世界を虜にするヨックモック
*パッケージは価格帯によってカタチが変わる場合がございます。
*デザインは時期によって変更の場合がございます。
まずは、「シガール」を実際にSHUN GATE編集部メンバー内で食べたときの感想を、味だけではなく、見た目など様々な角度から、受け取る側の素直な気持ちも交えてお伝えしておこう。
甘さと、形状が作り出す上品な世界観
「シガール」を一口食べると、口の中に贅沢なバターの香りが広がっていく。子供の頃から食べ親しんでいる「シガール」だが、このバターの香りは、いつ食べても幸せな気分にしてくれる。また、少し噛むだけで、生地がサクッとくずれていくこの心地よい食感も「シガール」の魅力の一つだ。味、香り、食感の調和がとれた「シガール」は長年に渡って上品な世界観を提供してくれる一品である。
日本らしい繊細な表現
宗教上の理由からアルコールを嗜まない中東の国々では、男性も甘いものが大好きだという。夜のパーティーの際もコーヒーとスイーツでくつろぐ。それだけに、彼らはお菓子に対しては非常に肥えた舌をもつ。そのような海外の人たちが日本のヨックモックを絶賛するのはなぜだろうか。
その美味しさの秘密を探るため、ヨックモックの東京工場を訪れ、商品開発グループ長の三井田敦弘さんにお話を伺った。
「シガール」の材料は、バター、砂糖、卵、小麦粉、そしてアーモンドパウダーとバニラエッセンスを少々。材料は、非常にシンプル。その材料のなかでも、特にバターの扱い方がポイントだと三井田さんは教えてくれた。
「北海道産の乳味の強いバターを選んでいますが、バターも農産物ですので、年ごと、季節ごとに微妙に状態が変化します。そこで、バターの微妙な変化に合わせてミキシングのタイミングや状態、材料の温度を微調整しています」。
生地作りに携わることができるのは専門の熟練職人だけ。最もお菓子が美味しくなるバターのやわらかさを保ち、生地の状態を確認する作業は、まるで“子守り”をしているかのように目が離せない作業だと三井田さんはいう。
また、「シガール」といえばロールの形状が有名だが、その形状を作り出していく焼きの工程にはヨックモックの長年の経験が活かされている。
「焼きの工程では、低温・中温・高温を使い分けて、縁の部分の香ばしさと、真ん中のふんわりと軽い食感、そしてロールしやすい柔らかさの加減を同時に作りだしています。ふんわりと巻くと、生地と生地の間にわずかな隙間ができ、その空気の層によって『シガール』独特の口溶け感が生まれていきます。昔は手巻きで行っていたため、熱さで手を真っ赤にはらしながら生地を巻いており、職人は大変だったと聞いております。現在はオリジナルで開発した機械により、手巻きの頃と変わらない納得のいく味を作ることができています」。
「シガール」の美味しさの秘密を教えてくれた三井田さんに、海外の人たちにも愛される理由を聞いたところ、“日本らしい繊細さ”にあるのではないかと語ってくれた。
「『シガール』のしっかりとした甘みと口溶けのよさは、バターと砂糖の比率を最大限に高めていることにあります。甘みや、サクッとした軽い食感、口溶けの良さ、これらの絶妙なバランスが『シガール』のこだわりです。もともと、『シガール』のようなラング・ド・シャ系のお菓子はフランスが発祥のお菓子ですが、この絶妙なバランスを作り出す繊細な表現をできるのが日本人らしいところです。海外の人たちにも愛される理由はここにあると思っています」。
この“日本らしい繊細”な表現は、「シガール」の包装にも表れている。
「薄くてこわれやすい『シガール』の包装を開ける時、軽い力でもきれいにフィルムが裂けるようにしています。中のお菓子を崩さないで届けるためにフィルムについても研究を重ねています」。
箱を開けたときから “贈り物”の役割は始まっているという、ヨックモックの繊細な心遣い。「シガール」には、その繊細な心遣いが細部にわたってまで表現されているのだ。
“おもてなしの心”までも海外へ輸出する
最初はアメリカの高級デパート「ニーマンマーカス」に出店。当初、ヨックモックは海外で積極的な宣伝をしてはいないのに、「日本のヨックモック」という名前がアメリカ以外の国でも一人歩きしていったという。そのヨックモック噂は拡がっていき、海外からの出店オファーが次々と舞い込んできた。そして2012年には、UAE(アラブ首長国連邦)に日本の菓子メーカーとして初めての出店を果たした。
このように世界を魅了し続ける背景には、お菓子そのものの美味しさだけではく、店づくりも成功要因の一つだという。
UAEのヨックモックのショップでは、商品はもちろん包装紙やリボン、ペーパーバッグなど、現在では全ての資材を日本から運んでおり、ディスプレイや接客も含め東京の青山本店と同じ雰囲気、クオリティの店づくりを行っている。
また、接客においても“おもてなしの心”を伝えていこうと心がけている。店員は現地の人だが、「いらっしゃいませ」「こんにちは」という最初のあいさつは日本語で行い、ドアの開け方、商品は両手で渡すなど、日本式の接客マナーを教えている。
もちろん、その国の文化習慣に合わせて、日本とは違うサービスも積極的に取り入れている。オフィスや自宅でトレーなどにお菓子を並べて、お客さんをもてなす習慣のあるUAEでは、自宅配送サービスも行っており、100箱単位での注文やトレー盛り商品の注文が入ってくることもあるという。
取材の終わりに、我々はヨックモック青山本店を訪れた。明治神宮や、洋服のブランドショップが建ち並ぶ表参道からも足を伸ばせる距離にある青山本店には外国人観光客も多く訪れる。また、外資系企業や大使館関係者も多い場所でもあり、帰国の際の手みやげにとヨックモックのお菓子を選ぶ方も多いという。
ヨックモック青山本店で商品を購入した際、店員が出入り口までアテンドしてくれて、お店を出る時に商品を両手で渡してくれた。日本人が当たり前と思っているモノ作りに対する“繊細な表現”と、接客における“おもてなしの心”。世界を虜にするヨックモックの「シガール」は、日本が古くから大切にしている精神を日本人にも再発見させてくれる“贈り物”である。