「春野菜 菜の花」
今回は春野菜の菜の花を紹介。“旬”を迎えた菜の花の目利きポイントから美味しい調理方法まで、その魅力をたっぷりと語ってもらった。
新たな芽吹きに心がおどる春野菜
「春には自然がもたらすワクワク感があると思うんだよ。また、新しい四季がはじまると思うと、なおさらワクワクしてくるね」と、にこやかな表情で内田さんは話す。
寒い冬も立春を過ぎた頃になると、日の長さや日差しの変化がはじまってくる。その自然の変化に呼応するかのように、冬を越えた野菜たちが芽吹きだす季節がはじまる。この時期に収穫を迎える春野菜は苦みや渋みをもつ個性的なものが多く、この苦味や渋みが人間の新陳代謝においての排出を助ける働きをもっていると内田さんは教えてくれた。
「代表的な春野菜のひとつが菜の花。花を咲かせる前の若い菜の花を僕らはいただく。人間に例えると、思春期の少女のよう。少し苦みが走っているけど、丁寧にしてあげると、やさしく、味わいが良くなって甘みを出してくれる。菜の花にはそのようなイメージがあるんだ。男性的ではないよね(笑)」。
菜の花の目利き術!美味しい菜の花を選ぶには
菜の花の原産地は中央アジア。日本では千葉県で多く収穫されている。
菜の花の“旬”は2月から4月と短い。うかうかしているとあっという間に花を咲かせて種をおとす準備に入ってしまうため、菜の花の美味しさが味わえるこの3ヶ月を逃すわけにはいかない。
“旬”の「走り」の時期はみずみずしくてやわらかい菜の花が味わえる。
そして、菜の花の“旬”は「盛り」を迎え、「名残」の時期に近づくにつれて苦みやえぐみも増していくが、その特徴を活かした調理をすることで菜の花の短い“旬”を堪能することができる。
菜の花は全体的に淡い緑色したものを選ぶのが良いという。
また、「蕾・葉・茎」の3つの箇所に分けてそれぞれの特徴をみていくと目利きがしやすいという。
・蕾 — しっかりぎゅっとしまっているもの
・葉 — 葉脈が左右均等で美しいもの
・茎 — 太くて、軸が真ん中にあるもの
そして、ここで全ての野菜の目利きに当てはまるという内田流「野菜の目利き8箇条」も改めて紹介しておこう。
内田流やさいの見かた8か条
[形]まるいやさいを選ぼう
[大きさ]大きすぎない。だけど、ずっしり重いものを選ぼう
[色]緑色が淡いものを選ぼう
[バランス]形や葉脈が左右均等で美しいものを選ぼう
[軸]胚軸が小さめでまん中にあるものを選ぼう
[ひげ根]ひげ根の跡がまっすぐに並んでいるものを選ぼう
[芽・子室]次世代につながる生命力のしるし=根・芽・子室の数を確認しよう
腐るやさいではなく、枯れるやさいを選ぼう
菜の花を“同旬和え”でいただく 〜菜の花のわさび和え〜
“旬”を迎えた菜の花のおすすめの調理方法を内田さんに伺った。
「菜の花のからし和えってよく耳にするでしょ?僕ならわさびで合わせるなぁ。からしもいいけど、実はわさびもすごく合うんだよ」と内田さん。“旬”が同じものを合わせる調理法を“同旬和え”と呼ぶそうで、“旬”と“旬”を合わせた今しかできない最高の組み合わせとなる。
内田さんに春の“旬”である生わさびを使い、「菜の花のわさび和え」を作っていただいた。
「菜の花のほんのりある苦みとわさびの持つ辛みを合わせると、相乗効果で苦さと辛みを調和させ、互いの持つ美味しさを引き出してくれるんだよ」。同じく“同旬和え”の考え方では、菜の花には、同じ春野菜のトマトを合わせるのもおすすめとのこと。
菜の花をご飯とあえた「菜飯」の作り方も教えていただいたので、菜の花のわさび和えと合わせて、ぜひ試してみてはいかがだろうか。
再び始まる四季のリレー
「菜の花は夏に食べようとしてもありませんからね。今だけなんですよ。ゆらぐことのない“旬”を意識して過ごすことで、生きることの原点である食に幸せを感じられるようになるんです」と内田さんは笑顔で話す。
“旬”を過ぎると、花が咲き種をおとす菜の花のように、それぞれが最適な環境で実る野菜たち。
そして、次の季節の野菜へと出番を変え、春夏秋冬という四季のリレーを繰り返していくことによって、私たちはまた“旬”という特別な時間を味わう幸せを感じることができる。