1.八丈島酒造の「焼酎」
江戸時代に流人によって焼酎づくりが伝えられたという八丈島。いまも島内で4社の焼酎蔵元が稼動しています。その中で最も古い蔵元として100年以上の歴史を誇るのが八丈島酒造です。
「古くから島の人は何か祝いの席や人が集まる機会があるたびに酒を酌み交わす慣習があって、その場に欠かせないのが焼酎です。少し前までは島の各家庭のかめに焼酎を量り売りしていたこともあるぐらい。島の暮らしと深く結びついています」。
そう語ってくれたのは、八丈島酒造の3代目、奥山清満さん。主力銘柄の芋焼酎「八重椿」の他、芋と麦のブレンド比率を変えた銘柄など、計4種の焼酎をつくっている。昔ながらの製法で、すべての工程が現在も丁寧に手作業でおこなわれています。
奥山さんが、焼酎づくりにおいて何よりもこだわっているのが主原料である芋と水。使用する芋はコガネセンガンや紫芋など、八丈島で栽培された品種のみ。
四方を海に囲まれ、八丈富士と三原山に挟まれた土壌には、海水からのミネラルが豊富に注がれるため、養分をしっかりと蓄えた味の濃い芋が育ちます。
東京諸島の焼酎の特長は、麦麹をベースにしていること。一般的に芋焼酎は米麹を用いて仕込みますが、島では米が貴重な作物であったことから、代わりに麦麹を用いるのが伝統となっています。
「麦麹を使っているので、さわやかで飲みやすい口当たりでありながら、原料の八丈島の芋の良さもしっかりと出る。個性がありながらも飲みやすいことが魅力ですね」。
参考記事:島の景色と人が滲む本格焼酎、東京の島酒
2.宮原新島酒蒸留所の「焼酎」
伊豆諸島の真ん中に位置する新島。人口約2000人が暮らす新島で唯一の蔵元が、1926年創業の株式会社宮原。
代表を務めるのは3代目の宮原淳さん。先代から引き継いだ当初は母親と二人で製造していましたが、10年ほど前から、仕込み、蒸留、瓶詰め、ラベル貼りなど、製造工程の全てをほぼ1人で担当してきました。現在では社員が1人加わったものの、手作業での少量生産を貫いています。
東京諸島でつくられる焼酎については、その稀少性と独特の味わいから、幻の焼酎として、近年、「東京の島酒」と島外からの関心が高まっています。宮原さんは東京諸島の蔵元で組織される東京七島酒造組合の活動として、島酒文化の今後を見据え、島外でもこれまで以上に島酒の認知を高めようと普及活動にも力を注いでいます。
「すっきりとした味わいの島酒は、ロックでも、お湯割りでも、水割りでも、ソーダ割りでも、年間を通じて、様々なシーンで楽しめるのが強み。それぞれ小規模で独立心の強い蔵元なこともあって、実験的な焼酎づくりにも積極的なので、これからもっと島酒が面白くなると思いますよ」。
宮原新島酒蒸留所では、芋焼酎のほか、麦焼酎や米焼酎など6種の焼酎を製造しています。看板商品は、新島の飲食店であれば必ずや目にする焼酎「嶋自慢」。芋と麦の2種類があり、麦焼酎の方は国産大麦を使用し、軽い麦の香ばしさ、丸い口当たりと甘み。芋焼酎の方は麦麹の香ばしさとともにベニハルカの甘さが味わえます。
参考記事:島の景色と人が滲む本格焼酎、東京の島酒
3.新島水産加工業協同組合の「くさや」
伊豆諸島の代表的な郷土料理である発酵食品「くさや」。日本の食品の中で一番匂いが強いともいわれるくさやですが、製造方法はいたってシンプル。材料は魚と塩とくさや液のみ。生の魚をさばき、くさや液と塩を混ぜた液体に漬け、乾燥させれば完成です。できあがったくさやは、独特な香りとともに、濃厚な旨みが感じられます。
くさや発祥の地といわれ、国内生産量の大半を占める新島で、くさや生産者たちが集まってできたのが、新島水産加工業協同組合です。生産者の一人、池太商店の池村遼太さんは、味の決め手となるのは「くさや液」といいます。
新島でくさやづくりが産業として始まったのは江戸時代と言われています。当時、塩が貴重であったことから、くさや液では一度使った塩水を捨てずに、水と塩を継ぎ足しながら使われ続けてきました。昔は、各家庭でくさや液を持っていて、嫁入り道具の一つにもなっていたそうです。
