恩納村のユニークな自然農法で甘く実る、亜熱帯の果樹「アテモヤ」
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沖縄県恩納村は、アテモヤの生産量日本一を誇る一大産地。今回は有機JAS認定を取得し、自然栽培でアテモヤを栽培している「てるてるファーム」の照屋和江さんを訪ねた。
糖度25度にもなる魅惑の果実
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アテモヤは台湾で人気のバンレイシと、同じバンレイシ科でアンデス山脈原産のチェリモヤという2つの果実をかけ合わせて生まれた品種。見た目も2つをちょうど合わせたような、ポコポコと突起した緑色の果皮がユニークだ。
亜熱帯性果樹だが寒さにも強く、逆に気温が高すぎると糖度が上がらないことがある。そのため、夏に受粉をさせた後、秋冬の涼しい時期が成長期。4ヶ月ほどの時間をかけて、実はじっくり大きく甘く成熟していく。12月1日から4月末までがアテモヤ出荷期間と決められており、1月が一番おいしい旬の季節となる。
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“森のアイスクリーム”と呼ばれる理由はその食味。乳白色の果肉はとろりとクリーミーな食感で、時には糖度が25度を超えるほど甘味が強い。低カロリーだが、ビタミンやミネラルも豊富で栄養満点。出荷量はまだまだ少ないが、現在は贈答用として人気があるという。
虫も味方にする。自然の力を利用した独自の栽培方法
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恩納村で唯一、有機JASを取得してアテモヤとパッションフルーツを栽培している「てるてるファーム」。制限の多い有機JASの基準を満たすのは容易ではないが、代表の照屋和江さんにとっては自然な流れだった。そもそも生産量の少ないアテモヤに認可されている薬が少なく、「それなら薬を使わずに栽培しよう」と、決意した照屋さん。県の農業アドバイザーの助言を受けながら、アテモヤの有機栽培方法を見つけ出した。
なかでもユニークな栽培方法が「天敵農法」。普通なら駆除してしまう虫を敵と味方に分け、味方の虫は殺さず害虫駆除に役立てるという自然農法の手法の一つらしい。照屋さんはファームを案内しながら「あの虫は敵、これは味方」と、説明してくれる。
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「たとえば害虫の代表格であるカメムシでも、キシモフリクチブトカメムシという種類は、葉っぱや実を食べてしまう毛虫を捕食するから味方なんです。あ、あそこにいるカマキリも味方。花の近くに寄ってくる虫を食べるために、隠れて獲物を狙っているでしょ?」。照屋さんは虫の種類と特性を調べるために、家で飼育してみるという徹底ぶり。草花や生き物が大好きな彼女ならではの農法だ。
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アテモヤは成熟しても外見が明確に変わらないため、収穫時期を判断するのが難しい。そこで照屋さんは、受粉期間を20日程にすることで、収穫時期のばらつきをなくし品質向上を図っている。また実をつけすぎると、次の年に木が枯れてしまうほどエネルギーを消費してしまうため、秋に行う摘果は重要な作業。ひと枝につき実は1つ、葉は16枚程度になるように丁寧に剪定し、適量の大きな実を作るように栽培しているという。
おすすめは実が大きいものを選ぶこと
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「見慣れない果実なので最初は小さいものを選ぶ方が多いんですが、アテモヤは大きい実を選ぶのがおすすめです」という照屋さん。味自体はサイズの大きさで変わらないが、とても種が多い果物のため、大きい実のほうが食べられる部分が多いからだ。
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食べ方はそのまま食べるのが一番おいしいが、クリーミーな実はスムージーやヨーグルトとの相性も抜群。買ってから少しおいて、皮が柔らかくなった頃が食べ頃だ。ためしに一つ食べさせてもらうと、完熟したラ・フランスのような爽やかな甘味が口の中に広がる。1月のピークの時期になるともっと果肉が柔らかくなめらかになり、糖度も上がるというから楽しみだ。
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これからも自然と共生しながらアテモヤを栽培していきたいという照屋さん。今年の冬は恩納村で育ったアテモヤを、ぜひ食べてみてほしい。