東北の秋の風物詩「芋煮」

芋煮といものこ汁
秋風が吹く頃、東北各地の河原やグラウンドなどでは、大鍋を囲み談笑する人々の姿が多くみられる。山形や宮城では「芋煮」、岩手や秋田では「いものこ汁」。地域によって、呼び名や材料は異なるが、共通するのは「里芋」が主役ということ。今回は東北を代表する秋の行事食「芋煮」「いものこ汁」をSHUN GATE編集部で、地域ごとに再現してみた。

ハレの日の食材「里芋」

ハレの日の食材「里芋」

里芋の歴史は古く、米よりも早く日本に伝わったと考えられている。古くから、全国的に祝いの食事に欠かせない食材として、雑煮やおせち料理に使われるほか、十五夜は別名「芋名月」とも呼ばれ、里芋がお供えされてきた。縁起物とされる理由として、里芋は親芋から子芋、孫芋がどんどん生えてくることから、子孫繁栄を表している、などと諸説いわれている。そんなハレの日の食材「里芋」を使った東北地方の秋の風物詩がある。

秋の定番行事「芋煮会」

芋煮会
写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

例年涼しくなり始める9~11月頃になると、芋煮会のシーズンが到来する。東北のスーパーでは芋煮用の食材を販売するだけでなく大鍋の貸し出しも行われ、コンビニエンスストアの店頭では芋煮会用の薪が売られるほど、街一体が芋煮会ムードとなる。家族や友人、職場仲間と野外に集まって楽しむほか、運動会や地域行事などと合わせて開催するなど、年間行事の1つになっている。

醤油味・牛肉の「山形の芋煮」と味噌味・豚肉の「宮城の芋煮」

日本一の芋煮フェスティバル
写真提供:山形市観光協会

「芋煮」についてよく論争となるのが、材料と味付けについて。一般的に、醤油味で牛肉を使うのが山形の芋煮、味噌味で豚肉を使うのが宮城の芋煮、とされている。山形・宮城双方の出身者が集まると、それぞれの芋煮を作っての食べ比べもよく行われる。
家族や友人、知人など個々のグループでの開催にとどまらず、現在では、「日本一の芋煮フェスティバル」など、クレーン車が登場するような大規模なイベントも開催され、観光イベントとしても注目を浴びている。

岩手・秋田の「いものこ汁」

同じく里芋を使った郷土料理が、岩手県や秋田県では「いものこ汁」の名前で親しまれている。「いものこ」とは里芋のこと。芋煮会同様、行事など集まりで食されることも多い。味付けは醤油や味噌で、鶏肉を使うのが一般的。秋田県の小中学校では、子どもたちが材料や調理道具を分担して持ち運び、野外でいものこ汁をつくる「なべっこ遠足」も定番だという。

各地の芋煮を再現

実際には、地域や各家庭により、味付けや材料は様々なバリエーションがあるが、代表的な材料で、SHUN GATE編集部が各地の芋煮を再現してみたので、紹介しよう。

宮城の芋煮

宮城の芋煮

里芋と豚肉、こんにゃくに加え、野菜もたくさん入り具沢山なことが多い宮城の芋煮。にんじん、ごぼう、大根、長ねぎなどお好みで。味付けは味噌をベースに豚汁に近い味わい。具沢山なので1品で食事代わりにも。

宮城の芋煮

★ おすすめレシピ

宮城の芋煮

山形の芋煮

山形の芋煮

宮城の芋煮とよく比較対象となる、山形の芋煮は、牛肉を使った醤油仕立ての鍋。基本の材料は、里芋と牛肉、こんにゃく、長ねぎ。コクのある味わいで〆にカレールーを投入して、芋煮カレーにしても美味しい。内陸部と日本海側でも異なり、牛肉の醤油仕立ては主に内陸の村山地域で、日本海側の庄内地域は豚肉と味噌仕立てとなっている。

参考;うちの郷土料理「山形県 芋煮」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/imoni_yamagata.html

岩手のいものこ汁

岩手のいものこ汁

里芋と鶏肉、豆腐に加え、大根やにんじん、ごぼうといった根菜がメインの岩手のいものこ汁。味付けは、醤油ベースのお出汁。山形や宮城に比べてあっさりとした味わい。

参考;うちの郷土料理「岩手県 いもの子汁」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/28_13_iwate.html

秋田のいものこ汁

秋田のいものこ汁

里芋と鶏肉に、糸こんにゃく、きのこ、そして、せりが入るのが秋田のいものこ汁。味付けは、味噌と醤油に分かれるようだ。きりたんぽと並び、寒い時期の秋田で体を温める一品。

参考;うちの郷土料理「秋田県 いものこ汁」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/29_7_akita.html

秋の実りで彩られた東北のソウルフード「芋煮」「いものこ汁」。ぜひご家庭でもつくってみてはいかがだろうか。

Writer : SAKIKO FUJIMURA
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Photographer : YUTA SUZUKI
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