「同じくさや液はもう二度とつくれないですし、生産者ごとに使い方や保存方法が異なるので、菌の量や塩分量も変わって、それぞれのくさや液に個性があります」と池村さん。
長い年月をかけてうまれた、島の伝統食「くさや」。ぜひ島の歴史が詰まった旨みを噛みしめてみてはいかがでしょうか。
4.TARO’sの「青唐辛子味噌」
東京から約120㎞南、伊豆諸島最大の島、大島で家庭の味として長年親しまれてきたのが、島の特産品である青唐辛子を味噌と甘辛く煮てつくる青唐辛子味噌。それを島外でも食べられるお土産として商品化したのが、TARO’sの白井三保子さんです。
「義母のつくる青唐辛子味噌が、昔からご近所でもおいしいと評判だったんです。私も会社を退職し、自宅で過ごす時間が増えたことで、一緒につくるようになりました。もともとは、ご近所にお裾分けという形で差し上げていたのですが、ご縁があって、2007年に東海汽船の売店で販売することになったんです」と、白井さん。
販売当初、容器は既製品のプリンカップに透明な蓋、ラベルも自宅で印刷と、手探りでのスタートでしたが、いつしか大島土産として定着。現在の商品パッケージは、東京にあるデザイン学校の生徒たちのアイデアによるもの。
「東京諸島の特産品をデザインリニューアルするプロジェクトの一環で、いくつか提案をいただいたんです。原宿までプレゼンを聞きに行き、このデザインを選びました。かわいくて気に入っています」。
大島の地元の味が楽しめる、青唐辛子味噌。白井さんにおすすめの食べ方を教えてもらいました。
「定番ですが、ごはんに載せるのは間違いなくおいしいです。あとはバターやマーガリンを塗ったうえにお味噌を薄く塗りトーストしてください。マヨネーズと混ぜたディップを野菜に合わせるのもおすすめです。焼きおにぎりにしても美味しいです。いろいろな食材に合わせやすいので、お好みの食べ方で楽しんでくださいね」。
5.青ヶ島製塩事業所の「ひんぎゃの塩」
伊豆諸島最南端に位置する青ヶ島は、天候次第で島外との往来も絶たれてしまう絶海の孤島。この島で、島の特色を生かした塩づくりに情熱をかたむけているのが、青ヶ島製塩事業所の山田アリサさんです。
「青ヶ島には、『ひんぎゃ』と呼ばれる火山の噴気孔があります。通常、火山の蒸気には有毒なガスが含まれているのですが、青ヶ島の蒸気はほとんど水蒸気。これは世界的にも珍しいそうです。このひんぎゃの地熱蒸気を生かして製塩をおこなっています」と、山田さん。
ひんぎゃによる塩づくりは、青ヶ島の焼酎「青酎」以外にも島の特産品をつくるために、1999年に村営事業所設立を機にはじまりました。当時、主婦だった山田さんですが、釜場の過酷な仕事に男性が1日で音をあげたという話に興味が湧き、女性も対象とする求人が出るなり応募。
「最初は体調を崩してしまうこともあったのですが、続けていく中で自信がついていき、この塩に愛着を持つようになりました。2011年に民営化することが決まった際、この塩に一番情熱を持っているのは自分だと思い、経営に手を挙げました」。
製塩工程では、約60℃の低温でゆっくり結晶化させるなど、1ヵ月かけて製造します。通常の塩より粒が大きく、カルシウムとマグネシウムも多く含まれ、ほのかに甘みが感じられる優しい味わいです。
「塩むすびはもちろん、素材の旨みを引き出すのでいろいろなものにぜひ合わせてみてください。私のお気に入りは、紫蘇の葉とひんぎゃの塩を交互に重ね合わせた塩漬け。おにぎりに巻くと絶品です」。
ひんぎゃの塩を世の中にもっと広めたいという想いは今も変わらない、という山田さん。新たな商品として、液体タイプの「味わい水塩」を開発するなど、精力的な活動を続けています。
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