老舗の米屋が提案する新しい米食文化

イメージ写真
「瑞穂の国」といわれるように、日本は古くから稲作が根付く国。主食としてはもちろん、神事に用いられることも多い米は日本人と最も深い関係にある食材ともいえるだろう。

美味しい米は四季と手間ひまが育てる

米写真

米作りは、季節の移り変わりと共にある。新緑の美しい初夏に田植えをし、夏の日差しが稲穂を育み、冬に積もった山の雪解け水が田んぼを潤す。秋には黄金色に輝く稲の収穫が始まって、この時期から市場に出回る新米は、“旬”を噛みしめることができる食の風物詩となる。

もちろん気候や風土だけでなく、愛情を込めて育てる農家の存在も欠かせない。「米」という字を“八十八”と書くことになぞらえて、米作りには88回もの手間がかかるといわれている。また近年では有機肥料の使用や減農薬に取り組む農家も増え、品種改良などの技術革新も続いている。より良いお米を作るために生産者たちは日々進化しているのだ。

シーンに合わせて米を選ぶ。新しい米食の提案

山田屋本店写真

明治38年(1905年)に創業した米専門店の山田屋本店は全国から選りすぐりの米を揃える“米のセレクトショップ”である。
地域、農協、生産者といった細かい単位で銘柄の産地を吟味しながら、 “生産者の顔の見えるお米販売”にこだわっている。さらに、米の味わいに大きく関わる精米の技術にも注力。山梨県に大規模な精米工場を設け、品質管理も徹底している。

「米は主食ではなくなった」山田屋本店の代表取締役社長、秋沢淳雄さんはいう。

110年続く米専門店の大将は日本人と米食の関係をこう見つめ直す。
「いま1日3食のうち、どれくらいお米を食べているでしょう。これまでは食べて当たり前だったお米が、パンや麺と競争する時代になってきました。さらにお米はスーパーやドラッグストアだけではなく、インターネットでも買うことができるようになりました。だから、我々は美味しいお米を揃えるだけでなく、米の専門店ならではの“新しいお米の食べ方”を提案していかなければならないと考えています」。

秋沢淳雄さん写真

山田屋本店がおこなうその一つの取り組みが料理やTPOに合わせて米を選ぶというもの。山田屋本店では「食感のマトリックス」という独自の食味チャートを作り、“粘り”や“食感”といった項目でお米の味を分析。
消費者の好みに合ったお米を薦めるだけでなく、寿司やカレーといった料理ごとに味わいや食感の合うお米を選んでくれるのだ。さらに合格祝いや誕生日など、TPOに合わせたお米のセレクトまでもしてくれる。まるでワインのようにお米とシーンの組み合わせを楽しませてくれる。

「日本には色々な味わいのお米があるので、組み合わせを選ぶ楽しみを知って欲しいですね。山田屋本店では1kg単位の小ロットで買えるので、日常食べるお米とは別に特別な場面のためのお米を選んでいただけたら、お米の楽しみ方も広がっていくと思っています」。

目利きが選ぶ注目の銘柄

世の中にさまざまなトレンドがあるように米の世界にも消費者の好みのトレンドがある。近年は粘りの強いコシヒカリを親とする品種の「ミルキークイーン」や「ゆめぴりか」といったモチモチとした食感の米の人気が高いという。
そんな中、秋沢さんがいま注目している銘柄を教えてもらった。

奥大山江府米写真

①「奥大山江府米」鳥取県

「鳥取県西部の奥大山にある江府町という町で作られたお米です。大山の麓にブナの森林があり、その根に濾過された水がとっても美しいんです。これまで西の方の産地の米はほとんど扱っていなかったのですが、3.11の震災後に、このお米の存在を知りました。粘りが強く弾力があり、噛むほどに旨みと甘みが出てきます。冷めても美味しいのでお弁当にも最適ですよ」。

金のいぶき写真

②「金のいぶき」宮城県

「通常の3倍ほどある巨大な胚芽を持った玄米です。玄米は浸水する時間が長く、独特の食感や風味があるので踏み切れない方も多いと思います。しかし、このお米は白米と同じ感覚で炊けて、食感も白米に近いんです。それでいて、食味はモチモチとしていて玄米らしいプチプチ感もあります。胚芽が大きいぶん、栄養価も高いのが特長です。普通の白米と同じ感覚で、ぜひこのまま食べてみてほしいですね」。

