食品廃棄を減らす“ナイス”なアイスクリーム「n!ce cream」
<「n!ce cream」のここに注目>
・農家から直接仕入れた、その時にしか味わえない規格外の野菜や果物を使用
・生産余剰の生乳を使用。生乳廃棄の削減に繋げている
・素材の味をそのまま活かした優しい味わい
「もったいない」を減らし、美味しいを増やしたい。「n!ce cream」が生まれたきっかけ
ポップで可愛らしいロゴが目を惹く「n!ce cream」は、“廃棄を減らして、美味しいを増やす”をコンセプトに、規格外品等を活用して作られたアイスクリーム。2023年にスイーツブランドとしてスタートしました。
「n!ce cream」を立ち上げたディレクターの岸さんは、大学在学時に愛媛県のみかん農家へボランティアに行ったことをきっかけに、農業に興味を持つように。中でも関心が高まったのは、畑で発生するフードロスでした。
大学卒業後は農業法人に勤務し、自社商品を使った加工品や農業体験の企画などに携わりますが、ここでも規格外品の発生に直面。どうにか活用できないか模索していると、近くの牧場でジェラート事業をおこなっていることを知りました。
牧場がジェラート事業を始めたきっかけは、生産余剰の生乳を活用するため。生乳は生きた牛から生産するので、需要と供給の調整が難しく、特にコロナ禍では学校給食のストップや、緊急事態宣言による外食控えもあり、生乳の廃棄量が増えていたそうです。
「私たちの野菜で捨ててしまうものを、アイスに加工してほしいとお願いしたら、引き受けてくれたんです。これが『n!ce cream』の前身です。アイスの材料でもったいないものを減らして、アイスを作る生乳でも、もったいないを減らして。これをコンセプトにしようと決めました」。
素材の味を活かした“ナイス”なアイスクリーム
「n!ce cream」は、農家から直接廃棄食材の連絡をもらい、牧場に相談してすぐに食材を手配。牧場のパティシエと試作と味見をおこないい、アイスクリームが製品化されます。食材の鮮度を保つためにも、とにかくスピードが重要です。
取材当日にご紹介いただいたのが “旬”の「マンゴーソルベ味」。まるでマンゴーをそのまま食べたような、とろっとした食感と濃厚な味わいが特長です。
使用したマンゴーは、収穫するサイズに至る前に自然落下して規格外とされたもの。落ちてしまったら傷がついてしまうし、そもそもサイズが規格を満たしていないので、通常は捨ててしまいますが、味は通常のものと変わりません。
ほかにも、瓜っぽさを少し残し、素材の味を活かした「八竜メロン味」、子どもにも人気の「いちごミルク味」など、これまでに作ったフレーバーは20種類近く。
現在はオンライン販売、イベントへの出店が中心。販売するときには、購入者と一対一で会話することを意識しているそうです。
「『n!ce cream』がどういうもので、どのような背景があるか、ただのアイスではなくてちょっとナイスなんだよ、ということをお伝えするようにしています。年配の方は私が孫世代ということもあってか取り組みを褒めてくれたり、若い方はアイスという入りやすさと、パッケージデザインに惹かれてきてくださって。もったいないを減らしていることを伝えることも大切ですが、単純に美味しいということが『n!ce cream』への入り口になってくれることがまずは重要なので、老若男女いろんな世代の方に知ってもらいたいと思っています」。
困っている人を助けられるアイスクリームに
アイスクリームを製品化する上でも、規格外品ならではの難しさがあります。
「一番難しいのは、アイスクリームとしての安定供給が難しいところ。天候条件等で規格外になってしまうものが多かったり、そうでなかったりします。収穫してみないと、どのくらいが規格外に分類されるかも分からないため、アイスクリームの材料も安定供給ではありません。いつも特定の味の在庫があるとは限らないという意味では難しいけれど、これが規格外品を使用するということであって、逆にそのプレミア感を楽しんでもらいたいです」。
だからこそ、岸さんはアイスクリーム事業として大きくしていきたいというよりは、困っている農家をちょっとでも助けられたら、というスタンス。生産者にとってマイナスにならないよう、正規品と同じ価格で買い取れる体制を整えていきたいと話します。
やりたいことがたくさんあると話す岸さんが今後目指すことは?
「昔農業ボランティアに行ったときに、子ども食堂にも行ったんですよ。満足に食事が食べられない子がいる一方、畑では食べられるのに捨てちゃう食材がある、という矛盾にモヤモヤしたこともあり、規格外品をどうにかできないかなと考えていたんです。
n!ce creamとしてもったいないを減らすことは現在できているから、それを困っている人にしっかり還元したい。それは売上なのか、物資なのか、何かを還元できるようなプロジェクトを検討しています」
味も取り組みも“ナイス”なアイスクリーム。美味しく食べて、ロス食材を救いませんか?