国産メンマが放置竹林を救う。規格外のタケノコから生まれた「延岡メンマ」
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<「延岡メンマ」のここに注目>
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・放置竹林の問題を解決するために生まれた
・規格外のタケノコ、唐辛子、味噌は延岡市産のものを使用
・ファーストクラスの機内食でも提供されている品質の良さ
伸び切ったタケノコを生かしたメンマ作り
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「延岡メンマ」を開発したLOCAL BAMBOO 株式会社の代表、江原太郎さんは、祖父母の農家を継ぐために、4年前に東京からUターン。先祖代々受け継いできた畑が、放置竹林によって荒らされている様子を目の当たりにしました。
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「1日に1メートル以上伸びるものもあるほど、竹は成長スピードが速く、人間の管理スピードが間に合っていません。日光が遮られ、ほかの木が成長できなかったり、浅く生えてしまった竹から水が出て、土砂崩れの原因にもなったり。そうやって放置された竹林がある森の奥には人が入れず、獣害を引き起こす動物の住み家になってしまうことも多いんです」
江原さんが「幼竹」と呼ばれる伸びきったタケノコを生かす方法を調べていくと、メンマとして食べられるという文献を見つけました。
「規格外のタケノコの利用としてメンマという手段がある。かつ、市場では中国産や台湾産がほとんどで、国産メンマは1%ほどしかない。これしかないと思い、メンマ作りを始めました」
地元の食材を使用して助け合う
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メンマの原料である幼竹は、もともとほとんど価値がなかったもの。竹林を持つ農家から買い取って商品化することで、農家にお金が渡り、竹林整備ができるようになるサイクルを生み出します。
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「ありがたいことにJA延岡と業務提携を結んでいます。JAの出荷規格はもともと二つでした。一つは青果用で料亭に並ぶようなもの。もう一つは加工用と呼ばれる、スーパーに水煮などで販売されるものです。そこに僕らはメンマ用という新しい出荷規格を作り、加工用で規格外とされていた時の2倍近い価格で買い取っています」
また幼竹以外のメンマ原料にも、「渡辺味噌醤油醸造」の味噌や、ブランド野菜「七萬石とうがらし」という地元品を使用。
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「メンマは実は味付け次第でいかようにもなるんですね。食べることで解決できる商品を目指していたので、日本の主食であるお米、パン、パスタに合う味付けにしようと思いました。そして『延岡メンマ』と名乗っているので、地元のものを使ってみんなが助かるように、地元の味噌やとうがらしを使ったピリ辛味噌味を最初に作りました」
国産メンマの価値を高めるために
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現在、学校給食でも提供している「延岡メンマ」。竹林問題だけでなく、メンマが竹からできていることもほとんど知られていないそう。
「自分達の地域資源なのに圧倒的に知らない人が多い。給食で子供たちに食べてもらう時には、5分時間をいただいて、メンマクイズをしているんですが、メンマは何からできているでしょうか、と聞くと、キノコって思われているんです。だからなんでメンマにしているのか、実は延岡市は放置竹林でこんなことに困っているんだよ、っていうのを図解しながら説明しています」
さらにANAのファーストクラスの機内食で2年連続採用されています。
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さらに江原さんは延岡市だけでなく、日本各地の竹林問題で困っている地域をメンマで助けています。
「僕らの知見はオープンで出していて。たとえば熊本県多良木市や大分県別府市でもメンマを作っています。来年は2つくらい商品を出す予定です」
江原さんらのノウハウとともに着実に広がっていく国産メンマ。日本全国の放置竹林に希望の光が差し込む日もそう遠くはありません。