地場産品を無駄なく使う 袋井市に根づく“おいしい給食”
地産地消の給食が抱える食品ロス問題
静岡県袋井市では、2007年から市内の小中学校に向けて「地産地消」をテーマにした給食を提供しています。袋井市教育委員会が事業を先導しており、給食センターや生産者などを取りまとめています。使う食材は、地元でとれたじゃがいも、にんじん、たまねぎ、豚肉など。2013年は90gほどだった「献立における1食あたりの野菜使用量」も、その5年後には、105gまで増加しました。
地場産品は全量買い取りを徹底。生産者をサポートする狙いもありますが、事業を進めていくうえで課題も見つかりました。それは調理の過程で出る「廃棄野菜」。袋井市教育委員会の石塚浩司さんは次のように話します。
「全量買い取りなので、どうしても規格外の野菜が含まれます。小さすぎたり、形状がいびつだったりすると、廃棄せざるをえませんでした。また、夏休み中は給食が不要になるので、丸ごと1か月分の野菜が余ってしまいます」
廃棄された野菜を調査したところ、年間3,000kg程度の食品ロスが出ていることがわかりました。どうすれば地場産品を無駄なく給食に活かせるのか……。2015年、おいしい給食課の挑戦がはじまりました。
規格外野菜を使ったレシピが人気メニューに
おいしい給食課は、まず夏休み中に余ってしまう野菜に着目。市内に倉庫やプレハブ冷蔵庫といった保存のための施設を整備しました。市内にある南部倉庫では約4,000kgの玉ねぎが、北部倉庫には約500kgのじゃがいもが備蓄されています。
食材を無題にしないように野菜の下処理工程も変更。例えば、葉物野菜は葉を一枚一枚剥いて、茎の部分まで使うようになりました。
規格外の玉ねぎは形がわからなくなるまで炒めてペースト状に。いつでも使えるように冷凍保存されているので、調理工程の短縮にもつながります。同じ目的で、規格外野菜を使った切り干し大根やトマトピューレも作成しています。
「廃棄野菜の活用と、美味しい給食を両立させるように努めています」と、石塚さん。レシピ開発も積極的で、前述の切り干し大根を使った「切り干し大根のソース炒め」や「切り干し大根の春巻き」は人気メニューになっています。
そのほか、調理で出た野菜くずを堆肥化して肥料に利用。この肥料で栽培された野菜は、給食に使われます。また、給食で使用した油をバイオディーゼル燃料に加工され、市内を走るごみ収集車や近隣大学の通学バスなどに活用されています。
「今では、ほとんどの野菜を消費できています。今後は、これまでの取り組みを数値で見えるかたちで発信できていければ。キーワードは『CO2』。地場産品を使った場合や、野菜くずを堆肥化した際に削減されるCO2排出量の調査を進めています」
「子どもたちに美味しい給食を」。そんな思いからはじまった袋井市の取り組みは、地域にしっかりと根づき、今さらなる広がりを見せようとしています。
後に石塚さんが袋井市の給食レシピを教えてくれました。もちろん、規格外野菜を使わなくてもOK! 袋井市の新たな食習慣をぜひ味わってみてください。