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THE POWER OF SHUN(February 2018)

SHUN STYLE

“旬”をあじわう季節のお菓子「ほうれん草」

“旬”をあじわう季節のお菓子「ほうれん草」

ビタミンや葉酸、鉄分などが含まれ、栄養豊富な野菜「ほうれん草」。一年中手に入る野菜ではあるが、寒い時期に育て、霜にあてたほうが甘く美味しくなるというまさに冬が “旬”の野菜。

今回は、そんなほうれん草の“旬”の時期や目利きポイントと、ほうれん草を使って家庭でも簡単に作れる、出来立てほかほかをほおばりたい蒸しパンのレシピをご紹介しよう。

つくりたいのは、人が美味しいと喜ぶ野菜

“旬”のほうれん草を求めて、千葉県四街道市の農家kiredo(キレド)の畑を訪ねた。kiredoは、元エンジニアという異色の経歴を持つクリタタカシさんを中心とした4名のスタッフで、年間約150種類の野菜を育てている。美味しいものがなにより好きで、食べて美味しいと感じた野菜の栽培に次々と挑戦していたら、いつの間にか150種類もの多品種栽培になっていたという。

「会社勤めをしていたころ家庭菜園でつくった野菜を人にあげたら、すごく喜ばれたんです。エンジニアの仕事以上に、自分のつくったもので人を幸せにできることを身近に実感できて、それでのめりこんでいきました」と、クリタさん。

kiredoで栽培しているほうれん草は、「ちぢみほうれん草」。一般的なほうれん草と比較してその葉付きに違いが見られるが、これは霜のおりる寒い時期に露地栽培で育てるため、温かさを求めて葉が上ではなく地表に沿って横に広がるのだという。

「ちぢみほうれん草はつくるのが難しいんです。普通のほうれん草は1〜2ヶ月で収穫できるのに比べ、ちぢみほうれん草は3ヶ月ほどかかります。早く植えすぎると老化してしまうし、栽培期間が長い分、天候や気温の影響を受けやすいんです」と、クリタさんが教えてくれた。

“旬”のほうれん草

“旬”のほうれん草

寒さと霜が甘いほうれん草の秘訣

畑から抜いたばかりのちぢみほうれん草を、いただくと、まず葉がしっかりと肉厚なことに驚く。普段見慣れたほうれん草とはまったく別の野菜のようだ。生のまま口に入れても、葉物野菜特有のアクやエグミが無く、甘みが強く、味が濃い。その理由を聞くと、牡蠣の殻や海洋深層水などのミネラル分を豊富に与える代わりに、肥料をあまり与えず厳しく育てているからだという。

ちぢみほうれん草は、気温が下がり霜がしっかりおりることで甘みが増すという。畑に伺った日も最低気温は−4℃で、ちょうど霜が降りはじめた季節だった。農家にとって畑作業をするには辛い気候だが、クリタさんは「これでやっと味が乗って美味しくなってきます」と、どこか嬉しそう。

「ほうれん草は基本的に冬が美味しいです。ちぢみほうれん草は霜のおりる12月〜2月が“旬”。色が濃く黒ずんでしまったものは肥料をやりすぎた証拠です。株の中心が淡い色で、葉がしっかりと分厚いものを選ぶといいですよ」と、美味しいちぢみほうれん草の見分け方を教えてくれた。

  • 寒さと霜
  • 寒さと霜

ほうれん草の甘みと彩りを活かして

kiredoのちぢみほうれん草を使った、この時期にぴったりのお菓子を、お菓子研究家のmarimoさんに考案していただいた。

「“旬”のほうれん草は特に栄養価が高く、積極的に食べたい食材ですよね。ほうれん草はお菓子にすると優しい甘さがふんわりと残り、青臭さは気にならなくなるんですよ。特にちぢみほうれん草は甘みが強いので、天然の甘味料のようにお菓子作りに使うことができます」と、marimoさん。

ほうれん草の緑色は火を通しても変わらないため、彩りのあるお菓子をつくりたい時に適した素材だという。アク抜きのために茹でる時間は30秒ほど。沸騰したお湯にさっとくぐらせると、葉の色が一段と鮮やかになる。

ゆでたほうれん草を牛乳などの水分と一緒にフードプロセッサーにかけると、簡単にピュレ状にすることができる。ピュレはシフォンケーキやマフィン、蒸しパンなどの生地に入れるのがおすすめだそう。

今回は、かぼちゃのトッピングでさらに彩り豊かな「ほうれん草の蒸しパン」のレシピを考案していただいた。

marimoさん

marimoさん

冬にうれしい温かく栄養豊富なお菓子

徐々に暖かい日も多くなってきたが、まだ寒さに油断はできない季節。寒い時期に温かいものを食べたくなるのは、食事もおやつも同じだ。

「できたてのホカホカを食べられるのは、手作りお菓子ならではですよね。蒸しパンはオーブンを使わずにお鍋などで簡単につくれますので、お菓子づくり初心者の方もチャレンジしやすいと思います。ちぢみほうれん草やバターナッツかぼちゃが手に入らなければ、一般的に売られているほうれん草やかぼちゃでも大丈夫です。かぼちゃを乗せるとカラフルな仕上がりになるだけでなく、栄養価も上がります。他にもトッピングを自由に工夫して、お菓子づくりを楽しんでみてください」と、marimoさん。

春の足音はもうすぐそこ。野菜をつかった栄養満点のお菓子で、残り短い冬を元気に乗り切っていきたい。

手作りお菓子

Writer : YOKO AOYAGI / Photographer : marimo / SATOSHI TACHIBANA
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。

ちぢみほうれんそう
情報提供:kiredo クリタタカシさん

“旬”の時期
12月から2月にかけての霜が降りる時期
「ちぢみ」以外のほうれん草も“旬”の時期は同じ

目利きポイント
中心の若い芽が淡い色をしているもの
葉が分厚いもの

美味しい食べ方
塩を入れていない60度のお湯で1分間ゆでる
養分や旨みが流れ出ないよう、きつく絞らず
水切りカゴやザルで優しく水気を飛ばすのがおすすめ

kiredo VEGETABLE Atelier (キレド ベジタブル アトリエ)

住所 千葉県千葉市若葉区小倉台5-13-4
TEL 043-232-3470
営業時間 10:30~18:00(木~日)
定休日 月・火・水
URL http://www.kiredo.com/atelier
  • kiredo VEGETABLE Atelier (キレド ベジタブル アトリエ)

プロフィール

marimo

お菓子研究家・製菓衛生師
株式会社マリモカフェ 代表取締役
大学卒業後、大手印刷会社に勤務しながら国際製菓専門学校の通信教育課程で製菓を学ぶ。その後複数のお菓子教室に通い、2015年に独立。
お菓子教室を主宰する傍ら、企業向けレシピ開発や書籍、雑誌、WEBへのレシピ提供、テレビ、ラジオ出演など幅広く活躍。写真撮影にも定評があり、カメラ雑誌への写真提供、講習会、イベント出演なども行う。著書に『クックパッド まりも1016の大好評お菓子』(宝島社)『6コマお菓子レシピ』(ワニブックス)『marimo cafeのしあわせスイーツ』(SBクリエイティブ)がある。

http://www.marimo-cafe.com/

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