1.菊池牧場の「ソーセージ」
東北新幹線いわて沼宮内駅から車でおよそ30分。市街地を抜けて木立のなかを突き進んだ先に「菊池牧場」はあります。二代目当主の菊池淑人さんとその妻・暢子さん、そして息子の三人で切り盛りしている家族経営の牧場です。経営は、自社牧場の乳牛を使ったソーセージとハムの加工・販売。先代から自然放牧を取り入れて、125ヘクタールの牧草地で、約100頭の乳牛を飼育しています。
牧草地に案内してくれた淑人さんの視線の先には、泥んこになって走り回る牛たちが。日が暮れて牛舎に帰るまで、牛たちは自由気ままに一日を過ごしています。雪の降る冬場以外は、なるべくストレスがないように育てられているのです。そして、牧草や乾草だけを与える飼育方法「グラスフェッド」で育てられています。牧草も化学肥料や農薬は一切使っていません。
「うちの乳牛は運動量が多く餌も適量なので、肉付きが少なく引き締まったからだをしています。収量を求めるなら、大量に餌を与えて太らせるべきかもしれませんね。けれど、それってうちのやり方には合わないかな」と、暢子さん。
菊池牧場の乳牛は、2歳頃から搾乳され、オスは4歳を境に、メスは搾乳ができなくなると部位に応じてソーセージ・ハム等に加工される。定番の「ウインナーソーセージ」、ピリ辛の「フランクフルト」、煮こみ料理に最適な「バイスブルスト」など、ラインナップはおよそ30種類。ドイツ、オーストリアで修業した淑人さんの腕が冴えわたる。
「うちの商品は手づくり、無添加。自然放牧ならではの野性味のある肉の味わいが自慢です。季節やその時の肉によって味わいは少しずつ変わるし、大量生産もできないので大手メーカーの基準には適合しませんが、畜産の“正解”はひとつではありません」。
暢子さんの手書きの牧場通信を添えた定期便は、長年に渡って購入を続けるリピーターも少なくありません。商品を通じ、牧場や菊池さんご夫妻に想いを馳せて味わっていただきたい商品です。
2.岩手町ふるさと振興公社の「フルーツワイン」「ブルーベリーカレー」
7月に “旬”を迎えるブルーベリーは、キャベツと並ぶ岩手町の特産品。1982年に本格的な栽培が始まりました。ブルーベリーの酸味と甘みは、生食はもちろん、ジャムやゼリーなどに加工しても個性を失いません。現在、岩手町は加工用ブルーベリーの出荷量で、県内トップを誇っています。
そんな特産品のブルーベリーを活用した商品が岩手町では次々と生み出されています。
その1つがフルーツワイン「ルルとリリ」。ゆたかに実った果物でつくられた町を代表する特産品です。ブルーベリーワインは、岩手町産ブルーベリーの軽やかな酸味と優しい甘みが調和した、さっぱりとした仕上がりです。同シリーズのリンゴワインも岩手町産で、生でもそのまま食べられる「ふじ」を原料に、果汁を一度凍結させ、糖度の高い果汁のみを使用する凍結濃縮という方法で醸造。女性にも飲みやすいようにと、アルコール度数はどちらも7.5%と低め。
「特別な日をさらに楽しく」をコンセプトに、パッケージデザインにもこだわりました。若い女性にも好評で、岩手町の道の駅「道の駅 石神の丘」でお土産として人気の商品です。瓶自体が包装紙でラッピングされていて、贈り物にもぴったり。
もう1つは、町内にある道の駅 石神の丘のレストランでも人気のメニューである「ブルーベリーカレー」。家庭でも手軽に食べられるよう商品化された、スパイシーなカレーに、ブルーベリーの甘み・酸味が添えられているオリジナル商品です。
これらの開発を手掛けるのは、石神の丘を運営する岩手町ふるさと振興公社。「六次産品は町の名刺」。そう話すのは、副支配人を務める大坊俊貴さん。
