目利きが語る:夏の「パイナップル」
食べやすく甘みが強い国産パイナップル
八百屋「瑞花-suika-(東京・神楽坂/2019年閉店)」の矢嶋文子さんに国産パイナップルの特徴と目利き方法などを教えていただいた。
「国産パイナップルが出回るのは4〜8月頃。そのほとんどが沖縄県産で、少しだけ鹿児島県産のものも流通しています。パイナップルは収穫後に追熟をしない果物なので、収穫した時の甘さが最大値。国産だと輸送時間が短いので、ギリギリまで完熟させてから収穫することができるため美味しいんですよ」。
未熟な果実には口内がイガイガする原因となるシュウ酸カルシウムが多く含まれるため、完熟で収穫されたものの方が食べやすい。また、収穫から時間を置くことで追熟はしないが、酸味は徐々に薄れていく。甘さと共に酸味を求める方は、とくに新鮮な国産パイナップルがおすすめだ。
個性豊かな沖縄産の3つの品種
矢嶋さんによると、目利き方法は大きく4つだという。
・果汁がたくさん詰まっていて重いこと
・完熟していて皮の外からもいい香りがすること
・パイナップルのお尻の切り目にカビが無いこと
・新鮮で実がしっかり固いこと
個体によって皮の色が黄色や茶色など様々だが、皮の色は美味しさにあまり関係ないそうだ。
「パイナップルに含まれる酵素は整腸作用があるので、夏場に胃腸が疲れたときなどにおすすめです。60度以上に加熱すると酵素が壊れてしまうので、生のままヨーグルトと合わせたりサラダに入れて食べると良いでしょう。うちではニンジンやキュウリ、ミックスビーンズなどと一緒に、ヨーグルトと和えてダイスサラダにしてよく食べています」と、矢嶋さん。
主な国産パイナップルの品種の違いも教えていただいた。
島パイン
「世界的に多く栽培されているハワイ原産の『スムースカイエン』という品種。沖縄でもたくさん栽培されていて、『島パイン』という名前で呼ばれています。酸味と甘みのバランスが良く、加工品にも多く使用される品種です」。
ピーチパイン
「『ソフトタッチ』という品種ですが、果肉が桃のように白いため『ピーチパイン』とよく呼ばれています。甘みと香りが強くなるよう改良されて品種です」。
スナックパイン
「台湾原産の『ボゴール』という品種。節を手で引っ張ってちぎって食べられることから『スナックパイン』と呼ばれています。
芯も柔らかく食べられるのが特長です」。
パイナップルを使った、夏のお菓子
そのまま食べてももちろん美味しいが、より美味しい食べ方を探りに、お菓子研究家のmarimoさんのもとを訪ねた。
「パイナップルやブルーベリー、オレンジなど、酸味が強くはっきりしているフルーツは、生のままでも加熱しても、美味しいお菓子ができます。桃やメロン、さくらんぼなど優しい味わいで香りを楽しむものは生のまま、杏やいちじくなど味わいがキュッと濃くなるものは加熱もおすすめです」。
甘酸っぱく味が濃いパイナップルは、バターや生クリームなどの製菓材料の味に負けないため、お菓子づくりに向いている果物だという。
ただし、パイナップルには「タンパク質分解酵素」が含まれているため、ゼラチンの働きを抑制してしまう特性がある。ゼリーやムースなどゼラチンで固めるお菓子をつくる際は、一度加熱してから使うと良い。
今回は、見た目も爽やかで初夏にぴったりな、ショートケーキのレシピを考案していただいた。
夏らしい爽やかなショートケーキ
近年人気の「ネイキッドショートケーキ」。側面にクリームを塗らず、中の断層が見えることから“裸”という意味の“ネイキッド”がネーミングとなっている。表面にきれいに生クリームを塗るという工程が無いため、一般的なショートケーキよりお菓子作りの初心者でもチャレンジしやすい。
「ポイントはスポンジを同じ厚さにスライスすることと、中にサンドする果物も均一な厚さに切ることです。クリームとパイナップルは横からはみ出して見えるようにして、ラフに仕上げた方が可愛く仕上がりますよ」と、marimoさん。
上のデコレーションは丸く配置すると花のリースのようでより可愛く仕上がるそう。メロンや桃など水分の多い果物でつくる場合は、切った後にキッチンペーパーでしっかり水分を取ってから盛り付けると良い。
ただし、パイナップルには「タンパク質分解酵素」が含まれているため、ゼラチンの働きを抑制してしまう特性がある。ゼリーやムースなどゼラチンで固めるお菓子をつくる際は、一度加熱してから使うと良い。
見た目も爽やかで初夏らしいスイーツレシピ。
今年はぜひ国産のパイナップルを使って、挑戦してみていただきたい。