栄養満点の酒粕を現代の生活へ。廃棄リスクのある食材を宝物に変えた「発酵マヨ」
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<「発酵マヨ」のここに注目>
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・酒蔵で余ってしまう酒粕を手軽に使えるマヨネーズ風調味料に
・原料はすべて植物由来。ビーガンや卵アレルギーでも食べられる
・食品添加物不使用。みりんや酢など酒粕以外の原料も厳選
・多彩なフレーバー展開で使い分ける楽しさもあり
「世の中で廃棄リスクのあるものを宝物にする」ための小さな加工場

稲とアガベ代表・岡住修兵さんが、食品加工場「SANABURI FACTORY」をオープンさせたのは2022年のこと。地元生産者から「コロナ禍で余ってしまったリンゴをなんとかしたい」と相談を受けた岡住さんは、廃棄リスクのある食材を活用できる加工場を作ろうと思い立ちます。
「コロナのような社会的リスクにさらされた時に余ってしまうものや、規格外とされたり傷があったりで価値がつかない作物。こうした廃棄リスクのある食材を“宝物”に変える加工場をつくりたいね、というのがスタートでした。小さい工場ですが、いろんな商品が作れるんですよ」
年間400tのロス。酒粕を家庭にカムバックさせる「発酵マヨ」

そんな「SANABURI FACTORY」の第1弾商品として生まれたのが、酒粕を使った「発酵マヨ」。日本酒を作る過程でできる酒粕は風味豊かな栄養食で、腸内環境を整えてくれる食物繊維や、他にたんぱく質・ビタミンB群・ミネラルなど、美容健康に良い成分がたくさん含まれていることがわかっています。こんなに素晴らしい食材であるにも関わらず、昔は粕汁などにして家庭で食べられていましたが、現在は食べる人が少なくなり、秋田県内だけでも年間400tもの酒粕が廃棄されているという実情があります。

「たくさんの酒蔵さんが酒粕の行き場に困っています。昔は酒粕を売った金額だけで従業員の給料がまかなえるほどの商品だったのが、家庭での需要が減って価値が落ちてしまった。飼料や肥料用に販売しても1kgで10円にしかならず、それでも余って廃棄にお金がかかることも。酒蔵さんにとっては辛い世界です。だから酒粕を現代の家庭でも使いやすい形にして、酒蔵さんの未来につながるようなプロダクトを作ろうと思ったんです」
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「発酵マヨ」の開発は、食のクリエイティブディレクターTETOTETOの井上豪希シェフが担当。アイデアの元は「チューヤン」という中国の隠し味的調味料でしたが、レシピを少し変えるとマヨネーズ風味になることを発見。それならば、と馴染みのある「発酵マヨ」に仕上げました。材料はすべて植物性なので、ビーガンや卵アレルギーの人も食べられて、使っている酢やみりんも無添加のものを厳選。現在は稲とアガベの酒粕を使っていますが「ゆくゆくは秋田県内の酒蔵さんの酒粕も使いたい」と、岡住さんは話します。
「フレーバーはプレーン、からし、トリュフ、青のり。あとケチャップとカスタードというのもあります。気分や料理に合わせて使い分けてもらえたら。酒粕が苦手な方にも好評で、東京の取扱店では欠品が出るほど人気でうれしいです。また最初のアイデアだったチューニャンも開発中なので、家庭の新定番調味料になったらいいなと思っています」
ちなみに岡住さんおすすめの食べ方は、魚介類と合わせること。カニカマなどの練り物につけたり、エビマヨ調理に使ったりするととても美味しくできるそうです。
男鹿の未来を見据えて。喜んでくれる人がいる限り続けていく
今後も酒粕の可能性を探っていきたいという岡住さん。すべては喜んでくれる人のため、そして男鹿市まちの未来をつくる1つのステップだと話します。
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「食品ロスをなくすためというより、目の前の人が幸せになるかだと思うんです。酒粕が価値になれば酒蔵さんが喜んでくれて、美味しいものができたら食べる人が喜んでくれる。それが僕のモチベーションですね。また高齢化と人口減少が進む男鹿のまちにとって、“日本酒”はキーになると思っています。僕がいま作っているコンテンツを土台にして『男鹿=日本酒のまち』という文化が根付けば、100年先もこのまちは残っていくことができる。僕がいなくなって空からまちを見た時に、後世の人がうれしそうに生活してくれていたら、こんなにうれしいことはないじゃないですか」
酒蔵さんの喜ぶ顔と男鹿の未来への想いが詰まった「発酵マヨ」。食べれば酒粕の概念が変わるかもしれませんよ。