味も香りも多種多様に進化。日本の伝統保存食「梅干し」

梅干し
(取材月: June 2025)
長雨の続く梅雨は梅が実る季節。収穫した新鮮な梅を使って、日本各地で「梅干し」の仕込みが始まる時期でもある。平安時代中期には食べられていたという「梅干し」は、現在もなお日本人の生活に欠かせない保存食。どのような種類があり、どうやってつくられているのか。あらためてその魅力を探るべく、国産梅干しの専門店「日本橋 梅マ本舗」を訪れた。

いにしえの時代から生活に取り入れられてきた保存食

梅マ本舗

「梅干し」は梅の実を塩漬けにし、天日干しで乾燥させてつくる日本の保存食。中国原産の梅が日本に伝来したのは3世紀の終わりと言われ、「梅干し」というものが初めて書物に登場したのは平安時代中期。日持ちのする梅干しは、戦国時代には兵糧食として重宝され、江戸中期には広く庶民の食卓へ広まったと言われている。紫蘇漬けや甘い甘露梅などのバリエーションもこの頃に生まれたそうだ。

杼窪さん

「私も毎日梅干しを食べ、一粒に効果を感じています。1日2粒が目安」と話すのは代表取締役社長の杼窪さん。「梅干し効果をあげたらキリがないほど。梅は他の果実より、ずば抜けてクエン酸、ポリフェノールが豊富。クエン酸は疲労回復、ポリフェノールは菌の増殖を抑制し、健康効果、薬効を秘めています」。

梅の栽培から手掛ける日本全国のつくり手たち

梅干し

「梅干しは日本人の生活を支えてきた大切な食文化です」と話す杼窪さんは、梅干しの魅力を広く伝えようと「日本橋 梅マ本舗」を開業。国産の梅だけにこだわった梅のセレクトショップだ。店頭に並ぶ60種以上の梅干しは、杼窪さんが自ら全国の生産者を巡って厳選してきたもの。どのメーカーも原料になる梅の栽培から手掛けているため、まさに100%国産の梅干しだ。梅の産地として名高い和歌山県産のものだけでなく、鹿児島県、富山県、神奈川県、群馬県など、さまざまな産地の梅干しが一同に集まっている。

梅マ本舗

梅干しづくりはとても手間のかかる作業。6月に梅を収穫したら、一粒ずつヘタを取るいわゆる“梅仕事”を行ってから、焼酎などで消毒してから塩と一緒に漬け込む。7月になったら一粒ずつを並べて天日干しに。ちなみにこの天日干しは、梅雨明けで晴天の多い「夏の土用」(立秋の前の18日間)と呼ばれる期間に行われることから、「土用干し」と呼ばれている。こうして9月頃になると、ようやく梅干しが完成する。

みえこさん

梅干しメーカーのこだわりを「日本橋 梅マ本舗」のみえこさんが教えてくれた。「どのつくり手も梅干しづくりには並々ならぬこだわり、誇りを持っていらっしゃいます。例にあげると、富山県産、氷見稲積梅(ひみいなづみうめ)の品種でつくった「梅寿・Baiju(塩分12%)」は、メーカーが独自に定めた品質条件の92項目をクリアしないと商品化されないこだわり。農薬が検出されない梅でつくられています。メキシコ、オーストラリアから輸入したミネラル豊富な天日塩は、日本で一度水洗いして天日干ししてから使用するこだわり。梅干しの命であるクエン酸、ミネラル、酸味のバランスが取れた人気商品です」。

梅寿

トマトに唐辛子まで。変わり種も楽しいモダン梅干し

一言に梅干しと言っても、品種や製法によって味わいはさまざま。みえこさんによると塩分濃度は8〜12%くらいのものが食べやすいが、梅マ本舗では最高22%の塩っけの強いものから、減塩0〜3%の蜂蜜味、うす塩味、甘い梅干し、その他ユニークな商品まで幅広く取り揃えている。

梅レモン Hi

オリジナル商品の「梅レモン Hi(塩分8%)」は、鹿児島県産。有機栽培にこだわり、化学肥料、合成農薬の使用を極力抑え、自然の力を活用しつくった梅干しは、南高梅の品種を使用。ほんのりレモンの香りが爽やかな一品だ。

とまと梅

和歌山県産の「とまと梅(塩分8%)」は、南高梅を「優糖星(糖度12%程)」というミニトマトの品種と一緒に漬け込んだ一品。トマトの旨味とすっきりとした甘さが新感覚だ。

湘南ゴールド梅干

神奈川県小田原市の曽我の「湘南ゴールド梅干(塩分5%)」は甘酸っぱく、「メープル梅干(塩分8%)」は蜂蜜とは異なるメープルシロップに漬け込んだ甘い梅干し。曽我の梅干しは皮、果肉ともしっかりと歯ごたえのある梅干しだ。

辛子梅太子

和歌山県産の南高梅を唐辛子と一緒に漬け込んだ「辛子梅太子(塩分11%)」は、まさに明太子の梅干し版。香辛料の香りとピリッとくる辛さ、梅干しの旨味と酸味が合わさって、お酒のアテにぴったりだ。

ちょび梅

さらにユニークなものでいくと、塩分20%の梅干しを乾燥させた「ちょび梅」はインパクトのあるしょっぱさ。汗をかいた夏場の塩分補給に活躍してくれそうだ。

梅マ本舗の梅

「最近は海外からのお客様も多く、みなさん自分好みの梅干しを求めていらっしゃいます。ひと粒から買える梅干しもあるので、色々試してぜひお気に入りを見つけてください」とみえこさん。時代と共に味わいも進化している梅干し。今年の夏は、梅干しを生活に取り入れてみてはいかがだろうか。

Writer : ASAKO INOUE
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Photographer : SATOSHI TACHIBANA

日本橋 梅マ本舗

所在地 東京都中央区日本橋小伝馬町3-8
TEL 03-3666-6622
URL https://www.umema.jp/
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