目利きが語る:夏の「ゴーヤー」

ゴーヤー
“旬”野菜の魅力を語っていただく「目利きが語る“旬”」シリーズ。
東京都・神楽坂で全国の“旬”野菜を取り揃える八百屋「瑞花-suika-」を創業し、矢嶋文子さんが「ゴーヤー」の目利き方法と美味しい食べ方を教えてくれた。今年3月には神奈川県横浜市に系列店となる「ヤオヤスイカ」をオープンさせた。

梅雨明けと同時に出荷がスタート

八百屋

鮮やかな緑色に、イボイボとした表皮、そしてあとをひく独特の苦味。南国由来の「ゴーヤー」は、野菜のなかでもかなりの個性派だ。ゴーヤーとは沖縄の呼称で、別名を「にがうり」や「ツルレイシ」という。近頃は、スーパーや八百屋でも、ゴーヤーと表記されることが多く、その名称は一般的となってきた。つる植物であるゴーヤーを、夏の日差しを防ぐグリーンカーテンとして育てる家庭も増えている。

「ゴーヤーは、ここ10年くらいで関東でもすっかり市民権を得ましたよね。うちのお客さんも『夏はこの苦味が恋しくなっちゃって』と、買い求めにきますよ」と、話すのは「瑞花」の創業者、矢嶋さん。

瑞花

矢嶋さんが手にするのは、30センチ近い長さの立派なゴーヤー。この日、店頭に並んでいたゴーヤーは、沖縄の有機農家で栽培されたものである。

「飲食店向けに通年流通している印象ですが、やっぱりゴーヤーの“旬”は夏!食べ頃は6月から8月にかけて。残暑が長引くと、9月初旬まで“旬”の味を楽しめます。6月頃に出回るのは、一足先に梅雨明けした沖縄産のゴーヤーが中心になります。沖縄のイメージが強い野菜ですが、7月頃は関東圏の農家が栽培したゴーヤーも流通しているんですよ」。

ゴーヤ

ゴーヤーにもいくつか品種がある。ずんぐりした「あばしゴーヤー」、ひょろりとした「中長ゴーヤー」、なかには真っ白い「白ゴーヤー」なんて変わりダネも。矢嶋さん曰く「真っ白いゴーヤは苦みが少なく、お子様にも食べやすいものですが、緑色の品種に味に大きな差はないので、品種はあまり気にしなくていいかも」とのこと。沖縄らしい、なんともおおらかな野菜なのだ。

薬用として活用されたゴーヤーの底力

ゴーヤー

ゴーヤーは、古来より中国やインドなどで薬用植物として珍重されてきた。好き嫌いが分かれるあの独特の苦味は、栄養成分「モモルデシン」によるもの。モモルデシンは胃腸の粘膜を保護し、食欲増進などに効果がある。さらに、含まれるビタミンCはトマトやキュウリの約5倍。ゴーヤーのビタミンCは加熱しても壊れにくい、という特長がある。

「暑い夏を乗り越えるために英気を養う、という意味でもゴーヤーを食べてほしいですね。ゴーヤーに多く含まれる苦みは食欲を増進し、カリウムには利尿作用があるので、体内の熱を下げる効果があります。まさに、夏にうってつけの野菜。逆に寒い時期に食べると身体を冷やしてしまうのでおすすめしません」。

ゴーヤ

矢嶋さんによるとゴーヤーは「味の当たり外れが少ない」のだという。いくつかのポイントを注意すれば、気軽に購入できるのも魅力なのだ。その目利きのポイントを伺った。

 

“旬”野菜ゴーヤーの目利きポイント

・ずっしりと重みのあるものを選ぶ
・表面がしっかりしているものを選ぶ
・鮮やかな緑色のものを選ぶ

 

「サイズは、つくる料理に合わせてお好みで選んで構いません。熟していくと皮がどんどん黄色みを帯びていきます。すると、最大の魅力である苦味がなくなってしまうので注意しましょう。また、どんな野菜にも言えますが、遠方から出荷される野菜は流通の際に傷などがつく可能性があるので、しっかり確認することが大切です」。

ゴーヤーは比較的、足のはやい野菜なので一度の調理で使い切るのがおすすめ。冷蔵保存する際は、新聞などで包みポリ袋にいれて、冷気が直接当たるのを防ぐといいそうだ。

苦味を活かして様々な料理に

瑞花

ゴーヤーを使った料理の代表といえば、沖縄の郷土料理「ゴーヤーチャンプルー」。ゴーヤーを豚肉や豆腐、卵とともに炒め合わせた定番料理だ。しかし、その印象から「ゴーヤー料理はバリエーションが乏しい」と思っている人も多いのではないだろうか。そこで、矢嶋さんにおすすめのレシピを伺った。

「ゴーヤーは油と相性が良いので、炒め物に最適。ピーマンの肉詰めみたいに調理するのもいいですね。またスライスしたゴーヤとスライスたまねぎ、梅ドレッシングと和えてサラダにするのもおすすめです」。

今回は、夏に摂りたいビタミン豊富な豚ひき肉と、カリウムが豊富なゴーヤーとナスを合わせた炒め物のレシピを考案していただいた。

ゴーヤーレシピ

★ おすすめレシピ

「ゴーヤーとナスのそぼろあん炒め」

苦味が際立つ生食は、塩をかけて下処理しておくと苦味が緩和されるという。
他にもおすすめのゴーヤーレシピを伺うと、意外にも好評なのがゴーヤージュースだという。

「ゴーヤー、みかんジュース、蜂蜜少々をミキサーにかけてジュースにするんです。とあるイベントでふるまったところ、なかなかウケがよかったですね。ゴーヤーチャンプルーのイメージが強いですが、要は使い方次第。独特の苦味を活かせば、料理のいいアクセントになりますよ」。

味、栄養面、熱を下げる作用など夏の食材として万能なゴーヤー。この夏は自分だけのゴーヤーレシピを考えるのも楽しそうだ。

ゴーヤー

情報提供:八百屋瑞花 矢嶋文子さん
ゴーヤー

“旬”の時期

6月から8月頃

目利きポイント

ずっしりと重みのあるもの
表面がしっかりしているもの
鮮やかな緑色のもの

美味しい食べ方

油と相性が良いので、炒め物に最適。
薄い輪切りにしてたまねぎや梅と和えてサラダにするのもおすすめ
甘い果実と合わせてミキサーにかけジュースにも

Writer : NAOYA NAKAYAMA
 / 
Photographer : CHIE MARUYAMA

プロフィール

瑞花
矢嶋 文子(やじま あやこ)
八百屋瑞花(東京・神楽坂/現在は閉店)の創業者。全国を巡り選りすぐった旬の野菜を扱い定評を集める。現在は牛込幸國寺の副住職の妻。二児の母でもある。現在はお寺で味噌づくりをはじめ、野菜や食にまつわるイベントを開催している。著書に『旬のやさい歳時記』(主婦と生活社)がある。

ヤオヤスイカ 横浜西口店

ヤオヤスイカ
所在地 神奈川県横浜市⻄区南幸1‒5-1 ジョイナス地下1階 FOOD&TIME ISETAN YOKOHAMA内
TEL 045-624-8607
定休日 ジョイナスの休館⽇に準ずる
営業時間 10:00-22:00
URL https://www.instagram.com/yaoyasuikayokohama/?hl=ja

※こちらの情報は取材時のものです。最新の情報は各店舗にお問い合わせください。

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