未来のお米好きを育てる「いきものみっけファーム」

田植え写真

山田屋本店が自治体や生産者と一緒に平成26年(2014年)から取り組んでいるのが「いきものみっけファーム」というプロジェクトだ。山田屋本店の精米工場のある山梨県中央市の田んぼに東京から親子連れを招き、米作り体験や生き物観察をするという体験型環境教育の場を提供している。

今年の6月に行われた田植え体験会には子供から大人まで約70名が参加。地元農家の指導のもと、慣れない手つきで田植えに挑戦し、ザリガニやヤゴなどの田んぼにいる生き物に触れることもできる。
また、地元の子どもたちと一緒になって田んぼで“泥んこドッジボール”や、お昼には地場産のお米や野菜を使ったご飯を満喫できる。まさに、お米が生まれる産地の自然を全身で楽しむことができるプロジェクトである。

いきものみっけファーム写真

田植えをしたのは「ヒノヒカリ」という品種。もともと九州地方で多く作られていた品種で、“東のコシヒカリ、西のヒノヒカリ”といわれるほど良質なお米だ。「いきものみっけファーム」の田んぼで収穫されたお米は、山田屋本店の店舗で販売される。

「田んぼはお米を作るだけでなく、様々な生物が生活する場所でもある。『いきものみっけファーム』を通して、人と生物が共生することの大切さを学ぶ機会になればいい。そして少しでもお米のことを好きになってくれたらうれしいですね」と秋沢さん。

消費者と生産者をつなぎ米の未来を作るため、米専門店の挑戦は続いていく。

山田屋本店おすすめ米

つや姫

つや姫名人会 山形県鶴岡市産つや姫 特別栽培米

産地:山形県鶴岡市

米の専門店、山田屋本店と生産指導を行うJA庄内たがわの共同企画米。山形県最大のつや姫栽培面積と生産者を誇るJA庄内たがわ。県の認定生産者数は1,052名の匠たち。その匠が圃場を限定し、生産したつや姫を競う「つや姫コンテスト」。

rice_1_1

玄米、精米、炊飯の段階ごとに厳正なる審査を経て誕生したのが「つや姫名人」10名。つや姫の頂点を極めたお米は、お米の白さ、艶、香りはもちろん噛むほどに甘みが増す上質なお米です。

元気つくし

米屋彦太郎×めし丸元気つくし 福岡県嘉穂郡産元気つくし 特別栽培米

産地:福岡県嘉穂郡

「米屋彦太郎×めし丸元気つくし」のお米は、米屋彦太郎(※)が、福岡県の20あるJAの中から粒感、食味の様々な美味しい要素をチェックし、厳選したお米です。炊き立てはもちろん、冷めても粘り、もちもち感があり、お弁当やおにぎりなどにも美味しく召し上がれます。粒が立ち、粒形が崩れにくいのでおにぎりにも最適なお米です。

※『米屋彦太郎』は、山田屋本店が銀座三越にて運営する米の専門店です。

たかたのゆめ

たかたのゆめ 岩手県陸前高田市産たかたのゆめ

産地:岩手県陸前高田市

東日本大震災で大きな被害にあった岩手県陸前高田市。この町でもう一度、米作りの夢をかけて新しいブランドができました。「たかたのゆめ」という陸前高田市の未来の夢をかけたお米です。

rice_3_2

見た目はつやつや、味はすっきりとしていて印象的な甘みを持ち、食感は粘り気がありもっちりとしています。また、耐倒伏性の強さ、穂いもち病への耐性の強さにより、低農薬での栽培が可能となっています。

ヒノヒカリ

いきものみっけファ-ムのお米 山梨県中央市産ひのひかり

産地:山梨県中央市

「いきものみっけファ-ム」は、食・農・環境をテ-マに子どもたちが体験を通じて学ぶ場です。山田屋本店は、この活動を通して都会の子どもたちを自然豊かな場で自然やそこで生産される食べ物の大切さを学ぶ活動をしています。

rice_4_1

子どもたちが、田植えや稲刈りをしたこのお米は、米から出る米ぬかを利用した肥料を使用した循環型の農業で栽培されています。生産者ばかりでなく消費者など多くの人たちが関わりを持ち美味しさを育んできたお米です。

Writer : ASAKO INOUE
 / 
Photographer : SATOSHI TACHIBANA

お米館 調布本店(株式会社山田屋本店内)

お米館調布本店写真
所在地 東京都調布市布田2-1-1 *京王電鉄線 調布駅から徒歩約10分
TEL 042-482-2011
定休日 日曜日
営業時間 平日9:00-18:00 祝日10:00-18:00
URL http://www.okomekan.net/

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

シェア
ツイート

おすすめ記事