THE POWER OF SHUN(June 2015)

SHUN STYLE

食に対するこだわりと思いがギュッと詰まったパン
-ベーカリー 365日

パン陳列写真

朝食をはじめとした日常のあらゆる食のシーンで欠かせないパン。
最近ではパン屋自体の種類も多岐に渡り、ベーグル専門店、米粉パン専門店や、パンと一緒にこだわりのコーヒーを提供するベーカリーカフェなどもあり、話題のパン屋も増えている。
今回は、そのなかでも素材にこだわり、革新的なパン作りで注目を集める杉窪章匡さんがオーナーシェフを務める「365日」を訪ねた。

日本全国をまわって探し抜いた選りすぐりの食材

東京の代々木八幡駅からほど近く、住宅街を目前にした静かなエリアに365日はある。

店内に入ると、甘く香ばしい香りに包まれ、思わず顔がほころぶ。バゲットや食パンが並ぶ棚をはさんで、様々なパンが陳列されたショーケースとイートインができるカウンターがしつらえられた店内は、常にお客さんでにぎわっている。
365日のパンには、その名の通り、毎日口にするものだからこそのこだわりが詰まっているという。そのこだわりについて杉窪さんに話を伺った。

「小麦粉はもちろん、全粒粉やライ麦、そして野菜や果物も、直接生産者の方にお会いし、自分で納得した食材だけを選んでいます」。
365日では杉窪さんが日本全国をまわって探し抜いた季節ごとの“旬”の食材を使っている。
「“旬”の食材を食べるということは、春はデトックス効果があったり、夏は身体を冷やしたり、身体に良い影響を与えてくれます。また、化学肥料を使わずに自然のなかで育ったものを食べられるということは食の安心安全にもつながりますしね」。

杉窪さんが食材を仕入れている長崎県の農家では有機農業で自家採種をおこなっているという。
「自家採種とは、文字通り自分の畑で育てた野菜の種を採ることです。種を採り、それをまた植えることでできた、その土地に根ざした野菜は格別に美味しいですよ。大根などは、切った断面から水がしたたり落ちるほど瑞々しいです。野菜の他にも、365日ではパンの素材に使うハムやベーコンまでもすべて自家製にこだわっています」。

365日写真

  • 荻窪さん写真
  • パン写真

小麦本来の香りと旨みを楽しむ「小麦ヌーヴォー」

さらに、パンの主原料である小麦粉にも“旬”へのこだわりを持つ。

“農家と製粉会社、パン屋が話し合う場があれば、小麦粉づくりはもっと良くなっていく”との杉窪さんの想いから実現したのが、2014年9月に開催された「とかち小麦ヌーヴォー」だ。

「とかち小麦ヌーヴォー」は、ワインのボジョレーヌーヴォーのように、収穫されたばかりの新麦を味わい、収穫の喜びを分かち合うというコンセプトのもとに始まった。小麦農家とパン屋が一緒になり、産地のことや小麦の生育を実際に感じ、より良い小麦作りの意見を交換しながらパンを作り、販売する取り組みである。
実は、挽きたての小麦は発酵しにくいため、一般的には半年ほど寝かした小麦を使ってパンを作っている。そのため、収穫されたばかりの小麦でパンを作るのは難しいといわれているのだ。
「収穫したての小麦はすごく香りが良いのです。その香りと旨みを楽しめるパンが作れたら、と思っていました。生産者と“本当の職人”がつながれば、難しいといわれている収穫したての小麦を使って、美味しいパンが作れるようになります」と杉窪さんは話す。

とかち小麦ヌーヴォー写真

マニュアルに頼らないライブでのパン作り

杉窪さんのこだわりは食材だけではなくパン作りにもある。そして、そのこだわりの一つが「マニュアルに頼らないこと」だという。

「パンを作る時に、うちの店ではタイマーを使いません。生地の状態を見ながらステップを踏めば、タイマーは必要ありません」。
365日では、その時々の生地の硬さを感じとりながら、混ぜ合わせる水の分量などを考えている。そのほかにも、グルテンの量やガス抜きなども、一般的なマニュアルにはしばられず、独自の判断でパンを作っている。

「私たちは美味しさを追求してパン作りをしています。グルテンが多ければ膨らみやすく、ガス抜きをすれば発酵しやすくなるのですが、味が落ちてしまうという一面ももっています。小麦の状態、その日の気候をみながらパン作りを行えば、マニュアルに頼らなくても美味しいパンが出来上がるのです」。

パン作り写真

パン作りのその先に

食材選びにしても、生地作りにしても、「食」という大きな概念で考え、美味しさを生み出す365日。
杉窪さんにパン屋にこだわる理由を尋ねてみると、「良いものをたくさん作って、しかも手頃な価格でお客様に食べてもらいたい。それを可能とするのがパン屋さんだと思います」という答えが返ってきた。

「今は全国に3店舗のお店を展開して、若い職人をどんどん育てています。そこから卒業した人が新しいお店を出して、さらに広がっていけば、農家の方へまとまった量の食材を注文できます。そのような循環ができると、農家の方も安心してモノづくりができるようになりますし、何よりお客様にも喜んでいただける。そうすることで、世界が少しずつ良い方向に変わるのでは、と思っています」。

365日は、パンの他に杉窪さんが選び抜いたこだわりの野菜や、コーヒー、調味料、食器なども販売する「食のセレクトショップ」になっている。

作り手の想いがこもった食材が並ぶ店内にいると、その一つひとつを手に取り、食材の良さを知りたくなってくる。
365日は美味しいパンに出会えるだけでなく、毎日の食事の大切さについてちょっと考えたくなる、そんなお店だ。

365日店内写真

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365日

住所 東京都渋谷区富ヶ谷1-6-12
*地下鉄千代田線代々木公園駅または小田急線代々木八幡駅から徒歩1分
TEL 03-6804-7357
営業時間 7:00 ?19:00
定休日 2月29日
URL http://www.365jours.jp/

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