食べることで海を守る。サステナブルな水産物を紹介する「ブルーシーフードガイド」

東京都
「デニーズ」で食べられるブルーシーフードを使った朝定食
(取材月: April 2025)
私達の食卓に欠かせない魚介類。しかしそんな海の恵みが枯渇してきているという問題は、2015年にSDGsが採択されてから特に注目を集めるようになりました。100年後の豊かな海を楽しめるように、私達ができることの一つが食べる水産物を選ぶこと。どんな水産物を選べばいいのか、その基準を示してくれるのが「ブルーシーフードガイド」です。リストはどのように選定しているのか。今回は「ブルーシーフードガイド」を発行している一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局にお話を聞きました。

「食べないで」じゃなく「食べて」という楽しい提案を

一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局の水谷さんと廣川さん

「ブルーシーフードガイド」は、「おいしく、たのしく、地球にやさしく。」をモットーにセイラーズフォーザシーが評価・選定した、食べても水産資源を脅かさない魚介類を掲載したリスト。積極的に食べることで、海を守ることができるというものです。リストに載っている水産物は、科学的根拠に基づいた基準を満たしています。

一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局の水谷さん

「資源量が豊富にあることはもちろん大前提ですが、大事なのはそれだけではありません。ブルーシーフードガイドでは、資源量が充分にあるかどうかの検証に加えて、生態系への影響や、漁業の管理体制などもしっかり検証しています。」と話すのは、セイラーズフォーザシーの水谷さん。

一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局の廣川さん

例えば資源量が十分にある魚種でも、底引き網で獲られた場合は他の希少な魚種も一緒に漁獲されている可能性があります。誰がどこでどのように獲ったかということも、水産資源を未来へつなげていくためには重要なのです。水谷さんと一緒にプロジェクトに関わる廣川さんも「日本は世界でも魚介類の消費量が多く、輸入量も世界3位。日本の消費が変われば、世界の漁業に大きな影響を与えることができるんです」と教えてくれた。

ブルーシーフードガイド全国版

「『S』はアメリカのモントレーベイ水族館が発行している『シーフードウォッチ』という基準に準じています。また『M』はMSC(Marine Stewardship Council)、『A』はASC(Aquaculture Stewardship Council)という国際的な漁業認証と養殖認証のことで、漁業者が取得するものになります。とても厳しいうえに、認定にはかなりのお金と時間がかかるので、日本の業者さんで取得を目指す人はまだまだ少ない。そこで日本向けには我々独自の基準を策定し、『B』(ブルーシーフードチョイス)として採用しています」。

選んで食べる。ブルーシーフードガイドの活用法

セイラーズフォーザシーは、2004年にアメリカで設立された海洋環境改善を目的としたNGO団体。日本支局はブルーシーフードガイドの発行以外に「クリーンレガッタ」という環境に優しいヨットレースプログラムの運営や、「KELP」という子どもの環境教育のためのカリキュラムを無償で提供しています。また政策提言として漁業に関する法律の改定を提言するなどの大きな役割も果たしています。

ブルーシーフードガイドのロゴ

ブルーシーフードガイドの全国版ができたのは2013年のこと。当時はSDGsもなく、ガイドを発行してもなかなか相手にされなかったと水谷さんは話します。

「世界中には社会的に認知された水産資源のガイドがあるところが多いのですが、日本にはなかったんです。ならば私達がつくろうということでプロジェクトが始まりました。いまではプロジェクトに賛同してくださるブルーシーフードパートナーさんが約80ほどいらっしゃいます」。

ブルーシーフードの印になるロゴ

ブルーシーフードパートナーは水産業者から大手外食チェーンやホテル、飲食店、給食業者、鮮魚店まで多彩。優先的にブルーシーフードを仕入れ、普及するための一翼を担っています。

ブルーシーフードガイドはセイラーズフォーザシーのWebサイトでも公開。消費者もリストを参考に食べる水産物を選ぶことができます。ガイドによるとカツオ、ホタテなどは日本で獲れたものであれば基準を満たしているので、商品表示などで産地を確認できれば合格。事業者レベルで認定されているものは見つけるのがまだまだ難しいですが、ブルーシーフードパートナーのホテルや飲食店などではブルーシーフードのロゴが表示されているので、利用する時に注目してほしいと水谷さん。

©2025 南 俊夫

「日本の漁獲量は現在、1984年のピークから比べて半分以下になっています。でも枯渇している水産資源を休ませることで、資源を復活させることができる。ブルーシーフードガイドは水産物を『食べないで』というのではなく、積極的に『選んで食べる』ことで水産資源を守ろうと呼びかける、ポジティブな取り組み。ぜひ生活に取り入れてほしいです」。

地方版も続々と。ご当地ブルーシーフードガイド

企業だけでなく、地方自治体もブルーシーフードガイドの取り組みに賛同。全国版だけでなく、各地のご当地ブルーシーフードガイドが続々と誕生しています。2020年には三重県版、2022年に東京都版、2023年に広島県版、そして2024年に京都府版をリリース。これらの地方版は水産資源の保護につながるだけでなく、土地ごとにおすすめの水産物のガイドとしても楽しめます。

地方版ブルーシーフードガイド

「各地の水産課と連携することで、その土地に特化した水産データに基づいたガイドをつくることができます。将来的には海のある都道府県すべてのガイドをつくりたい。自分の子どもや孫もおいしいお寿司が食べられるように。みなさんにブルーシーフードガイドを活用していただけたらうれしいです」。

買い物をする時、外食で魚を食べる時。その魚がどこから来たのか、持続可能かどうか。まずは確認してみることから始めてみてはどうでしょうか。

Writer : ASAKO INOUE
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Photographer : SHIOMI KITAURA, SATOSHI TACHIBANA
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。

一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局

URL https://sailorsforthesea.jp/

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japan-guide.com https://www.japan-guide.com/e/e2164.html
Japan Travel https://ja.japantravel.com/tokyo
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