紫波の小さな醸造所生まれ。りんごのホップサイダー
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紫波サイダリー「ホップサイダー」について、おすすめポイントをご紹介しよう。
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りんごとホップの爽やかな香り
紫波サイダリーのホップサイダーの特長は、なんといってもその香り。りんごの豊潤さにホップが加わることで、とても爽やか。キリリとドライな口当たりなので食事にも合わせやすく、様々なシーンで楽しめるお酒だ。クラフトビールが好きな方や、少し甘みのあるお酒が好きな女性など、幅広く楽しんでいただける。
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紫波の風景をイメージしたラベルデザイン
原材料となるりんごはすべて紫波町産。町内の地区ごとに仕込みをおこなうため、その地区にちなんだ商品名が付けられている。ラベルのデザインはそれぞれの地区の特色を表現しているといい、自然の豊かさや地域の歴史が感じられる。ぜひ一度、紫波を訪れたくなる、そんな魅力的なデザインだ。
紫波町で出会った美味しいりんごたち
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紫波サイダリーは、岩手県紫波町の田園風景広がる里の中にある小さな醸造所。アメリカ・コロラド州からの移住者であるハワード・ドナルド・ジェファーソンさんが2019年に設立したばかりだ。
岩手県のりんごの生産量は全国3位、紫波町もりんご栽培に好適な地域である。町内には多くのりんご農園があり、地区ごとに様々な品種が栽培されている。ハワードさんが、妻のさおりさんの故郷であるこの紫波町に移住してきたのが2006年。当時、英語教員をしていたハワードさんは、地元産のりんごの美味しさに驚いたという。
「こんなに美味しいりんごがあるのに、どうして誰もサイダーをつくっていないんだろう?」という疑問が芽生え、それならば自分で作ってみよう、と自ら醸造所を立ち上げることにしたそうだ。
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醸造責任者は、同じくアメリカからの移住者で英語教員をしていたミカ・ワレニウスさんが勤めることとなった。ミカさんはワインやビールづくりが盛んなシアトル出身。日本で生活するなか、自身もいつか酒造りに携わりたいと考えていたところ、ハワードさんの計画を聞き、協力をすることに。
こうしてアメリカのサイダーの文化と、紫波町産のりんごのコラボレーションに挑戦し始めたのが2015年頃のこと。その後、長野県などりんごの産地のメーカーへ視察に行ったり、商品の開発を進めたり、醸造所の立ち上げまでは数年の月日を要したそうだ。
地区ごとに異なるりんごの個性を楽しむ
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ミカさんに、紫波サイダリーの醸造所を案内していただいた。ホップサイダーは、原材料のりんごに酵母とホップを加えて発酵させたアルコール飲料。原材料に使うりんごはもちろん紫波町産のりんご100%だ。町内でりんごの収穫が始まる9月から冬の時期までは、ホップサイダーの仕込みのピークで、小さな醸造所に山のようなりんごが運ばれてくる。
りんごは一つひとつ丁寧に検品を行った後、洗浄をし、果汁を絞りジュースにする。そこに酵母、ホップを加えて、糖度やアルコール分、炭酸ガスなどを確認しながら発酵させていく。その後、ろ過して瓶詰をおこなうと完成だ。一連の作業は小さな醸造所の中で、ミカさんたち数名の手作業ですべておこなっているという。
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紫波サイダリーでは、紫波町内の地区ごとのりんごを分けて仕込み、それぞれを商品化している。同じ紫波町内でも、地区により少しずつ環境が異なり、その地区のりんごの特長を生かしたサイダーづくりをしているのだ。
例えば紫波町の長岡地区のりんごでつくられた商品「ロングヒルホップサイダー」は、やや甘口でホップの苦さも効いたフルボディ。そのほか古館地区のりんごを使った「オールドマナー」は、りんごとホップのバランスが絶妙にとれたラガービール感覚の味わい、赤沢地区の「レッド・グレン」はセゾン酵母で仕込んだ、シトラスとハーブを思わせるドライな味わい。
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仕込みの時期によって収穫されるりんごの品種も少しずつ変わるため、その違いを味わうのも楽しみ方の一つだとミカさんは教えてくれた。
「地元のりんご農家の方々が美味しくりんごをつくってくれるので、僕たちはそれを丁寧にお酒にしています。美味しい素材を使うから、美味しいサイダーができるんです」。
小さな醸造所発、世界に向けたサイダーづくりの挑戦
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試行錯誤を重ね完成したホップサイダーは、地元の道の駅や、マルシェなどでも販売されており、町のお土産としても人気だという。
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紫波町といえば、行政と民間企業が一体となりまちづくりの推進が行われている。町のシンボルにもなっている、町役場や図書館などと民間施設の官民複合開発「オガール」エリアで開催されるイベントなどでは、ハワードさんとミカさんも商品を販売し、お客さんとの交流をも欠かさない。
また、現在は、国内では珍しい蜂蜜と水と酵母を発酵させてつくる「ミード」という蜂蜜酒など、新商品の開発にも積極的に取り組んでいる。
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「ホップサイダーを通じて、紫波町の美味しいりんごを全国に発信していきたいです」と、ミカさん。いつか、故郷であるアメリカや、世界に向けて、紫波のりんごでつくったお酒を届けたいと語ってくれた。
小さな醸造所で生まれた、世界に向けた挑戦はまだまだ始まったばかり。ぜひ一度、紫波に想いを馳せ、味わっていただきたい。
取材協力:紫波町役場 企画総務部企画課