SHUN CURATORS(September 2015)

日本食の繊細な味をじっくり楽しんで

― 日本文学研究家、翻訳家 ジェイ・ルービンさん

ジェイ・ルービンさん写真

アメリカにおける日本文学研究の第一人者であり、村上春樹作品の世界的翻訳家としても知られるジェイ・ルービンさん。

アメリカ在住ながらも滑らかに日本語を話し、一年に一度は日本に訪れるほどの日本通だ。日本の食にも関心が高く、来日しては各地に出かけ、様々な食を味わってきたそうだ。

自身の小説デビュー作となる「日々の光」の日本語版を出版(2015年7月)するにあたり、来日したジェイさんに日本の食文化についてのお話しを伺った。

日本食への興味は日本文学から

Q日本文学を研究することになったきっかけを教えていただけますか?

アメリカで夏目漱石の本を読み、日本語の面白さに惹かれたのがきっかけです。日本語は英語とは全く違う構造をしていて、美しい表現でこまやかなニュアンスまで伝わってくる。
それからいろんな日本の作品に親しむうちに、日本文化そのものに興味を持つようになりました。当時のアメリカでは、日本文化がほとんど知られていなかったので、見るもの全てが新鮮で、すぐに日本文化に夢中になりました。

日本食を試してみたいと思ったのもやはり文学がきっかけでした。初めて食べた日本食は味噌汁とカツ丼。シカゴの日本人街にあったレストランを調べて行きました。味付けの細やかな日本食は普段食べていた料理の味とは全く違い、美味しかったですね。

取材写真

各地の魚、コンビニエンスストアの惣菜に驚き

Q日本での食体験で思い出に残っていることはありますか?

車で京都から山陰地方をまわって、妻の故郷である佐賀まで旅をした時には、山口の萩や九州の玄界灘の魚を味わいました。脂のまろやかなハマチ、タコ、中トロなど、毎日食べても飽きませんでしたね。
それと、呼子(よぶこ)で食べた大きなイカの活き造りも素晴らしかった。佐賀県では「水匠(みしょう)」という店がお気に入りで、里帰りをする時にはディープな和食を楽しみます。

Q今回の来日で印象的だったことはありますか?

いつもは秋に来るので、日本の夏は久しぶりでした。暑くて外出を控えていたらコンビニの食事が多くなってしまって(笑)。でも、日本のコンビニは食べ物のレベルも高いですね。サラダは新鮮ですし、漬け物や切り干し大根などのお惣菜もなかなか。アメリカでコンビニというと牛乳が切れた時に行くくらいかな。レストランのように質の高いサラダが手に入る日本のコンビニには驚きました。

インタビュー中のルービンさん写真

日本食を好きになるコツは味つけで選ぶ

Q日本の食や食文化についてのアメリカでの関心はいかがでしょうか?

日本食はヘルシーということもあり、アメリカでもどんどんポピュラーになってきています。TVドラマでもお寿司屋さんのシーンが出てきたり、“枝豆”、“パン粉”、“黒豚”などはそのまま英語として耳にするようになったりしています。

私自身は朝に豆腐を食べることを日課にしています。濃い味のお豆腐に、滋賀県から取り寄せた赤シソをかけるのが昔からのお気に入りなんです。

赤しそ写真

Q初めて日本食を口にする海外の方へ何かアドバイスはありますか?

日本食の繊細な味はすぐには分からないと思いますので、段階を踏んでチャレンジしてみるのがいいと思います。
生魚や納豆は、日本食が初めての人には敬遠されるかもしれませんね。味のはっきりした料理からはじめてみることをおすすめします。たとえばウナギの蒲焼きはビーフの風味にも似ているので、アメリカ人にも好まれると思います。納豆を試したいなら、においの少ない商品を選ぶこと(笑)。無理をせず、だんだん日本食の繊細さを好きになってほしいですね。

インタビュー中のルービンさん写真

Writer : MINA HIRANO / Photographer : KOJI TSUCHIYA

プロフィール

ジェイ・ルービンさん(日本文学研究家、翻訳家)

ハーバード大学名誉教授、日本文学研究家、翻訳家。アメリカにおける日本文学研究の第一人者。シカゴ大学で博士課程修了後、ワシントン大学にて18年間教鞭をとったのち、ハーバード大学へ。芥川龍之介、夏目漱石など日本を代表する作品の翻訳を多数手掛ける。特に村上春樹作品の翻訳家として世界的に知られている。
2015年7月に小説デビュー作となる「日々の光」日本語翻訳版を出版。

日々の光写真