目利きが語る:夏の「モロヘイヤ」
東京・神楽坂で全国の“旬”野菜を取り揃える八百屋「瑞花」を営みながら、人を元気にする食について伝えている矢嶋文子さんに、夏に美味しい「モロヘイヤ」の目利き方法や食べ方を語ってもらった。
季節に合わせた役割をもつ“旬”の野菜
太陽の動きに合わせて一年の季節の移り変わりを24に区分する「二十四節気(にじゅうしせっき)」。
「二十四節気」によると、夏の始まる日は5月6日の「立夏」。そこから「小満(しょうまん)」「芒種(ぼうしゅ)」「夏至(げし)」「小暑(しょうしょ)」「大暑(たいしょ)」と、6つの節気に分かれており、概ね二週間ごとに区切られた節は、目に見える形で季節が移り変わっていく姿を私たちにみせてくれる。また、そのサイクルに合わせ“旬”の野菜も、私たちの身体の要求も変わっていく。
暑い夏は食欲が減退してしまったり、大量に汗をかいて水分が不足したりすることで、体力が落ちてしまう時期でもある。そうした夏の身体を元気にしてくれるのが夏野菜だ。
「キュウリやナスなどのみずみずしい夏野菜は、食べることで水分補給ができて、体温を下げる効果があります。粘りのあるオクラやモロヘイヤも喉越しが良く、粘膜を保護する役割や滋養があり、食べると元気が出るので、夏におすすめしたい野菜です。暑い時期は胃腸が弱っている人は、消化に負担のかかる生野菜よりも煮込んだり焼いたりした料理のほうが食べやすいですよ」と、矢嶋さんは話す。
夏バテの強い味方。美味しいモロヘイヤの選び方
アフリカ原産のモロヘイヤはアラビア語で“王様のもの”という意味があり、古代エジプトでは昔から栄養価の高い野菜として重宝されていたという。
モロヘイヤの“旬”は6月中旬〜8月中旬にかけて。収穫できる地域も沖縄県から始まり、梅雨前線のあとを追うように北上していく。
・葉がピンと張り、厚みがありながらも柔らかい
・葉の裏にある葉脈が左右対称で美しい
・色は濃く、真緑ではなくモスグリーンのような紗のかかった緑色
日の光を浴びて伸び伸びと葉を広げたモロヘイヤは、暑さで弱った身体のメンテナンスに最適。
「モロヘイヤには、ミネラルの一種であるカリウムやビタミン類が豊富。さらに鉄分も多いので、鉄分不足になりがちな女性に積極的に食べて欲しい夏野菜です。特長はオクラのような“粘り”で、この粘りが暑さで弱った消化器官や粘膜を保護してくれます。ツルリとして喉越しも良く、夏バテにはぴったりです」。
暑さを乗り切る!モロヘイヤの煮込み料理
栄養をたっぷり蓄えた“旬”のモロヘイヤのおすすめレシピを矢嶋さんに伺った。
「ぜひおすすめしたいのが、スパイスの香りが食欲を誘うスーダンの煮込み料理『ムルヒヤ』。赤道に近い国の料理なので、暑さを乗り切る秘訣が詰まった料理です」。
「ムルヒヤ」を作る時のポイントは、モロヘイヤをできるだけ細かく刻むこと。そうすることで、モロヘイヤの特長である粘りがしっかりと出て、夏の食欲のない時でも食べやすく、胃腸にも優しい料理になるのだと矢嶋さんは教えてくれた。
夏は体調に合わせた食事を
暑い日が続くと食欲がなくなるものだが、体力を維持するためには、きちんと栄養の摂れる食事をしなければならない。「そのときどきの体調に合った料理を食べることが大事」と、矢嶋さんは話す。
「冷たい水分を摂りすぎてお腹の調子が悪くなった人は、ショウガやシナモンを効かせた温かい飲み物やスープを取り、胃腸の回復を待ちましょう。インドカレーなども良いですね。暑さによって食欲が出ない人は、ほどよく冷えた『すり流し』や『ガスパチョ』、山形の『だし』など、多くの素材を使いながらも喉越しの良さを考えた料理がおすすめです」。
さらに、食欲増進には薬味やスパイスなどを使うことも効果的で、味噌や梅干し、純米酢など滋養の摂れるものを使うことも良いとのこと。
この夏は、自分の身体の状態を見極めながら“旬”の野菜の力を上手に取り入れた料理に挑戦してみてはいかがだろうか。