「春の野菜 タケノコ」
東京都内に13店舗を展開し「新鮮・おいしい・適正価格」の野菜を販売する八百屋「旬八青果店」で、春の味覚「タケノコ」の目利き方法や食べ方についてお話をうかがった。
一日にぐんぐん成長するタケノコ
寒さのなかにも春の兆しが感じられるころ、八百屋やスーパーにタケノコが並びはじめる。タケノコは、竹の地下茎から伸びる若い芽のことで、つまりは「竹のこども」という意味。成長スピードは親ゆずりですさまじく、一日で1メートル伸びたケースもあるという。すくすくと旺盛に成長するタケノコは、新たな始まりを迎える春にふさわしい野菜だ。
桜の開花を迎えた3月下旬、旬八青果店五反田店の店頭にはタケノコの代表的な品種「孟宗竹(モウソウチク)」が並んでいた。ずんぐりとした孟宗竹はどこか愛嬌があり、表面についた泥はしっとりと濡れ、掘りたての新鮮さが伝わってくる。
「みなさんが普段、お店などで目にしているタケノコの多くが孟宗竹です。“旬”は、一般的に3月の終わりから5月ごろまで。まず九州地方を代表する福岡県から出回り、それから関西、関東と北上しながら産地がリレーしていく感じです」。
そう話すのは旬八青果店のバイヤー、松根拓乃さん。松根さんは「合馬(おうま)たけのこ」を特産品とする北九州市出身。幼いころからタケノコは、春の定番食材だったという。
「孟宗竹はえぐみが少なくて身も柔らかくて食べやすい。タケノコの味は栽培された土壌に大きく影響されます。とくに福岡の赤土で育ったものはアクも少なく、甘みがあって美味しい。じつは京都もタケノコの産地として有名。皮色の薄い『白子』は高級品です」。
そのほか、孟宗竹に続いて、皮が赤紫がかった「淡竹」や根元が湾曲した「根曲がり竹」が5~6月ごろに“旬”を迎える。
美味しいタケノコの選び方
タケノコを調理するうえで気になるのが、強いアクとえぐみだ。土の中で育つタケノコは、地上に顔を出し陽に当たっている時間が長いほどアクやえぐみが増すという。
掘った直後ならアクが少なく、その場で生食できるがこれはあくまでも「究極の食べ方」であって、一般家庭では難しい。松根さんが目利きポイントを教えてくれた。
・穂先が黄色いものを選ぶ
・切り口が瑞々しいものを選ぶ
「陽にあたると光合成が進み、穂先が緑色になり皮色も変化していきます。そうなるとアクやえぐみが強くなってしまう。黄色い穂先のタケノコはギリギリまで地中に埋まっていたということ。しっかりアク抜きすれば美味しくいただけます。切り口も鮮度の基準。かわいたものより、瑞々しいものを選びましょう」。
買ってきたタケノコはすぐにアクぬきを。アク抜きの工程は次の通り。
1 タケノコの穂先と根元の固い部分を切り落とす。
2 包丁で縦に1本切れ目を入れて火通りをよくする。
3 タケノコが浸かるくらいの水とぬか1つかみが入った鍋で、タケノコをゆでる。
4 1時間ほどゆでたら、火をとめて鍋の熱湯が冷めるまでまつ。
「ぬかがなければ、小さじ1杯程度の重曹でも代用できます。4の工程は、私のおばあちゃんから教わったもの。ゆっくり熱を冷ますことでアクがしっかり抜けるようです」と、松根さん。タケノコをまるごとホイル焼きにして、ポン酢で食べるのもオススメなのだそう。
食物繊維を豊富に含んだタケノコ
タケノコは水に溶けない不溶性食物繊維を豊富に含んだ食材。不溶性食物繊維は腸の働きを活発にし、便秘解消に効果を発揮する。腸内の有害物質を体外に排泄する機能もあるという。
そのほか、カリウム、銅、亜鉛などのミネラルも多く含んでいる。“旬”の味わいとともにたくさんの栄養素も摂ることができるのだ。
「生のタケノコってハードルが高く感じるけど、意外と手間はかからないんですよ」と、松根さんがいうように、この春はタケノコの調理に挑戦してみてはいかがだろうか。
タケノコ
情報提供:旬八青果店 バイヤー松根拓乃さん“旬”の時期
3月の終わりから5月ごろ (孟宗竹)
目利きポイント
穂先が黄色いもの
切り口が瑞々しいもの
美味しい食べ方
まるごとホイル焼きにして、ポン酢で食べる