「農産物そのもので地域をPRすることも重要なのですが、それらを加工して流通させればより幅広い客層に関心を持ってもらえます。町の魅力を明確に伝えられることが六次化の強みだと思っています」。
ぜひ、豊かな農産物の産地、岩手町で生まれた様々な特産品を味わってみてください。
3.岩手町ふるさと振興公社の「石神長いもそば」
もう1点ご紹介するのが、同じく岩手町ふるさと振興公社が手掛ける岩手町産の長いもを使用したそばです。町の六次産品として生まれました。
長いも・ねばり芋・自然薯など、秋になると岩手町の産直では、さまざまな種類のナガイモ類が入荷してきます。これらは農林産物の統計上、「やまのいも」と分類され、岩手町はその栽培面積・販売額で岩手県第 1 位。野菜の産地、岩手町が誇る特産品の1つです。
そば粉には、玄そばの実を丸挽き製紛し、玄そばを余すことなく使用しています。独自製法によって乾麺に必須のしっかりとしたコシが特長です。
このそば粉のつなぎとして丹念に練りこまれた長いもの「でんぷん質」により、乾麺としては今までにない「歯ごたえ」と「つるつる」とした食感が楽しめます。また、 通常のそばよりも倍ほどの太さにすることにより食感を楽しむことができ、見た目にもインパクトのある一品です。
4.肉のふがねの「セシーナ」
岩手町の精肉店「肉のふがね」が岩手県産の食材にこだわってつくるのが、長期熟成生ハム「セシーナ」。代表取締・府金伸治さんは、「肉の英才教育」を受けてきたという岩手町の食をけん引する一人。父方の祖父は畜産業、母方の祖父は食肉加工業に従事し、幼少時代から食肉業のノウハウを教えこまれてきました。大学卒業後、洋食店や割烹で料理の腕を磨いたのち、2001年、父親から家業を継ぎ現在に至ります。
そもそもセシーナとはスペイン北部・レオン地方に伝わる生ハムのこと。材料は牛肉と塩だけ。シンプルゆえに、素材の質と製造技術が味を左右します。府金さんがセシーナを作り始めたきっかけは2014年、バルセロナで開かれた見本市。そこでセシーナを食べた府金さんは衝撃を受けました。一切れ口に運ぶと、まず牛肉の旨みと塩の味がダイレクトに伝わり、チーズのような発酵臭が鼻にぬける。舌に残った余韻からは草の香りを感じたそうです。
「こんなに美味い生ハムがあるなんて」。府金さんは、この時、岩手県のブランド牛「いわて短角牛」と、岩手県野田村の自然塩「のだ塩」をつかったオリジナルのセシーナの製造を決意しました。
「いわて短角牛」は、赤身が多く、イノシン酸やグルタミン酸など旨み成分が豊富なため、ヘルシーで味わい深いのが特長です。牛たちは、自然交配・自然放牧で広大な牧草地で海からの冷風にさらされながらミネラルたっぷりの草を食べて健やかに育ちます。もう一つの材料「のだ塩」は、海水を薪窯でじっくりと煮詰める「直煮(じきに)出し」と呼ばれる伝統的製法でつくられます。手間ひまがかかる分、海水のミネラル分を損なわずまろやかな風味に仕上がるのです。
実は、いわて短角和牛とのだ塩には古くからの繋がりがありました。その昔、この地でつくられた塩は米や穀物との交易に使われており、その際に塩を運んでいたのが、いわて短角和牛の起源といわれる「南部牛」だったのです。肉のふがねのセシーナは、いわて短角和牛の旨みを、のだ塩のまろやかな塩味が引き立てる、悠久の時を経て岩手の風土が生み出した一品ともいえます。
「セシーナを日本国内で普及させることがスペインへの恩返し」と、府金さん。新たな挑戦はまだ始まったばかりです。
これらの岩手町の特産品は下記よりご注文いただけます。ぜひお試しください。