「冬の野菜 さつまいも」
晩秋から冬にかけてが“旬”といわれるさつまいも。焼き芋など寒い季節の風物詩として親しまれている食材だが、実は品種も多く、料理でも幅広く使えることをご存じだろうか。今回はさつまいものことをもっと深く知るべく、さつまいもの生産者でもある「うさぎ農園」の月野亜衣さんと、料理家の寺井幸也さんにお話を伺った。
土の貯蔵庫で甘みを増すさつまいも
まずは熊本県合志市(こうしし)で200種類を超える野菜を栽培する、うさぎ農園の月野亜衣さんにさつまいもの基本を教えていただいた。
「ひとことで『さつまいも』と言ってもたくさんの種類があります。品種によっても、生育や貯蔵の期間によっても、糖度が全く異なるので、その違いを楽しんでもらえたら」。
うさぎ農園では、1月後半に種芋を植え付けてから12月の霜がおりるまで、長い期間をかけて紅はるか、安納芋、パープルスイートの3種類のさつまいもを生育している。収穫後は、土で周囲を囲った貯蔵庫で一定の気温を保ち保管する。そうすることででんぷんが糖化し、徐々に甘みが増し、1〜2月頃になると甘みがしっかりと強くなるのだ。
「しっかり甘くなったさつまいもはそのままでも美味しいので、私たちは焼き芋にしたり、油と相性が良いので天ぷらやポテトチップスなどにして食べています。さつまいもの糖分を気にする方もいらっしゃいますが、体にも良い自然な栄養分なので、ぜひおやつなどにも食べてもらえたら」と、亜衣さん。
実はカラフル。食感で品種を使い分けて
さつまいも料理の幅を広げるべく、料理家の寺井幸也さんを訪ねた。ケータリングや飲食店プロデュースなど幅広く活躍されている寺井さんの料理は、独自のセンスで見た目も華やかなのが特長だ。
「さつまいもやじゃがいもは、品種が多く実はカラフルな野菜。いろんな品種を食べてみて、自分好みのものを探して楽しんで調理しています」と、寺井さん。
寺井さんによると、さつまいもの品種は食感で大きく3つに分類できるそう。
ひとつ目は「ねっとり系」。安納芋など甘い品種が多く、焼き芋やお菓子づくりに向いている。
ふたつ目は「しっとり系」。紅はるかなど一般的に多く流通している品種で、潰すとまとまりやすく調理しやすいため、ポテトサラダやコロッケ、天ぷらなどに向いている。
みっつ目は「ほっくり系」。紅あずまや金時芋などの品種で、さつまいもご飯などホクホクと食べたい料理に向いている。
さつまいもを食卓の主役に
さつまいもをメインにしたご飯のおかずというと、なにが思いつくだろうか。今回は、食卓を彩る主役級のおかずになるレシピを寺井さんに考案していただいた。
「さつまいもの甘みを生かしつつ、どう抑えるかがポイントです。さつまいもはあまり香りが強くない食材なので、スパイスやしょっぱい調味料、玉ねぎなど味と香りが尖がって強いものと合わせるといいですよ」と、寺井さん。
今回は、紅はるかのポタージュと、パープルスイートと安納芋の2色のポテトサラダ、さらにそれを応用したコロッケのレシピを教えていただいた。
寺井さんは、家庭料理をより簡単に、楽しく、彩りよくつくることを提案している。彩りのよい野菜を中心に栽培し、手軽に使える野菜の調味料なども製造しているうさぎ農園さんと、目指している方向は同じだ。
「共働きの家庭も多くなり、忙しい人が増えたなかで、どうしても家庭料理の質が落ちてきていることを感じています。だからこそ、料理をするという行為が少しでも楽しく、簡単に、前向きに取り組めるようなレシピを提案することを心掛けています」と、寺井さんが胸の内を語ってくれた。
今回教えていただいたレシピも、見た目の華やかさから想像するよりもシンプルな材料と工程だった。ぜひ楽しみながら挑戦してみてほしい。
さつまいも
情報提供:うさぎ農園 月野亜衣さん、料理家 寺井幸也さん“旬”の時期
12月末〜2月頃のものが甘みが強い
目利きポイント
芋の大きさであまり味に差はないため、
調理しやすいサイズを選ぶこと
美味しい食べ方
・ねっとり系(安納芋など):焼き芋やお菓子の材料
・しっとり系(紅はるかなど):ポテトサラダやコロッケ、天ぷら
・ほっくり系(紅あずまや金時芋など):さつまいもご飯