「春野菜 アスパラガス」
今回は、東京・神楽坂で全国の“旬”野菜を取り揃える八百屋「瑞花」を営みながら、人を元気にする食について伝えている矢嶋文子さんに、今の季節に美味しい「アスパラガス」の目利き方法や食べ方を語ってもらった。
二十四節気で考える“旬”野菜
日本の季節の移り変わりの様子をほどよく表現しているのが、一年を太陽の動きに合わせて24の時期に区分する「二十四節気(にじゅうしせっき)」という暦。植物である野菜の“旬”も、二十四節気とともに変わっていくと矢嶋さんは考える。
矢嶋さんが捉える“旬”とはその野菜が最も美味しくなる時期のこと。そしてこの最も美味しい時期とは、露地物の野菜を基準にして捉えている。
一つの畑での野菜の“旬”は二十四節気とともに二週間サイクルで変わっていき、南北に長い日本では、野菜の“旬”が徐々に南から北へとリレーしているとのことだ。
二十四節気での春は、2月4日ごろの「立春」から始まり「雨水」「啓蟄」「春分」「清明」「穀雨」と5月上旬までの期間を指す。この時期はどんな野菜が“旬”を迎えるのだろうか。
「春は、冬を越した植物たちや種を撒いた植物たちが芽吹く季節。桜が咲き始めると“芽吹き野菜”といわれるアスパラガスや筍が出てきます。早春に発芽した双葉の中で、お日様を浴びていち早くスルスルとツルを伸ばして成長し、豆科の植物のきぬさや、スナップえんどう、グリーンピース、いんげんなどが順番に育っていきます。また、身体は真冬の間に溜まった老廃物を一生懸命流そうとしているので、苦味のある山菜の刺激や、酸っぱいものや生のキャベツなど葉物を美味しく感じますよ」と矢嶋さんは話す。
アスパラガスの目利き術!美味しいアスパラガスを選ぶには
芽吹きの季節に美味しくなるアスパラガス。“旬” の時期は早くも2月の下旬より九州から始まって北上し、5月には北海道産のものが絶品だと矢嶋さんは話す。
・茎の根元の切り口が正円
・穂先が柔らかくキュッと閉じている
・側面についている鱗片(ハカマ)が正三角形で均等に並んでいる
アスパラガスは、細いものと太いものあるが、太さは美味しさに大差なく、各人の好みとのこと。ただ、太い方が柔らかく感じることもあるという。
「アスパラガスは新しいほど美味しいので、買ってきたらその日に食べるのが一番。冷蔵庫で保存する時は、底に少し水を入れたポリ袋に立てて入れておくといいですよ」と矢嶋さん。
芽吹いた若芽をいただくアスパラガス
“旬”を迎えたアスパラガスのおすすめの調理方法を矢嶋さんに伺った。
「春は身体が酸味を求める季節なので、柑橘や白ワインビネガーの酸味が良く効いたドレッシングを合わせて食べるのがおすすめです。香りも爽やかで、身体にしみる味わいが楽しめますよ」。
その野菜の本当の味わいを楽しみたいなら、しっかりと茹でるのがポイントだという。“旬”の野菜はそれ自体が美味しいので、調理はシンプルに素材の味を楽しむのがおすすめだと矢嶋さんは教えてくれた。
“旬” は身体が求める美味しさ
矢嶋さんが営む八百屋「瑞花」には、全国各地から彼女の目利きで選んだ “旬”の野菜が並んでいる。
“旬”野菜は味が深く栄養価も高いだけでなく、それを食べることで身体が自然のリズムを取り戻すことができるものだと矢嶋さんは話す。
「その時期に身体が欲しているものを含んでいるのが“旬”の魅力。“美味しい”という感覚は表面的な味覚にとどまらず、そのとき身体に必要なものが含まれているからこそ一層強く感じられるのでしょう。人の身体も野菜も季節とともに移り変わるから、その季節に育まれる野菜を食べると身体の調子が整い元気になりますよ」。