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THE POWER OF SHUN(August 2015)

SHUN STYLE

老舗の米屋が提案する新しい米食文化

イメージ写真

「瑞穂の国」といわれるように、日本は古くから稲作が根付く国。主食としてはもちろん、神事に用いられることも多い米は日本人と最も深い関係にある食材ともいえるだろう。

美味しい米は四季と手間ひまが育てる

米作りは、季節の移り変わりと共にある。新緑の美しい初夏に田植えをし、夏の日差しが稲穂を育み、冬に積もった山の雪解け水が田んぼを潤す。秋には黄金色に輝く稲の収穫が始まって、この時期から市場に出回る新米は、“旬”を噛みしめることができる食の風物詩となる。

もちろん気候や風土だけでなく、愛情を込めて育てる農家の存在も欠かせない。「米」という字を“八十八”と書くことになぞらえて、米作りには88回もの手間がかかるといわれている。また近年では有機肥料の使用や減農薬に取り組む農家も増え、品種改良などの技術革新も続いている。より良いお米を作るために生産者たちは日々進化しているのだ。

米写真

シーンに合わせて米を選ぶ。新しい米食の提案

明治38年(1905年)に創業した米専門店の山田屋本店は全国から選りすぐりの米を揃える“米のセレクトショップ”である。
地域、農協、生産者といった細かい単位で銘柄の産地を吟味しながら、 “生産者の顔の見えるお米販売”にこだわっている。さらに、米の味わいに大きく関わる精米の技術にも注力。山梨県に大規模な精米工場を設け、品質管理も徹底している。

「米は主食ではなくなった」山田屋本店の代表取締役社長、秋沢淳雄さんはいう。

110年続く米専門店の大将は日本人と米食の関係をこう見つめ直す。
「いま1日3食のうち、どれくらいお米を食べているでしょう。これまでは食べて当たり前だったお米が、パンや麺と競争する時代になってきました。さらにお米はスーパーやドラッグストアだけではなく、インターネットでも買うことができるようになりました。だから、我々は美味しいお米を揃えるだけでなく、米の専門店ならではの“新しいお米の食べ方”を提案していかなければならないと考えています」。

山田屋本店がおこなうその一つの取り組みが料理やTPOに合わせて米を選ぶというもの。山田屋本店では「食感のマトリックス」という独自の食味チャートを作り、“粘り”や“食感”といった項目でお米の味を分析。
消費者の好みに合ったお米を薦めるだけでなく、寿司やカレーといった料理ごとに味わいや食感の合うお米を選んでくれるのだ。さらに合格祝いや誕生日など、TPOに合わせたお米のセレクトまでもしてくれる。まるでワインのようにお米とシーンの組み合わせを楽しませてくれる。

「日本には色々な味わいのお米があるので、組み合わせを選ぶ楽しみを知って欲しいですね。山田屋本店では1kg単位の小ロットで買えるので、日常食べるお米とは別に特別な場面のためのお米を選んでいただけたら、お米の楽しみ方も広がっていくと思っています」。

山田屋本店写真

秋沢淳雄さん写真

目利きが選ぶ注目の銘柄

世の中にさまざまなトレンドがあるように米の世界にも消費者の好みのトレンドがある。近年は粘りの強いコシヒカリを親とする品種の「ミルキークイーン」や「ゆめぴりか」といったモチモチとした食感の米の人気が高いという。
そんな中、秋沢さんがいま注目している銘柄を教えてもらった。

奥大山江府米写真

①「奥大山江府米」鳥取県

「鳥取県西部の奥大山にある江府町という町で作られたお米です。大山の麓にブナの森林があり、その根に濾過された水がとっても美しいんです。これまで西の方の産地の米はほとんど扱っていなかったのですが、3.11の震災後に、このお米の存在を知りました。粘りが強く弾力があり、噛むほどに旨みと甘みが出てきます。冷めても美味しいのでお弁当にも最適ですよ」。

金のいぶき写真

②「金のいぶき」宮城県

「通常の3倍ほどある巨大な胚芽を持った玄米です。玄米は浸水する時間が長く、独特の食感や風味があるので踏み切れない方も多いと思います。しかし、このお米は白米と同じ感覚で炊けて、食感も白米に近いんです。それでいて、食味はモチモチとしていて玄米らしいプチプチ感もあります。胚芽が大きいぶん、栄養価も高いのが特長です。普通の白米と同じ感覚で、ぜひこのまま食べてみてほしいですね」。

未来のお米好きを育てる「いきものみっけファーム」

山田屋本店が自治体や生産者と一緒に平成26年(2014年)から取り組んでいるのが「いきものみっけファーム」というプロジェクトだ。山田屋本店の精米工場のある山梨県中央市の田んぼに東京から親子連れを招き、米作り体験や生き物観察をするという体験型環境教育の場を提供している。

今年の6月に行われた田植え体験会には子供から大人まで約70名が参加。地元農家の指導のもと、慣れない手つきで田植えに挑戦し、ザリガニやヤゴなどの田んぼにいる生き物に触れることもできる。
また、地元の子どもたちと一緒になって田んぼで“泥んこドッジボール”や、お昼には地場産のお米や野菜を使ったご飯を満喫できる。まさに、お米が生まれる産地の自然を全身で楽しむことができるプロジェクトである。

田植えをしたのは「ヒノヒカリ」という品種。もともと九州地方で多く作られていた品種で、“東のコシヒカリ、西のヒノヒカリ”といわれるほど良質なお米だ。「いきものみっけファーム」の田んぼで収穫されたお米は、山田屋本店の店舗で販売される。

「田んぼはお米を作るだけでなく、様々な生物が生活する場所でもある。『いきものみっけファーム』を通して、人と生物が共生することの大切さを学ぶ機会になればいい。そして少しでもお米のことを好きになってくれたらうれしいですね」と秋沢さん。

消費者と生産者をつなぎ米の未来を作るため、米専門店の挑戦は続いていく。

田植え写真

いきものみっけファーム写真

山田屋本店おすすめ米

特別栽培米
山形県産 つや姫(生産者限定)

特別栽培米
福岡県産 元気つくし

岩手県産
たかたのゆめ

山梨県産
ヒノヒカリ(みっけ米)

Writer : ASAKO INOUE / Photographer : SATOSHI TACHIBANA
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。

お米館 調布本店(株式会社山田屋本店内)

住所 東京都調布市布田2-1-1
*京王電鉄線 調布駅から徒歩約10分
TEL 042-482-2011
営業時間 平日9:00-18:00
祝日10:00-18:00
定休日 日曜日
URL http://www.okomekan.net/
お米館調布本店写真