「食の都」博多が生んだ“食文化”
那珂川の水面に浮かぶ、美しいネオンサイン。旨そうな匂いが漂う屋台の数々。
今回、我々は一年を通じて“旬”の料理を楽しめる福岡市・博多にやってきた。
早速、日本有数の?華街「中洲」に赴くと、華やかな雰囲気と、この町の賑やかさに、自然と心が浮き立ってくる。屋台に入り、博多ならではの味わいの数々に舌鼓をうつ。この町が国内だけではなく海外からの旅行者を魅了してやまない理由を実感できる瞬間だ。
ここ福岡県福岡市は、中国大陸や朝鮮半島が近く、古くから国際交流の拠点として栄えてきた土地だ。その歴史的背景で育まれてきた独特の文化が人々を惹きつけるのだろう。その魅力の粋とも言えるのが“食文化”だ。もつ鍋や博多ラーメン、水炊きなど「博多名物」と言われる味わいの数々を思い浮かべると、つい足を運びたくなるのも納得していただけるであろう。
熟練工のこだわりが冴える こだわりの辛子明太子作り
数ある福岡・博多の食文化の一つが「辛子明太子」だ。スケトウダラの卵巣、たらこの辛子漬けである。その発祥には様々な説があるが、一説にスケトウダラの卵巣を、唐辛子入の独自の調味料で辛子漬けにしたのが始まりといわれている。ピリッと辛い味つけと卵の粒の食感がたまらない、日本ではご飯のお供として馴染みある一品だ。
日本人に馴染みある辛子明太子の魅力を探るべく、辛子明太子メーカーとして創業した福岡市・博多のやまやコミュニケーションズを訪れた。
早速、辛子明太子の秘密を尋ねると、原料となるたらこの選別から始まるという。やまやコミュニケーションズでは、社員自らがオホーツク海の漁に同行し、辛子明太子に合うたらこを厳選している。
また、たらこを漬ける調味料の素材にもこだわっている。通常、調味料のベースは水を使うことが多いが、やまやコミュニケーションズでは、より味に深みをだすため、地元の名酒蔵である「喜多屋」のお酒を使う。調味料に使用するそのほかの素材も、昆布(羅臼産)やゆず(九州産)など地元九州産にこだわり、オリジナルブレンドの唐辛子と合わせ、「やまやの味」を探求しているのだ。
「美味しさの決め手となるのは調味料です。創業当時からの調味料の配合を守りつつ、現場の職人の判断やお客様のご意見を反映し、改善していっています。日々生み出している味が、今日、そして明日の『やまやの味』なのです」とやまやコミュニケーションズ営業の安河内さんは誇らしげに語ってくれた。
「やまやの味」を生み出すには、工程にも手間ひまがかけられている。
たとえば、やまやコミュニケーションズでは、調味料に漬ける前に職人の手でたらこを揉む工程がある。この工程では単にたらこを揉むのではなく、その日のたらこの状態によって加減し、よく揉む時もあればサラッと触るだけなど、繊細な手捌きが要求される。
「揉みの工程は、現場の職人の意見から取り入れました。少し明太子を揉んだほうが味が馴染むのではないかと実践したところ、より『やまやの味』を表現することができたのです。あらゆる工程には熟練の職人がいて、常に質の高い味の追求をしています」と工場長の浜野さんは話す。
揉み、味つけの工程を経たたらこは、168時間じっくりと漬け込み寝かせることによって、その味をムラなくしっかりと浸透させ、「やまやの味」の辛子明太子となる。
できたて辛子明太子のはじける食感
できたての辛子明太子を味わうために、やまやコミュニケーションズ直営のレストラン「もつ鍋やまや 博多店」を訪れた。「できたて辛子明太子」は、この店でしか味わえないメニューだ。新鮮がゆえに辛子明太子の卵一つひとつが潰れておらず、口の中で粒がはじけていく食感が格別。
ここ「もつ鍋やまや 博多店」では、辛子明太子の他にも、「もつ煮込み」や「酢モツ」なども楽しめ、博多ならではの郷土料理が多く用意されている観光客にもうれしいお店だ。
華やいだ町、博多には、美味を求めてたくさんの人々が集まる。「食の都」博多が生んだ“食文化”は、まだまだ奥が深く、何度も訪れたくなる気持ちにさせる町である。