会津若松のおいしいものを詰め込んで。トマト農家が作るアップサイクル・ビール
東京のサラリーマンからトマト農家、そしてビール醸造家へ
東京でスーパーマーケットのバイヤーをしていた大友さんが、トマト農園「ファーム大友」を始めたのは2015年の夏。聞けば、トマトは苦手な野菜とのこと。
「会津若松のトマトを食べたらすごくおいしかったんです。いまでも苦手ですが、自分のつくったトマトは最高においしいです」と、大友さん。
農家を続けるうちに目の当たりにしたのが、売り物にならず廃棄される野菜やフルーツの存在です。大友さんはそういったロスになる農作物を生かす方法として、クラフトビール造りに着地。東北のブルワリーでビール醸造を学んだ後、独自のブランド「CheapChic brewing」をスタートしました。
「周囲にも米や果樹などさまざまな農家さんがいて、さまざまな食材が廃棄されています。僕はロスになるトマトでジュースやソースを作っていたのですが、気軽に飲めて愛好家の多いビールのほうがより多くの人に届くと思ったんです」。
トマトやアスパラガス、猪苗代湖の厄介者もビールに
大友さんが現在構想中のアップサイクル・ビールは3種類。一つはもちろん自分の農園でロスになるトマトを使った、濁りタイプでフルーティなヘイジーIPA。あとはアスパラガスと、“いなびし”という聞きなれない水草です。
「アスパラガスは出荷時に長さを揃えるため下の部分を切り落とすんですが、この部分が一番おいしいのでビールに使いたいなと。“いなびし”は猪苗代湖に発生する水草で、水質を悪くする厄介者。意外にもいなびしで作ったお茶がビールと相性が良さそうなので、おもしろいビールができそうです」。
大友さんが大事にしているのが、ロスになる材料であってもきちんと買い取ること。農家さんの収入を上げ、農業全体の助けになることがアップサイクル・ビールの役割だからです。
「食料自給率をあげようと言いながら農業人口は減っている。それは農業がお金を稼げていないからだと思うんです。本来なら野菜の価値はもっと高くていいし、廃棄するものであってもちゃんとお金に換えたい。僕らにとってもそれが、絶対おいしいビールに仕上げるというモチベーションになります」。
ビールを通じて会津若松と農業の魅力を発信したい
大友さんにはアップサイクル・ビールを通じて伝えたい想いがたくさんあります。
「ビールを通じてローカルの文化や風習を伝えることで、観光の人でも移住者でも、外からここに入ってきてくれる人を増やしたい。同時に農業の楽しさと価値も伝えられたら。地元の人は当たり前だと思っていても、外からみたらおもしろいものがこのまちにはたくさんあるので」。
まちと農業の未来をつくるアップサイクル・ビールはどんな味わいがするのか、楽しみに待ちたいです。