“旬”をあじわう季節のお菓子「ソラマメ」
今回は、そんなソラマメの“旬”の時期や目利きポイントと、ソラマメを使った栄養満点の「春野菜のケークサレ」のレシピをご紹介しよう。
太陽の恵みを受けて 空に向かって実る豆
ソラマメの目利き方法やおすすめの食べ方についてお話をうかがうため、東京都内を中心に店舗を展開し「新鮮・おいしい・適正価格」の野菜を販売する八百屋「旬八青果店」の五反田店を訪ねた。
「ソラマメは、さやが空に向かって実るのでそう名付けられたと言われています。形も愛らしく、味も美味しいので実は私も一番好きな野菜なんです」と、旬八青果店のバイヤー、松根拓乃さんが話してくれた。畑で撮影した写真を見せてもらうと、垣根のように植えられたソラマメの木から、たしかに勢い良く空に向かってさやが実っている。
ソラマメや実エンドウなどの春の豆類の多くは、12~1月頃に鹿児島県から出荷が始まる。その後、愛媛県、茨城県と桜前線のように徐々に産地が北上していき、最後は青森県にまで到達するという。続いて、美味しいソラマメの目利きの方法についても教えていただいた。
「まずはさやの表面にうぶ毛がついていると鮮度が良い証拠です。さやの緑色が濃く、形がぷっくりしていて、さやの外側からも中の実の形が分かるようなものが美味しいですよ」と、松根さん。
粒の入り数で豆の味は変わらないそう。比較的お手頃価格で手に入ることの多い、豆の数の少ない小さめのソラマメをあえて選ぶのも、気軽に食卓に取り入れる工夫だという。
知る人ぞ知るソラマメのさらなる魅力
ソラマメの実はどのように食べるとより美味しいのか。まず意外と知られていないのが、薄皮が食べられるということ。松根さんいわく、さやとの接合部がまだ緑色の若い豆は薄皮ごと食べられ、食感はしっとり。接合部が茶色くしっかり熟した豆は、薄皮が固くなっているため剥いたほうが食べやすく、食感はホクホクとして味が濃いという。
「2~3ヶ月ほどと短い“旬”の期間ですが、そのなかでも変化があるのがソラマメの面白いところ。味や食感の移り変わりをぜひ楽しんでいただきたいです」。
松根さんのおすすめの食べ方は“ソラマメの丸焼き”。さやのまま、オーブントースターやグリルで真っ黒になるまで焼くと、中の豆まで火が通るのだ。塩茹でにする場合は、豆とさやとの接合部に包丁で切り込みを入れて。そうすることで豆の中まで塩味が入り、美味しく食べることができる。さらに知られていないのが、さやの内側の白いワタの部分も食べられることだと、松根さんは教えてくれた。
「ワタの部分は実は栄養があるんです。豆の接合部がまだ緑色の若い実の場合、スプーンですくってワタごと一緒に食べることがおすすめです」。
多彩な春野菜をケーキに焼き込む
お菓子研究家のmarimoさんに、ソラマメの魅力を生かしたお菓子を考案していただいた。今回は「春野菜のケークサレ」。味わいも栄養もバランスのとれた一品だ。
ケークサレとはフランス語で「塩味のケーキ」という意味。砂糖を使わずに野菜やチーズなどを混ぜ込んだ甘くないケーキのことを指す。甘くないため、味はケーキというよりも惣菜パンに近いが、形はパウンド型を使いケーキのように焼くのが一般的。
「冷めても美味しいので、気候も穏やかなこの季節、軽食として外に持ち運んで食べるのにもぴったりなんですよ」と、marimoさん。
ケークサレはケーキのようにカットした断面に様々な具材が現れるのが特徴のため、彩りの良い食材が適しているという。様々な食材を入れることで、見た目も華やかで栄養のバランスもとれたお菓子になる。
今回は、ソラマメに加えて新にんじん、新たまねぎ、グリーンピースなどの春野菜をたっぷり使った「春野菜のケークサレ」のレシピを考案していただいた。
オーブンで焼くお菓子の場合は、ソラマメやグリーンピースなどの豆類は下茹でせずに生地に直接混ぜこんで焼く。人参や玉ねぎなどの野菜も、オーブンで焼く間に火が通るため、生のまま使うことができる。
豆類は空気にふれると風味が落ちやすいため、さや付きのまま購入し、調理の直前にさやから取り出すことがおすすめだ。
「生地にはパルメザンチーズがたっぷり入っていて、ほんのり塩気がありますので、どんな具材を入れても作ることができます。そら豆はホクホクして甘く、グリーンピースを入れると香り高いフレッシュな香りにより春を感じますよ。塩味のケーキというと、驚かれるかもしれませんが、キッシュよりも気軽に作れるお惣菜というイメージです。ぜひお試しいただければと思います」と、marimoさん。
季節の野菜を彩り豊かにたっぷりと詰め込んだ「春野菜のケークサレ」。これからの行楽の季節に、ぜひ作ってみてはいかがだろうか。
ソラマメ
情報提供:旬八青果店 バイヤー松根拓乃さん“旬”の時期
2~6月
目利きポイント
さやの表面にうぶ毛がついていること
さやの緑色が濃く、形がぷっくりしていて、
さやの外側からも中の実の形が分かるもの
美味しい食べ方
さやのまま、オーブントースターやグリルで真っ黒になるまで焼く