夫と市場ならではの活気によって外国人観光客の満足度は上がり、再び黒門市場を訪れる人も多いという。
地元の人、料理人、国内外の観光客の方たち含め、黒門市場には人が作りだすエネルギーがそこかしこから溢れている。まさに、ここ黒門市場は「天下の台所」大阪の活気を体現する場所であった。
黒門市場店舗紹介
※こちらに掲載されている店舗は、一部店舗になります。


伊勢屋商店
漬物、味噌、梅干し
明治30年(1897年)創業の漬物屋。機械化をしない伝統製法にこだわっています。新鮮な野菜を原料に、塩分少なめで、リンゴ酢と良質な昆布を使い、コクのある旨みを追求。長きにわたってお客様に愛され、日々の献立の一品としてはもちろん、進物・贈答としても人気。
- 住所:大阪市中央区日本橋2-3-4
- TEL:06-6644-1101


魚丸商店
マグロ
威勢のいい掛け声が響く活気あふれるマグロ専門店。卸売はもちろん、小売りでも買いやすいようにマグロのお造りを少量パックにして販売しています。大トロ、かまトロをはじめ、マグロ三昧で、日本人だけでなく、外国人観光客の方にも大好評。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-17-7
- TEL:06-6641-1595


魚萬珍味堂
珍味、和食食材
黒門市場で唯一、からすみ、このわた、干子など珍しい高級珍味が手に入るお店。アジア圏からの観光客に、北海道産の干貝柱やわさび菓子などが大人気。和食食材も豊富に取り揃えており、酒の肴や食事の一品にと、どなたにも満足いただける品揃え。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-21-9
- TEL:06-6645-0053


黒門三平
鮮魚
約50坪ほどの広いスペースに、新鮮な鮭をはじめとした鮮魚、魚卵から、刺身、寿司、丼ぶり、お土産品まで豊富な商品が揃う、魚専門店。お店の一角には、約80席のイートインスペースもあり、お店の商品をその場で気軽に味わうことができます。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-22-25
- TEL:06-6634-2611


鮮てっちり 黒門浜藤
ふぐ、ふぐ料理
フグ料理一筋90余年。活トラフグは1.5kg以上のものに厳選し、取り扱っています。捌いてから一晩寝かし、旨みを引き出したてっさ、てっちりは絶品です。5月頃からの約1カ月間は数量限定で天然もの、11月頃からは淡路の三年フグと、季節ごとの美味しさをコース、一品料理で提供。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-21-8
- TEL:06-6644-4832


黒門萬野総本店
精肉
昭和5年(1930年)の創業以来、安くて美味しい「国産黒毛和牛」を提供してきた食肉の総合商社。多くのお客様に安全で美味しいお肉を味わっていただくことをコンセプトにしています。黒門店には「神戸ビーフ」や「佐賀牛」など、こだわりの国産黒毛和牛を取り揃えています!
- 住所:大阪市中央区日本橋1-22-20
- TEL:06-6648-1129


近藤商店
惣菜
「安い、新しい、美味しい」がモットーの惣菜店。“旬”の新鮮な食材を使い、かつお風味の関西風であっさりとした味が評判。煮物、和え物、揚げ物、各種サラダ、煮豆、佃煮など、常に約40種類以上のお惣菜を用意しています。ぜひ手作りのお惣菜をご賞味ください。
- 住所:大阪市中央区日本橋2-12-23
- TEL:06-6633-2571


新魚栄
淡水魚・鮮魚、化粧品
社長厳選の上質の商品を提供する淡水魚・鮮魚の専門店。スッポンを料亭に卸していた中で出会った、静岡の焼津水産高校が飼育するスッポンの栄養価に惚れこみ、近畿大学薬学部と共同で化粧品を開発。コラーゲンたっぷりの化粧品は口コミで評判を呼んでいます。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-21-8
- TEL:06-6636-0085


ダイワ果園
フルーツ、ケーキ
有名百貨店等にも出店している関西の高級果物店。四季折々の"旬"のフルーツは、全国の優良産地からこだわりの一品を揃えます。高級フルーツは贈り物にも最適で、全国(海外は香港のみ)に発送可能。フルーツをふんだんに使ったケーキやゼリー、焼き菓子も充実し、お土産におすすめ。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-22-20
- TEL:06-6633-1095


カレーの店 ニューダルニー
カレー
大阪で評判のカレー専門店。辛さだけにとらわれずに味を吟味したカレーは昔なつかしい風味で、日本人はもちろん、観光に訪れる外国の方にも人気。お店のイチオシは「ビーフカレー」。温めるだけでお店のカレーがご自宅でも味わえる、持ち帰り用カレールーも好評。
- 住所:大阪市中央区日本橋2-12-16
- TEL:06-6633-4080


花の木
お好み焼き、たこ焼き 等
大阪の代表的なローカルフード、「粉もん」が味わえるお店。焼き立てアツアツのたこ焼きやお好み焼きを店内で気軽に味わえます。テイクアウトも可能です。一番の人気は「お好み焼きシーフード玉」。お土産には大判焼きがおすすめ。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-21-33
- TEL:06-6641-1069


二葉商店
鰹節、昆布
昔ながらの和食の基本、「出汁」にこだわった乾物専門店。枕崎産の鰹節や利尻昆布、冬菇(どんこ)椎茸など、厳選した素材を数多く取り扱っています。店内で加工したばかりの新鮮で風味高い鰹節や、オリジナルの出汁パックがおすすめ。
- 住所:大阪市中央区日本橋2-12-24
- TEL:06-6641-2716


丸栄商店
鮮魚
鮮度と丁寧な仕事にこだわり、地元大阪の人に愛されて、黒門市場で70年続く鮮魚店です。毎日10種類以上用意する「天然ものの“旬”の刺身」、人気の「ふぐのてっさ」はぜひ食べてもらいたい一品です。一口食べれば、新鮮な魚介の味がヤミツキになります。
- 住所:大阪市中央区日本橋2-13-17
- TEL:06-6641-5651


みやもと
呉服
呉服 みやもとは、七五三や結婚式といった人生の節目、お正月や地域のお祭りといった季節の節目など、日本の伝統的な節目のお祝いを、着物を通じてお手伝いします。日本の風習・伝統・文化が育んだ和の文様や配色で描かれた和物グッズもおすすめ。
- 住所:大阪市中央区日本橋1-22-19
- TEL:06-6643-5291
Writer : YASUHARU MOTOMIYA / Photographer : KOJI TSUCHIYA & HIROSHI KOBAYASHI
黒門市場
住所 |
大阪府大阪市中央区日本橋2丁目4番1号 *地下鉄千日前線「日本橋駅」下車10番出口すぐ |
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TEL | 06-6631-0007 |
URL | http://www.kuromon.com/ |
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大阪府 観光情報
ADVENTURE JAPAN | http://www.adventurejapan.jp/archives/category/ajnumber/vol-18/大阪 |
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japan-guide.com | http://www.japan-guide.com/e/e2157.html |